シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(4)カウリスマキ的ユートピア/楽しい「希望の裏側」

2017/02/17

2017berlin_p_04_01.jpg 映画祭が後半に入った14日のコンペ部門では、アキ・カウリスマキの『希望の裏側』、アンドレス・ヴィールの『ボイス』の2本が上映され、2本とも素晴らしい作品で、何らかの賞を獲るのではないかと期待しています。

 『希望の裏側』は、妻と別れ、ポーカーで儲けた金で、レストランのオーナーになったセールスマン(サカリ・クオスマネン)とレストランの従業員たちが、シリア難民の青年(シェルワン・ハジ)と出会い、生き別れになった彼の妹を探してやる、という、カウリスマキ的ユートピア物語。おなじみのフィンランドのロック音楽や日本語の歌謡曲で彩られた楽しい映画で、プレスや観客から満遍なく支持を集めています。

 『ボイス』は、1986年に65歳で亡くなったドイツの現代芸術家ヨーゼフ・ボイスの生涯を描いたドキュメンタリーです。ボイスといえば、私には日本のウィスキーのCMに登場した有名なアーティスト、くらいの知識しかなかったのですが、この映画を見て、芸術と社会をつなぐ方法を探り、政治にも関心を示し、緑の党を結成して議員に立候補するなど、多面的な生き方をした人だったことを知りました。映画は、一切の説明を加えずに、ボイスのアーカイヴの映像と当事者の証言だけで、ボイスの人生は「人間の活動は何であれ芸術であり、すべての人間は芸術家である」という彼の言葉の実践だったこと、"ヨーゼフ・ボイス"こそ彼の最高の芸術作品であったことを解き明かしています。

 アンドレス・ヴィールは1959生まれの58歳。クシシュトフ・キェシロフスキに演劇を学んだという人で、2011年にベルリンのコンペに出品した『もし我々でなければ、誰が?』という劇映画でアルフレッド・バウアー賞を獲っています。友人も推奨する他のドキュメンタリー作品が見てみたくなりました。


 写真は「希望の裏側」の記者会見の模様。右からサカリ・クオスマネン、アキ・カウリスマキ、シェルワン・ハジの各氏。

(齋藤敦子)