シネマに包まれて-映画祭報告

presented by 河北新報

(3・完)最優秀作品賞に「よみがえりの樹」

2016/11/30

2016tokyo_filmexp_03_01.jpg 11月26日の夜、有楽町の朝日ホールで授賞式が行われ、以下の賞が発表になりました。実は、今年は仕事が押したために、数日しか参加することが出来ず、受賞作のいずれも未見でした。授賞式に先立って行われた審査員の記者会見での話では、審査員それぞれの好みが違い、全員一致の結果ではなかったとのことでした。審査員長のトニー・レインズ氏によると、『マンダレーへの道』のミディ・ジーはすでに監督としての経験も豊かで、同時期に開催中の台北金馬奬での受賞(最優秀台湾映画人賞)や、アカデミー外国語映画賞の台湾代表に決まっているので、新人で、困難を乗り越えて製作した作品を選んだ。また、個人的には庭月野議啓の『仁光の受難』を押したのだが、他の審査員の賛同を得られなかったとのことでした。

 コンペティションで私が見たのは、ミディ・ジー監督の『マンダレーへの道』と、ワン・シュエボー監督の『神水の中のナイフ』という2本です。

 『マンダレーへの道』は、ミャンマーからタイへ密出国して出稼ぎに来る途中で知り合った若い男女が主人公。ミャンマー人の繋がりを利用して闇の仕事を探し出し、助け合って働いているうちに、次第に親密になっていくが、お金を貯めて台湾へ出て行こうとする娘と、故郷へ帰ろうとする青年の価値観の違いが悲劇を生む、というストーリー。実際にあった事件を元に、ジー監督自身の兄姉の体験を組み入れたもので、監督4作目にして初めて脚本を書いた作品だそうです。主人公の2人だけがプロの俳優で、ミャンマーでの農作業や工場での労働体験、雲南省訛りの中国語などをトレーニング、撮影は2ヶ月ですが、準備には1年半をかけた、見た目はフレッシュですが、よく練り込まれた作品でした。

2016tokyo_filmexp_03_02.jpg 『神水の中のナイフ』は、第2回魯迅文学賞を受賞した<清水の中のナイフ>という中国では非常に有名な小説を原作に、中国の少数民族、回族の村を舞台に、妻を亡くした老人の心象風景を映像化したもの。『タルロ』のプロデューサーだったワン・シュエボーの初監督作品で、まるで絵画のように美しく撮られているものの、ワン監督の若さのせいか、主人公の老人の内面になかなか迫っていけない、もどかしさを感じました。

 今年は受賞作品を始め、多くの作品を見逃してしまったのが残念でした。『私たち』は日本公開が決まったようですが、それに続いて、他の作品も配給が決まるよう願ってやみません。


<2016年度東京フィルメックス受賞結果>

最優秀作品賞:『よみがえりの樹』監督チャン・ハンイ(中国)
審査員特別賞:『バーニング・バード』監督サンジーワ・プシュパクマーラ(スリランカ)
スペシャル・メンション:『私たち』監督

観客賞:『私たち』監督ユン・ガウン(韓国)

学生審査員賞:『普通の家族』監督エドゥアルド・ロイ・Jr(フィリピン)


写真(上は)審査員と受賞者。記者会見後の記念撮影で。前列左から、プシュパクマーラ、『よみがえりの樹』のプロデューサー、ジャスティン・オー、ロイ・Jr、後列左から審査員の松岡環、トニー・レインズ、アンジェリ・バヤニ、パク・ジョンボム、カトリーヌ・デュサールの各氏。チャン・ハンイ監督はナント三大陸映画祭のため、ユン・ガウン監督は青龍映画祭新人監督賞受賞のため、欠席。ユン監督は夜の授賞式には登壇。


写真(下)は「マンダレーへの道」のミディ・ジー監督。上映後のQ&Aで。

(齋藤敦子)

(2)若い世代の掘り起こし目指すU-25割/林加奈子ディレクターに聞く

2016/11/21

2016tokyo_filmex_p_02_01.jpg●巨大化したプサン

 -個々の映画については市山さんにうかがったので、 林さんには、映画祭の運営や動向、映画祭というものについての考え方をうかがいたいと思っています。今年プサンには行かれました?
 林:ちょっとだけ。

 -どうでした?
 林:がんばってるなと。規模は大きいままだし、にぎやかだし、全然しょぼくれてなかった。そういう意味ではすごいなと思いました。ただ、フィルメックスと全然違うのは、とにかく大きいこと。1つのパーティでも1000人とかいて、同じパーティにいるのに会えない。ボランティアもそうで、1000人超えていると思うんで、何かを聞いたら誰からも同じ答えが返ってくるというのじゃなく、"ちょっと待ってください"と言われて、誰かに聞きに行ってと、返事に時間がかかる。組織化が大変な規模になっちゃってる。たとえば空港にカウンターがあって、ちゃんと人がいて、トランスポーテーションのチケットを渡してくれるけど、私は何度も行ってるからいいけど、初めての外国のゲストで韓国語も漢字も分からなかったら、同じゲートでもいろんな路線バスが5台くらいとっかえひっかえ来るので、プサンの映画祭のホテルに停まるバスはどれか、バスの運転手さんは英語がペラペラなわけじゃないので、カウンターに3人いるなら、バス乗り場に1人ついていればいい、というようなことが、あんなに巨大化してしまったら無理なんです。

  -細かいケアができてない?
 林:ただ、カンヌとかは、あれだけ大きな映画祭だけれども裏の手というのがある。ある人には、あそこに行けばすべてが解決する場所とか窓口がある。カンヌの運営は実はものすごく行き届いている。ほったらかしで、知らん顔しているように見せかけているけど、実は全部分かってコントロールしてるってことが、すごいなと思う。

