シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(5)リンコ、しとやかに美しく/荻上直子監督の「彼らが本気で編むときは、」にテディ賞審査員特別賞

2017/02/19

2017berlin_p_05_01.jpg 映画祭が終盤に入った2月16日に日本映画2本の上映があったので取材に行ってきました。

 パノラマ部門とジェネレーション部門の両方で上映された荻上直子監督の『彼らが本気で編むときは、』は、母ヒロミ(ミムラ)が恋人を追って失踪し、叔父の家に身を寄せることになった小学生の少女トモ(柿原りんか)が主人公。叔父マキオ(桐谷健太)にはトランスジェンダーの女性リンコ(生田斗真)という恋人がおり、3人で暮らし始めるうちに、家事にも子供の教育にも関心のない母親に対して、家事も編み物も何でも完璧にできる優しいリンコにトモは次第に打ち解けていき、リンコもトモを我が子のように愛するようになるが...、というストーリー。さすが『かもめ食堂』の荻上監督だけあって、リンコが作る色とりどりのキャラ弁や丁寧に撮られた日本の風景、リンコのしとやかな美しさがベルリンの観客に大いに受けていました。

 『彼らが本気で編むときは、』は全部門のLGBTをテーマにした作品を対象にしたテディ賞の審査員特別賞を受賞しました。日本公開は2月25日から。

2017berlin_p_05_02.jpg 石井裕也監督の『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』は、最果タヒの同名詩集の映画化。昼間は看護師、夜はガールズ・バーでバイトする美香(石橋静河)と、工事現場で日雇いをして暮らす慎二(池松壮亮)を通して、東京の街の生きにくさと閉塞感にあえぐ若者の姿を描いたもの。石井監督といえば日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した『舟を編む』や『ぼくたちの家族』を思い出しますが、本作は今までとはまったく違い、原作はあるとはいうものの、ストーリーは完全な石井監督のオリジナル。作風もアニメを取り入れたり、様々なスタイルを混交させた斬新なもので、石井監督自身、今までの自分を壊し、新しい映画作りを模索しているように思えました。ベルリンで見ていると、東京という街の特殊性やイライラ感が、東京で見る以上に際立って伝わってきて、それだけ時代を見事に捉えた映画なのだと思います。

 『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』は5月13日から新宿ピカデリーとユーロスペースで、5月27日から全国ロードショーされます。

 写真(上)は『彼らが本気で編むときは、』囲み取材の後で。右から荻上直子監督、柿原りんか、生田斗真、桐谷健太の各氏。

 写真(下)は、​『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』上映後のQ&Aの模様。石井裕也監督、石橋静河、池松壮亮の各氏。

(齋藤敦子)