シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(3)体技鮮やかチャン・チェン/SABU監督の「ミスター・ロン」

2017/02/15

2017berlin_p_03_01.jpg 映画祭の中日にあたる13日に、コンペ部門に選出されたSABU監督の『ミスター・ロン』の公式上映と記者会見がありました。

 台湾の高尾から東京の歌舞伎町へやってきた殺し屋ロン(チャン・チェン)が、殺すはずの新興ヤクザの奸計にあって負傷、廃墟のような町に流れ着く。そこにはヤクザから身を隠した台湾人の薬物中毒の母(イレブン・ヤオ)と息子の少年が住んでいた。ロンは少年を介して次第におせっかいな町内の人々と打ち解け、ついには屋台のラーメン屋まで始めることになるのだが...、という面白い映画で、武術を訓練しているというチャン・チェンの体技も鮮やかで、ベルリンのプレスや観客にも十分に楽しんでもらえたようです。

 写真(上)は記者会見の模様で、右からSABU監督、チャン・チェン、イレブン・ヤオ、青柳翔の各氏です。東京でエドワード・ヤン監督の名作『嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』デジタル・レストア版の試写を見たばかりだったので、もしエドワード・ヤンが生きていたら、立派に成長したチャン・チェンを使って、少年のその後を描く『嶺街2』を撮ってもらえるのに、と痛切に思うのです。

 さて、中日までで評判のよいコンペ作品は、まずチリのセバスチャン・レリオ監督の『ファンタスティック・ウーマン』、ポーランドのアグニェシュカ・ホランド監督の『足跡』、ハンガリーのイルディコ・エンエディ監督の『肉体と魂』など。

2017berlin_p_03_02.jpg 『ファンタスティック・ウーマン』は、年の離れた恋人オルランド(フランシスコ・レイエス)と同棲を始めたばかりの主人公マリナ(ダニエラ・ヴェガ)が、オルランドが急死した後、彼の遺族である元妻や息子、それに死因を疑う警察から、イジメともとれるひどい扱いを受けながら、人としての尊厳を求めて戦うというもの。なぜ彼女がファンタスティックな女性なのかは、ストーリーが進むにつれて次第に明らかになっていくのですが、主演のダニエラ・ヴェガの絶妙な演技にとても魅了されました。

 エンエディの『肉体と魂』は私にとって、1989年のカンヌ映画祭でカメラ・ドールを獲った『私の20世紀』以来の作品。畜殺場に務める管理責任者の初老の男と、新任の品質管理責任者で、潔癖症の美人が、薬品の盗難事件がきっかけで、同じ夢を見ている、それも牡鹿と牝鹿として、ということが分かるという、ちょっと不思議な、面白い映画でした。

 写真(下)は「ファンタスティック・ウーマン」の記者会見、右から、助演のフランシスコ・レイエス、セバスチャン・レリオ監督、主演のダニエラ・ヴェガ、プロデューサーのフアン・デ・ディオス・ラライン

(齋藤敦子)