●迎えの車にゲストキット
 -プサンはまだそこまで行ってない?
 林:急に大きくなっちゃったから。ゲスト以外でヨーロッパなどから、かなりな人がプサンに来ています。ゲストが泊まっているホテルの前の大きなホテルに個人で自費で来ている人たちが泊まっているんです。 それくらい大きくなっちゃった。
 逆転の発想で、うちの小ささというもの、小回りがきくことをどこまで最大限に生かせるかを、ものすごく意識しています。たとえばプサンはホテルに着いて、映画の殿堂というフェスティバル・オフィスに行かないとパスとカタログが手に入らない。私たちは規模が小さいから、迎えの車にゲスト・キットを乗せてしまうとか、それぞれのホテルにキットを置いておく。着いた日の夜に薬を飲む人がいるかもしれないので、ミネラルウォーター1本とウェルカム・レターとスケジュールを一緒にして、到着のときにホテルで見られるようにしたい。それって、そんなに難しいことじゃないと思うんだけど、わりとされてないんです。

 -フィルメックスは、この17年間でスペースや予算の増減があったと思いますが、比較すると今年は小さい方それとも大きい方?
 林:作品本数的には小さい方ですね。というのは去年はスバル座で蔡明亮の特集がやれたし、松竹がやってる日本映画のクラシックをコラボ企画にインクルードさせてもらって東劇でやったこともありました。今年の22本は少ない方だと思うんですけど、イベント企画としてはタレンツ・トーキョーはもう7回目だし、学生審査員も6回目で続いているし、イスラエルのトークイベントをやったり、初日に国際シンポジウムとかもやろうとしてるので、大きな年ではないけれど、中身の濃い年だと思います。

 -予算は比較的少ない?
 林:どん底じゃないです。去年よりはまし。去年はもっとひどかったです。

 -フィルメックスの予算は主にどこから?
 林: いろいろです。文化庁とか、政府の予算ももちろんあるし、タレンツ・トーキョーなら東京都とアーツ・カウンシル東京とか。

 -チラシに出ている企業の援助も。
 林:そうです。あとオフィス北野の森社長が北野武さんのコマーシャルの話が来たときにフィルメックスに協賛してやってくださいという話をつないでくださるんです。なので、チラシなどの広告が北野さんだらけになってます。あとは個人のサポーターの寄付とか、エールフランスなど私たちからお願いする企業もあるし、いろいろです。

●学生の評価を喜ぶ監督たち
 -安定してます?
 林:1回やってくださると、継続的にやってくださる。それはとてもありがたいことで、ある企業の偉い人は、お礼に行って継続のお願いをすると、私の目の黒いうちは、うちの会社が続けられるだけ続けるから、林さんは映画を見ててください、と言ってくださる。そういう風に理解してくださる方は継続してくれる。ただ、野球なら東京ドームで1試合5万人とか、サッカーなら味の素スタジアムで1試合で6万人とか、すごい数でしょ。そういうものに比べて映画は映画が好きな人が映画を見るだけで、いきなり購買意欲が高まるわけじゃないから、なかなか厳しい。新しいところを増やしていくのはすごく大変です。


 運営的に今年一番の違いは、若い人向けのU-25割(平成3年1月1日以降生まれ対象)を始めたこと。それは絶滅危惧種として心配な若いお客さんを増やそうとしてのことで、どんなにいい映画をやっても、それを見るお客さんがいないと困ってしまうからです。今年6年目になりますが、学生審査員をやってて思ったのは、監督たちが学生に選ばれたことをすごく喜ぶこと。これからの若いお客さんが自分の映画を評価してくれ、好きだと言ってくれることを毎年毎年喜んでくれる。逆に、学生さんて自分で映画を見ることはあっても他人と映画の話をあまりしないけど、学生審査員になると、映画の話をとことんする、しかも会議のような形で。学生審査員の人たちも、大変だったし、悩んだし、苦しかったけど、すごくいい経験だったと言ってくれる。審査員にとっても刺激になり、監督にとっても喜ばしいことであれば、これはとことん続けなければと。

 -学生審査員のその後はトレースしてます?
 林:してます。山戸結希は監督として活躍しているし、映画を作り続けている人もいれば、映画の業界に就職した人もいて、わりとそれぞれなんだけど、すごくがんばって活躍しています。まあ、審査員をやろうという人たちは本当に真面目な人たちなんだけど。
 今年新しいのはFilmarks賞で、Filmarksという映画レビューサービスのサイトで投票できることです。フィルメックスの観客賞は授賞式のときに発表しています。なぜなら監督がまだいらっしゃるときに賞をあげたいから。そうすると、授賞式の前の作品までしか対象にならない。昔ベルナール・エイゼンシッツさんが審査員長で来てくださったときに、クラシックが観客賞をとったことがあって、昔の映画も今の映画も平等に扱うなんてフィルメックスって何て素敵な映画祭だろうと言ってくれて、本当はクラシックも新作も全部を対象にしたいんだけどなかなか出来なくて、忸怩たる思いがあった。それが、私たちとは違うところがサイトを作ってくれて、映画を見た後にスマホで評価を投票すればいい、と。難点は見てなくても投票できるところなんだけど、性善説に基づいて、やってみようということになりました。

 -お友達の多い監督が勝つかもしれない?
 林:かもしれない。ただ、フィルメックスのお客さんは真面目なので。

 -すべての作品が対象になるわけですか?
 林:そうです。『侠女』も『ざ・鬼太鼓座』も。

●ネット活用も若者対策
 -得点はこのサイトで見られる?
 林:もう出てるはずです。前に見たことのある『侠女』を評価してる人がいるので。最終日で締め切るので、授賞式では発表できないけど、終わった後で発表します。お祭りの要素としてはちょっと面白いかなと。フィルメックスの公式サイトも若い人が見やすいようにスマホ対応のレイアウトに変えてみたり、今年インスタグラムも始めたんです。思ったより大変なんだけど、ボランティアスタッフがやってみたいと手をあげてくれて。

