シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(3・完)最優秀作品賞に「よみがえりの樹」

2016/11/30

2016tokyo_filmexp_03_01.jpg 11月26日の夜、有楽町の朝日ホールで授賞式が行われ、以下の賞が発表になりました。実は、今年は仕事が押したために、数日しか参加することが出来ず、受賞作のいずれも未見でした。授賞式に先立って行われた審査員の記者会見での話では、審査員それぞれの好みが違い、全員一致の結果ではなかったとのことでした。審査員長のトニー・レインズ氏によると、『マンダレーへの道』のミディ・ジーはすでに監督としての経験も豊かで、同時期に開催中の台北金馬奬での受賞(最優秀台湾映画人賞)や、アカデミー外国語映画賞の台湾代表に決まっているので、新人で、困難を乗り越えて製作した作品を選んだ。また、個人的には庭月野議啓の『仁光の受難』を押したのだが、他の審査員の賛同を得られなかったとのことでした。

 コンペティションで私が見たのは、ミディ・ジー監督の『マンダレーへの道』と、ワン・シュエボー監督の『神水の中のナイフ』という2本です。

 『マンダレーへの道』は、ミャンマーからタイへ密出国して出稼ぎに来る途中で知り合った若い男女が主人公。ミャンマー人の繋がりを利用して闇の仕事を探し出し、助け合って働いているうちに、次第に親密になっていくが、お金を貯めて台湾へ出て行こうとする娘と、故郷へ帰ろうとする青年の価値観の違いが悲劇を生む、というストーリー。実際にあった事件を元に、ジー監督自身の兄姉の体験を組み入れたもので、監督4作目にして初めて脚本を書いた作品だそうです。主人公の2人だけがプロの俳優で、ミャンマーでの農作業や工場での労働体験、雲南省訛りの中国語などをトレーニング、撮影は2ヶ月ですが、準備には1年半をかけた、見た目はフレッシュですが、よく練り込まれた作品でした。

2016tokyo_filmexp_03_02.jpg 『神水の中のナイフ』は、第2回魯迅文学賞を受賞した<清水の中のナイフ>という中国では非常に有名な小説を原作に、中国の少数民族、回族の村を舞台に、妻を亡くした老人の心象風景を映像化したもの。『タルロ』のプロデューサーだったワン・シュエボーの初監督作品で、まるで絵画のように美しく撮られているものの、ワン監督の若さのせいか、主人公の老人の内面になかなか迫っていけない、もどかしさを感じました。

 今年は受賞作品を始め、多くの作品を見逃してしまったのが残念でした。『私たち』は日本公開が決まったようですが、それに続いて、他の作品も配給が決まるよう願ってやみません。


<2016年度東京フィルメックス受賞結果>

最優秀作品賞:『よみがえりの樹』監督チャン・ハンイ(中国)
審査員特別賞:『バーニング・バード』監督サンジーワ・プシュパクマーラ(スリランカ)
スペシャル・メンション:『私たち』監督

観客賞:『私たち』監督ユン・ガウン(韓国)

学生審査員賞:『普通の家族』監督エドゥアルド・ロイ・Jr(フィリピン)


写真(上は)審査員と受賞者。記者会見後の記念撮影で。前列左から、プシュパクマーラ、『よみがえりの樹』のプロデューサー、ジャスティン・オー、ロイ・Jr、後列左から審査員の松岡環、トニー・レインズ、アンジェリ・バヤニ、パク・ジョンボム、カトリーヌ・デュサールの各氏。チャン・ハンイ監督はナント三大陸映画祭のため、ユン・ガウン監督は青龍映画祭新人監督賞受賞のため、欠席。ユン監督は夜の授賞式には登壇。


写真(下)は「マンダレーへの道」のミディ・ジー監督。上映後のQ&Aで。

(齋藤敦子)