 -インスタグラムでハッシュタグを付けて?
 林:まだまだ始めたばっかりなんだけど、若い人を増やすために何ができるだろう、と考えて。

 -フィルメックス的規模の映画祭って、世界的に増えている感じ?
 林:映画祭の宿命ってどんどん大きくなってしまうことです。残念ながら。そうすると、たとえば作品選定にしても妥協しなければいけなくなってくる。この規模って珍しいかもしれません。。そういえばニューヨーク映画祭が、ずーっと同じ規模なので似てるかもしれません。あそこも30本くらいに絞って、内部で変化はあるけれど、ずっと同じ感じでやっている。あとはアジアンとかレズビアン・ゲイ、キンダーとか、何かに特化している映画祭はあると思う。日本でも広島国際映画祭が出来たり、動きはあるけれど。

 -この規模のという言い方は変だけど、この規模の映画祭が増えるということは、この種の映画がなかなか配給されないということで、映画的には不幸なことじゃないかと思うんですが。
 林:フィルメックスで上映されている映画って、普通に公開されておかしくないんです。私が学生の頃にはシネ・ヴィヴァンでもシネマライズでも普通に見られた映画です。マニアに向けた映画でも何でもなく、作り手が本当に伝えたいものを、商売のためじゃなく、命をかけて作ってる映画なんです。それが普通に公開されておかしくないのに、今や配給が決まっているものが極端に少ない。去年、蔡明亮の特集で『青春神話』を初めてごらんになる人?と聞いたら、ほとんどの手が挙がった。私にとっては当然知ってる映画でも、デジタルリマスター版という新しく見るチャンスが出来て、初めて見る人がどれだけ多いか。

●コンペは新人発掘を重視
 -去年はエテックスの特集がありましたが、今年は?
 林:コンペは10本なんだけど、6本はデビュー作なんです。特別招待でアミール・ナデリやキム・ギドク、モフセン・マフマルバフとか、おなじみの人たちが。

 -ゲストが固定化されてきましたね。
 林:でもコンペが6本新人で、フレッシュで、初めましての人たちが多い。巨匠クラスの特別招待作品に入れるには若手だけど、コンペには入れない枠で、ナイスと思う映画は結構あるんです。アイスランドの若手の映画とか、たまたま見たらすごいと思う。よっぽどすごければ、『ハンモック』みたいにやってしまうんだけど。特集でもルーマニアをとことん調べて、ムンギウの1作目からどうやって見せたらお客さんに喜んでもらえるかとか考えたり。去年の蔡明亮で分かったのは、何かの興味でつないでいくこと。『タイペイ・ストーリー』なら侯さんが出ているエドワードの作品という風に、何かで引っ張れないかなと。

 -去年、蔡明亮の特集で『楽日』を見た人は絶対にキン・フーの『竜門の宿』を見なくちゃいけない、とか。
 林:そういうつながりが出来ないものかなと思ってるんです。映画ってクラシックでも今の映画でも幾つか見ていると考えざるをえないことが出てくる。それが映画のお祭りなんだよね、と。

 -今年のフィルメックス・クラシックという特集は?
 林:たまたまです。春ぐらいにモフセンにタレンツ・トーキョーの講師をお願いして、そしたら6月くらいに実はこういう作品があると送ってきてくれて、それが『ザーヤンデルードの夜』でヴェネチアで上映されることがわかり、やらしてもらう話になったり、『タイペイ・ストーリー』の話が来たり、松竹さんから『侠女』と『竜門の宿』が両方できるという話が来たり、どんどん増えていって。それもある意味、若い人に対して昔の映画をみんなで一緒に見るチャンスになると。

 -クラシックは来年あるかどうか分からない?
 林:分かりません。映画がなければやらない。

 -今回はたまたま特集としてやれる映画が揃った?
 林:映画至上主義なので。枠から決めるのは嫌なんです。フィルメックスのビジョンはやりたいものがあったら作る。

 -ルーマニアも来年何かがあったらやるかもしれない?
 林:そうです。ルーマニアだけじゃなく、リサーチしている国が幾つかあって、うまくタイミングがあえば。前にブラジルをやったときも、何年もリサーチしてやっと遺族まで連絡がとれたら、今ちょっとスポンサーがついたんで、再来年になったらオール字幕入りのきれいな素材を作るんでって言われたら2年待つでしょう?そういうタイミングは常に待ってます。

 -映画祭という枠中心じゃなく、映画中心に映画祭を作っていくというポリシー?
 林:理想、ビジョンはね。

 -それを来年も続ける、と。
 林:いつまで続けるかというのがまた問題なんですが。

 -当面、来年はやるでしょ?
 林:開催決定って、カタログに入っちゃってるんで(笑)

 写真は林加奈子ディレクター(11月15日、赤坂の東京フィルメックス事務局にて)

(齋藤敦子)

(1)アートに逆風 中国/市山尚三プログラム・ディレクターに聞く

2016/11/19

2016tokyo_filmex_p_01_01.jpg 第17回東京フィルメックスが有楽町の朝日ホールで11月19日から開催されます。今年も 市山尚三プログラム・ディレクターに今回の見どころやアジア映画全般のお話をうかがってきました。


 -去年のフィルメックスは2本の中国映画が受賞しましたが。

 市山:今年も中国映画は2本入っています。1本はベルリンのフォーラム、1本はプサンに入っていて、そういう意味では中国映画は相変わらずレベルは高いと思いますね。ただ、多くはないです。去年も言ったかもしれないですが、商業映画を作るのは簡単だけど、アート映画を作るのはすごく難しい。政府の助成金というものがないんで、商売としてお金を集めなきゃいけない。そうすると、さすがに中国も最近は様子が分かってきて、商売にならないものにお金を出してもしょうがない、となる。それに、中国ですら公開できないものが結構多いんです。 それは検閲の問題とは関係なく、シネコンが上映してくれない。 日本みたいにアートシアターがほとんどないんで、大変厳しい状況になっている。アート映画を作って、結果、当たりませんでした、ならいいんだけど、端から公開もできないんじゃないか、というものに誰もお金を出さなくなっているんです。

 -前に行かれていた、北京のインディペンデント映画祭は全然やらなくなったんですか?
 
 市山:そういえばここ2年、聞かないですね。やってないかもしれないです。あれはビジネスとは関係ない世界ではあったんですけど。ただ、地方ではインディペンデント映画祭をやっています。北京は、ある時期から突然取り締まりが厳しくなったんですが、たとえば南京とか、杭州とか、そういったところのインディペンデント映画祭はやってるはずです。僕が2年前に行った西寧の映画祭もちゃんと開催されてて、なかなか映画館に掛かりそうもない、インディペンデント系の映画をやっています。そういう映画祭は地方に多いです。

 -どこからお金を持ってくるんですか?
 
 市山:地方の公共団体とか、あるいは地方の企業とかで、意外にちゃんとお金があったりする。皆が手弁当でやっているという感じではないです。少なくとも西寧は、やっている映画はインディペンデントだし、明らかに許可をとってないものも上映している。見ていて、「これ大丈夫?」と言うと、「まだ許可とってない」とか、そういう映画も上映しているんだけど、ちゃんと市民ホールみたいなところでオープニングセレモニーをやっています。

 -出資者が企業だったら見返りを求めそうな気がしますが。

 市山:ポスターとかカタログとかに広告を出しています。どの程度広告として意味があるのかは分かりませんけど、それ以上はそんなに求めていない。2年前に行ったときの話ですが、審査員長がチアン・ウェンで、審査員にチャン・チェンが来たりして、えらく豪華メンバーなんだけど、若手の作ったインディーズの短編映画を見て賞を出している(笑)

●若手育成に協力
 -賞をもらった人はすごく嬉しいでしょうね。

 市山:スターから賞をもらうわけですから。最初カタログを見たときは、どうせチアン・ウェンとかは顔見せで、セレモニーだけだろうと思ったら、ちゃんと全期間いる。

 -映画人にインディーズを応援しようという気分があるんでしょうか?

 市山:商業映画をやっている人がインディーズ映画の審査員をやったりとか、映画人の中には若手を育てなきゃいけないみたいな気持ちはすごく大きいと思います。今、どこまで進行しているか分からないですが、ジャ・ジャンクーがMK2と協力して、中国でもアート映画のチェーンを作るというのをやっているんです。

 -MK2がフランスでやっているような、アート系のチェーンですか?

 市山:MK2がどの程度協力的か分からないですが、公式にはMK2と提携して、中国にアート系のチェーンを作ろうということです。


 -今回コンペで上映される『よみがえりの樹』というのがジャ・ジャンクーのプロデュース作品ですね。

 市山:過去にも『記憶が私を見る』など、5,6本プロデュースをやっていますけど、作っても劇場に掛けるのに困るらしいんですよ。それで香港のブロードウェイという映画館のチェーンが北京に2館だけアートシアターみたいなのを作ってて、今、北京で恒常的にアートシアター系の映画を上映しているのはそこくらいしかないんです。

●外国映画の配給にクォーター制
 -そごが中国初のインディーズのチェーン?

 市山:初めてかどうかは分かりませんが、ワン・シャオシュアイやロウ・イエの映画とかはそこでしかやってない。シネコンに掛からないので。


 -お客さんは来るんですか?
 市山:厳しいと言ってました。カフェや本屋があったりする、日本のアートシアターを意識した感じのおしゃれな映画館で、ちょっとイベントスペースみたいなのがあって、監督を呼んでトークとかそういうのもやったりしてるんですけど、作品が続かないと言ってましたね。中国の場合、可哀想なのは、外国映画の配給にクォーター制度があって、本数が年間で決められていて、ほとんどハリウッド映画に占められてしまい、ヨーロッパのアート映画が配給されないんです。

 -MK2と提携したら、MK2配給の映画が上映できる、ということではないんですか?

 市山:このところ毎年毎年"数年後に"と言われて、なかなか実現しないんですが、"数年後にクォーター制度が撤廃される"という説があるんで、もしかしたらMK2もその辺を狙って、あわよくばと思っているかもしれないです。ハリウッドからの自由化の圧力が強いんで、数年後には撤廃されるとは言われています。

 -でもまだ撤廃されていない。

 市山:今のところは、ほとんどの配給本数がハリウッド映画に占められていて、そこに入り込む余地がない。そうするとアートシアターを建設しても、やるものが中国のインディペンデント映画しかないんです。

 -それは厳しいですね。

 市山:もともと見に行く需要のないところでやっているから、番組編成が厳しいという話は聞きました。

 -若い観客がインディペンデントの中国映画に関心を持って見に行くという感じではない?

 市山:関心持ってないんじゃないですかね。

 -昔の日本のミニシアターのブームみたいになるといいけど。

 市山:そうなんです。クォーター制度が撤廃されて、ヨーロッパのアート映画がどんと入ってきて、物珍しさもあって大当たりする、というようになれば。

●昔に戻ったプサン映画祭
 -続いて韓国ですが、プサン映画祭は行かれました?

 市山:行きました。派手な韓流スターが来なくなった分だけ昔に戻った、というと変なんですが、初期の精神に戻った感じがちょっとありましたね。外国映画はそのまま普通にやってるし、海外から来てるゲストたちというのは相変わらず来てるんで、いろんな人には会えるし、表面的にはほとんど変わった感じはないです。
 キム・ドンホさんが実行委員長に就任して、映画祭としては独立してやっているという感じにはなったんだけど、ただ決着はついてないんですよ。市長が謝罪したわけでもないし、そこがすごく不明瞭になっていて、何人か振りあげた拳を下ろしそこねた人たちがいる。今年の2月か3月くらい、ちょうどベルリンの後くらいに、いろんな業界団体がこのままでは映画祭に不参加だという時期があって、4月に市長が実行委員長を降りて、"キム・ドンホさんが実行委員長になります、映画祭は正常に開催されます"ということが発表されたんだけど、別に市長はそれまでのことを謝罪したわけでもないし、その辺がまったく不明瞭なまま再スタートしてしまったんで、結局、業界団体の人たちも自主参加みたいな形になって、人によっては参加してるし、人によっては、いやまだ俺は不参加だ、と。

 -キム・ドンホさんと言えば、まだプサンを立ち上げる前に、ナントによく来ていたのを思い出すんですが、プサンもあっという間に大きくなったのに、あんなことが起こり、まだ韓国は政治的に揺れているので、この先どうなるか分からないですね。

 市山:朴槿恵政権がひっくり返るのは目に見えているんで、逆に言うと、映画祭が期待している部分もあると思う。さすがにここまでひどいことはないだろうと。

 -プサン市長は朴政権寄りの人でしたよね。

 市山:そうです。大統領が李明博から朴槿恵になってからというもの、映画界が大荒れで、いろんな助成金カットだとか、要するに、それまでの助成金は共産主義的であると、商業映画から徴収した映画税を若手とかに支援するというのは共産主義的なやり方だからやめろというような、そういう暗黒の時代がしばらく続いていたのが、これでひょっとしたらちょっといい方になるかなと。KAFA(韓国国立映画アカデミー)とかも毎年の予算を削減されて大変だったんで、なんとなく、みんな期待している風はありました。

 -まだ分かりませんよ、世界全体が嫌な風潮なので。

 市山:この『恋物語』がKAFAの製作なんです。レズビアンの映画なんで、別に国立映画大学だから国の意向を受けてということはないと思うんですけど、堂々とこういう作品を終了制作として作っているというところは、ある意味すばらしいな、と。映画のレベルも高いというか、普通の大学の修了制作のレベルを遙かに超えてる感じがあるんで、そこもなかなか。体制さえ整えば韓国はまた持ち上がってくるだろうという感じですね。

●若手が出ない韓国

 -韓国はもう1本、『私たち』という作品がありますね。

 市山:これはベルリンのジェネレーションに出ていた映画で、ある種、児童映画なんですが、子供の演出が素晴らしい。結果的に2本とも女性の新人監督になりました。
 韓国も、今、ものすごい作家が出てきているかというと疑問ではあるんです。前の世代のパク・チャヌクとかキム・ギドクとか、あの世代が強すぎて、それを突破する若手がなかなか出てきてない。日本と若干似た感じというか。

 -フィリピンも、TIFFの<アジアの未来>で受賞した『バードショット』は面白かったけど、上にはラヴ・ディアス、メンドーサという二大巨匠がいますから。

 市山:フィリピンは1本あります。シネマラヤ映画祭というインディペンデント映画祭で受賞した『普通の家族』という作品で、これも手持ちカメラで撮ってるんで、メンドーサ的な感じではあるんですけど、これもなかなかたいしたものだと思います。この人の映画は3本目だと思うんですけど、毎回見ててもうひとつだなと思ってたんですが、今度のは大きく脱皮した感じがあります。

 -『神水の中のナイフ』というのは『タルロ』のプロデューサーの監督デビュー作なんですね。

 市山:ペマ・ツェテンとイー・トンシンがプロデューサーなんです。ペマ・ツェテンは『タルロ』でプロデューサーをやってもらったから分かるんですけど、なぜイー・トンシンがプロデューサーなのかは謎なんです。

 -これもチベットの?

 市山:これは回族の映画で、寧夏回族自治区というところ。イスラム圏なのでチベットではないです。

●ミディ・ジー監督の「マンダレーへの道」

 -ペマ・ツェテンは<アジアの未来>の『八月』という内モンゴルの映画もプロデュースしていて、あちこちに進出してますね。

 市山:辺境で映画を撮る人たちがみんな頼りにしてる(笑)。監督本人が回族かどうかはまだちょっと分かりません。1回プサンで会ったんですが、何系かは聞かなかったんです。名前は中国風ですが、回族の人たちは名前を中国風にしてる人が多いんで。どうも、もともとこの原作を監督したくて、いろいろやってもお金が全然集まらなくて、そのうちにペマ・ツェテンのプロデューサーをやるようになって、というようなところから出来てきた映画です。

 -このミャンマーの『マンダレーへの道』というのは?

 市山:暉峻さん(暉峻創三、大阪アジアン映画祭プログラミング・ディレクター)が大阪アジアンで紹介したミディ・ジーという監督の映画なんですけど、この人はミャンマー華僑なんです。ミャンマー人なんだけど中国人で、中国系の名前を持っていて、今、基本的には台湾に住んでいる。見た目も完全に中国人で、教育も台湾の映画大学で受けて、台湾のプロデューサーと知り合って、でも、映画は全部ミャンマーで撮っている。『マンダレーへの道』もミャンマーからタイに移民した男女のラブストーリーです。

 -スリランカの『バーニング・バード』は?

 市山:これは以前フィルメックスでやった『フライング・フィッシュ』の監督で、スリランカの内戦の話です。内戦中にお父さんが密告で殺されてしまって、子供を抱えた母親が酷い目にどんどん遭っていくという。

 -スリランカの内戦は本当に後を引きますね。

 市山:監督本人の少年時代が内戦のまっただ中だったんで、1作2作とも内戦の話を映画にしています。

●政府の関与強まる?イスラエル
 -今年は<イスラエルの現在>という特集があって、コンペに『オリーブの山』というイスラエル映画があって、イスラエルが3本ということですね。

 市山:本当はもっと余裕があれば、いろんなものが見せられたんですが、特集といいながら結局2本で、コンペの映画入れても3本しかないというのがあるんですけど。ここ最近、たしかに国際映画祭でイスラエル映画多いんで、しかも、ギタイみたいな大作感のあるものではなく、むしろ小さい話なんだけど、社会問題や政治問題に突っ込んだものが増えているという感じがする。

 -<アジアの未来>にも1本イスラエル映画がありましたが、イスラエルは今、ルネッサンスみたいな感じになっているんでしょうか。

 市山:若手の助成金とか、映画大学とかがあったりするんで、どんどんいろんな人が出てきているのは間違いないですね。ただ、今年、記事を読むと、今までノーコントロールだったのが、政府がいろいろと言ってきそうだみたいな、不穏な感じになってるということは書かれていました。

 -政治的な問題があるから、この勢いがどっちに転ぶか分からないですね。

 市山:今まで見てると、本当によくこんなものに国がお金を出したなというような、明らかにシオニズムの引き起こした問題、今回の『山のかなたに』もそうですけど、よくこれで政府の団体がお金を出すよねと感心することが多いんですけど、最近やっぱりうるさくなってきたようです。

 -外国に出るイスラエル映画って、リベラルな監督たちのものが多いから、イスラエルの現実を、うまくオブラートにくるみつつも、批判的に描いているじゃないですか。 でも、彼らがその後、昔のメナハム・ゴーランのように、大きな商業映画に進出していく、みたいな感じにはならないですよね。

 市山:産業的に、こういう人たちがその後娯楽映画を撮ったりという風にはなってないですね。

 -アート系のまま?

 市山:アート系でずっとやっていくんじゃないですか。

 -そうすると、助成とか必要ですよね。

 市山:そうです。その点、今の助成金がないと行き詰まりますね。

 -イスラエル政府が口出ししてきたりすると、今の風潮は長く続かないかもしれないですね。

 市山:ちょくちょくそういうことを言う政治家が出てくる感じです。

●人間味が魅力「タイペイ・ストーリー」
 -今年のクラシック特集ですが。

 市山:今年はデジタル・リマスター版がたまたま沢山集まったんで、別に特集しようと思って特集したわけじゃないんです(笑)

 -バラエティに富んでますね。エドワード・ヤンはTIFFで『グーリンチェ』をやって、フィルメックスで『タイペイ・ストーリー』をやる。

 市山:これはボローニャの修復した映画を集めてやっている映画祭でプレミア上映されたものです。

 -侯さんが若くてびっくりです。

 市山:この辺のエドワード・ヤンは人間像が一番ナチュラルな感じ。彼の映画は、いい意味でも悪い意味でも人間像が作ったような感じがするけど、この映画はすごくリアルな感じのする人間達が出ている映画なんで、個人的にはすごく好きな映画なんです。

 -エドワード・ヤンは頭のいい人だから、作ってしまう。

 市山:それはそれで面白いんですが、この映画の場合、侯孝賢が出ているせいかもしれないけど、一番人間味がある。

 -侯さんが出たらそうならざるをえない(笑)。あと、キン・フーが2本。

 市山:これはたまたま松竹が配給権を買ったんで、『侠女』は数年前にカンヌ映画祭で上映されたもので最新のデジタルリマスターではなく、数年前なんですが。

 -『竜門の宿』をやるんなら、蔡明亮の『楽日』もやればいいのに。

 市山:あれは去年の蔡明亮特集でやったので。

●幻の「ザーヤンデルードの夜」
 -マフマルバフの『ザーヤンデルードの夜』はまったく知らない作品なんですが。

 市山:これは90年の作品で、すごく前でもないんですが、ネガが没収されて本当に幻の映画だったんです。ファジル映画祭で上映して、その時点で禁止になって、外国での上映もできませんというんで、ネガを没収されてたらしいんです。

 -それが出てきたんですか? さすがイラン、魔法のように出てきますね。

 市山:マフマルバフは"詳細は言えないが"と。

 -言ったら迷惑の掛かる人がいる?

 市山:結構いると思うんです。で、ネガが持ち出されて、今ロンドンに住んでいるんで、ロンドンで修復作業をやって。残念ながら一部音声がなかったりとか、欠けてる部分があるし、完全版にはほど遠いらしんですけど、ストーリーはちゃんとつながって見れるんで。

 -マフマルバフは今ロンドンですか。本当にノマドのようになっちゃいましたね。

 市山:パリにしばらくいて、今はロンドンです。

 -映画が撮れるところに行く、みたいな感じなんですか?

 市山:本当かどうか、本人が言ってるんですが、パリにいたら秘密警察につきまとわれたんで、危ないと思ってロンドンに行ったということでした。

 -パリでつきまとわれて、ロンドンでつきまとわれないという理屈もよく分からないですけど。

 市山:まあ、ロンドンは英語が通じるし、住みやすいと思いますね。

 -あと加藤泰さんの『ざ・鬼太鼓座』があって、特別招待作品が5本。

 市山:今年は去年の蔡明亮特集のような大きな特集が出来なかったんで、本数的には少ないんです。

 -そういえばそうですね。同じ日数?

 市山:日数的には同じなんだけど、去年の蔡明亮特集は終わってからもやってたし、エテックスの特集もアンスティテュ・フランセでリピートをしましたから。今回はそういう点で、期間中に純粋に終わるんで。

 -予算的にも同じ?

 市山:特集上映をやるには別予算というか、去年のように台湾文化センターが出してくれるとか、アンスティテュ・フランセが出してくれるとか、そういうことがない限りは、会場を広げるのがまず難しいですし。

 -去年から1年、いろんな映画祭に行かれて、映画を見て回られて、変わったこととか、突出してよくなっているところとか、ありました?

 市山:それはなかったですね。国によって面白かった映画はあったりするんですけど、特別新しいものが起こってるということはなかったです。

 -ニューウェーヴみたいなものはない?

 市山:今回はミャンマー映画といっていいかわからないけど、ミディ・ジーの映画をやるんですが、東南アジアからは、ぽつぽつといろんなところから出てきている感じはあります。タレンツ・トーキョーの応募者を見てみると、毎回毎回東南アジアの今までやってなかったところが増えていたりする。ここ数年ミャンマーから応募者が来たり、カンボジアから来たりとかしてきてるんで、そういうところから数年後くらいに、どんどん出てくるんじゃないかなという気はします。可能性はあると思うんです。
 カンボジアはリッティー・パンが映画センターを作って、そこで映画教育とか始めてから、突然応募者が増えてきたりしているし、ミャンマーは今、いろんな企業が進出しようとしていて若干経済発展の途上みたいな感じがあるんで、もしかしたらそこに才能ある人が出てくるかもしれない。そういうきざしは感じるんですけど、具体的に凄い人が出てきたということにはまだ至っていないですね。

 -これから?

 市山:でしょうね。全体的に言うと、さっきのフィリピンの話じゃないんですけど、フィリピン映画って今新しいんで、いろんな映画祭でやってるけど、結局ラヴ・ディアスとメンドーサの二大巨頭がいて、なかなかそれを突破する人が出てきてない。あの二人は今撮り始めたわけじゃないですから。海外は最近発見したかもしれないけど。

 -アジア的にはラヴ・ディアスとメンドーサはすでに巨匠ですから。

 市山:それに続く人たちというのが意外に出てきてないような気がするんです。


 写真は市山尚三プログラム・ディレクター(11月7日、赤坂の東京フィルメックス事務局にて)

(齋藤敦子)

(4・完)羊飼いと身分証の物語/ペマツェテン監督の「タルロ」に最優秀作品賞

2015/11/29

tokyofil2015_p04.jpg 11月25日に授賞式が行われ、以下のような結果が発表されました。

 最優秀作品賞の『タルロ』は、身分証を作るために町に出かけた羊飼いのタルロが、証明写真を撮るため、身なりを整えようと入った美容院で、美容師の女に羊の値段の話をしたのが運のつき、ついにはすべてを失ってしまうという寓話のような物語。ペマツェテン監督の話によれば、数年前に全員が身分証を持つよう法律が改正され、これまで身分証などとは無縁に生きてきたチベットの山奥の人々も身分証を作ることになったのだそうです。身分証と羊飼いの関係に託して、監督が何を描こうとしたのかは明らかでしょう。タルロが毛沢東語録の一節を中国語のまま、まるでお経のように暗唱する場面は圧巻でした。タルロを演じたシデニマはチベットでは有名なコメディアンで、本当に毛沢東語録を丸暗記させられた世代なのだそうです。

 審査員特別賞の『ベヒモス』は内モンゴルの巨大な露天掘りの炭鉱をテーマにしたドキュメンタリー。ベヒモス(怪物)とは人間の欲望を邪悪なエネルギー=怪物として捉えた題名で、ダンテの神曲をモチーフに、炭鉱を地獄、そこで働く人間の苦しみを煉獄、住宅政策の失敗でゴーストタウンと化した高層住宅群を天国(幽霊の町)として描いていました。監督のチャオ・リャンは2007年に2作目の『罪与罰』でナント三大陸映画祭の金の気球賞を受賞、3作目の『北京陳情村の人々』がフィルメックスや山形ドキュメンタリー映画祭でも上映された注目のドキュメンタリスト兼アーティストです。

 賞とは無縁でしたが、私が好きだったのはチャン・ツォーチ監督の『酔生夢死』。市場で野菜を売って小銭を稼ぎながら生きる不良青年ラットを主人公に、アメリカから返ってきたゲイの兄、ラットが好きになる口のきけない娼婦、兄貴分として慕うホストなど、台北の裏社会に生きる人々の姿を描いた群像劇です。今年の台湾金馬奨で、侯孝賢の『黒衣の刺客』に次ぐノミネートを獲得、ラットを演じたリー・ホンチーが新人俳優賞を受賞しました。市山プログラム・ディレクターのインタビューにもあるように、チャン・ツォーチの代表作となるべき1本だと思います。

 写真はクロージング作品『山河故人』上映後のQ&Aの模様で、左からプログラム・ディレクターの市山尚三さん、監督のジャ・ジャンクーさん、通訳の小坂史子さん、主演のチャオ・タオさん。『山河故人』は『山河ノスタルジア』という邦題で、来春、渋谷文化村ル・シネマで公開されます。

【受賞結果】

●コンペティション部門
最優秀作品賞:『タルロ』監督ペマツェテン(中国)
審査員特別賞:『ベヒモス』監督チャオ・リャン(中国)
スペシャル・メンション:
『白い光の闇』監督ヴィムクティ・ジャヤスンダラ(スリランカ)
奥田庸介監督(『クズとブスとゲス』/日本)

●観客賞:『最愛の子』監督ピーター・チャン(中国、香港)

●学生審査員賞:『タルロ』監督ペマツェテン(中国)

●タレンツ・トーキョー・アワード2015
『A Love to Boluomi』(タウ・ケクフアット/マレーシア)

(齋藤敦子)

(3)厳しいクラシックの上映環境。客の意識も変化/市山尚三プログラム・ディレクターに聞く(後)

2015/11/27

tokyofil2015_p03.jpg -今年の邦画は、オープニングが園子温監督の『ひそひそ星』、コンペに奥田庸介監督の『クズとブスとゲス』、特別招待に塩田明彦監督の『約束』と『昼も夜も』がありますが、クラシックは?

 市山:今までやってきたクラシックの特集は、松竹の創立120周年の特集と提携しているだけで、こちら主導でやっている去年の松竹ヌーヴェル・ヴァーグ特集みたいなものは出来なかったことが残念です。

 -なぜ?

 市山:一番大きな理由は予算の問題です。前は出ていた助成金が去年から出なくなったんです。去年はフィルメックスの予算で何とかデジタル化した。<1960-破壊と創造のとき>特集の3本のうち、1本は松竹が作った『青春残酷物語』で、あとの『彼女だけが知っている』と『武士道無残』はフィルメックスの予算で作ったんですが、その分が持ち出しになったのと、今年は上映の枠が少ないことで、初日に朝日ホールが使えないし、2日目の朝の2枠まるまる空いている。これで邦画の特集をやると、コンペや特別招待作品を減らさなきゃいけない。侯孝賢特集も今年だから英語字幕のプリントが借りられるとか、いろんな制約もあって、今年は見送ろうということになったんです。

 ●人気作に偏るデジタル化

 -この分で助成金がないと来年も苦しい?

 市山:いろんな助成金に応募したりしているんですが、今のところ、来年やるかどうかもわからない。


 -残念ですね。松竹は自分のところの映画のデジタル化を進めていくつもりでしょうか。

 市山:進めていくでしょう。今年は『晩春』と『残菊物語』の2本を初めてデジタル化していますし。ただ、やっぱり売れるものしかできないというところがある。だから去年は『青春残酷物語』はやっても、他の2本に関してはできないと言う。

 -向こうは商売でやってるんだから仕方がないですが。

 市山:本当は商売抜きで、ドンとお金が出るところがないと、なかなか難しいです。テレビの方も"放映します"という保証があればいいんだけど、向こうも視聴率とか考えると、小津とか黒澤だったらやるけど、他の知らない監督のものだったらできませんということになるだろうと思います。

 -日本の弱いところですね。本当は公のお金で支えていかなければいけないのに。

 市山:フランスだとARTEとかカナル・プリュスとかがそういうことを度外視してやる、みたいなところがあるんだけど、日本の場合、特に今のNHKにはない。

 -ないですね。なんだかどんどん嫌な方へ行っている。

 市山:このまま進んでいくと、例えば今年のTIFFで復元した大映時代の市川崑を特集したじゃないですか。ああいう名作はできると思うんです。各社が復元してくれるから。名作はできるけど、知られざる映画を復元するのが難しくなる。それは今言った助成金の問題があるのと同時に、海外の映画祭に行ってプログラマーの話を聞くと、有名作品には人が入るけど知られざる映画には人が入らないと言う。それは日本映画だけじゃなくて。

●人気作中心は世界的な傾向

 -何でも見るというような人が少なくなったんですね。

 市山:僕らもベルリンのフォーラムで誰も知らない監督の映画を見て、これはすごいと思っても、確かにお客さんは入ってない。そういう傾向が世界的になってくると、たとえばフィルメックスで復元したとしてもそれが世界に回らない可能性もある。映画祭としても、あまりアテンションが少なければやらないだろうし、そうなってくると著名な作品ばかりをクラシック部門でかけるということになっていく。

 -ランキング症候群じゃないけれど、ベストテンとかランキングに入らない作品は忘れ去られちゃう傾向がありますね。今は自分の目で見て自分なりのよい映画を発掘するみたいな、そういう視点が欠けているのかもしれない。
 それで、ピエール・エテックスの特集ですが。

 市山:これは5、6年前にカンヌ・クラシックでエテックスの『ヨーヨー』をやっていて、そのときから言ってはきたんですけど、なかなか機会がなくて。今年まだ外国映画の特集が決まってない頃にアンスティテュ・フランセに声をかけたら、アンスティテュにDCPがあるということで実現した。理想を言えば、本人が来てくれればよかったんですが、さすがにドクター・ストップで。

 -今、お幾つですか?

 市山:87歳です。本人は来るつもりになっていて、経費をどうするかという話をしていたところで、やっぱり医者から長旅は無理だと言われたと。

 -昔、ナントでブラジルの音楽映画の特集があったときに、コメディアンのグランデ・オテロさんを招待したら、パリの空港に着いたところで亡くなったことがあったんで、絶対にやめた方がいいです。

 市山:数年前にキューバ映画祭には行ったらしいですよ。でもメッセージをビデオで作ったのが送られてきます。

 -エテックスは日本でやってますか?

 市山:あまりやってないんです。『女はコワいです』という映画が東和配給で公開されているくらい。だから、昔見ていて記事を書いてくれる人がほとんどいないんで、どの程度、お客さんが来てくれるか不安な点はあります。ただ、前売りはそれなりに売れています。

 -川喜多和子さんが生前エテックスをやりたがっていました、30年以上前ですが。

●権利関係の処理も難題

 市山:エテックスは権利関係が難しくて、カンヌで『ヨーヨー』をやったときに、やっと権利をクリアして、できるようになったと聞いています。今、フランスでDVDボックスが出ていますけど、それまではフランス人でさえ見ていないらしい。侯孝賢も『悲情城市』と『戯夢人生』の権利のクリアが大変だったらしいです。『悲情城市』は、日本はぴあが出資しているからいいんですが、台湾で侯孝賢のDVDを買おうと思ったら、この2本だけない。日本は例外的に見られるんですけど。今、侯孝賢特集を全世界でオーガナイズしているリチャード・スチェンスキというアメリカの大学教授が侯孝賢特集で記念講演をするんですけど、彼から最初に来たメールに『悲情城市』と『戯夢人生』の権利のクリアが非常に複雑だったが何とかクリアしたとありました。

 -この辺から市山さんがプロデュースしていたのかと思いました。

 市山:この後の『好男好女』からです。『悲情城市』は日本に権利があるからDVDも出ているし、プリントもある。

 -懐かしいですね。『風櫃の少年』は傑作ですしね。

 市山:『風櫃の少年』はたぶんデジタル・リマスター版になると思います。これはヴェネツィアでプレミア上映されたものです。

-最近デジタルで見るとがっかりすることが多いんですけど。

 市山:侯孝賢の指示ですし、ネガからちゃんと復元したものです。

 -4Kで?

 市山:4Kです。

 -蔡明亮の特集は?

 市山:侯孝賢特集は1年ほど前からフィルメックスでお披露目をという話がリチャードさんから来ていたんですが、蔡明亮特集は今年になってからで、台北文化センターが今年の6月に虎ノ門でオープンし、そこで秋の企画として蔡明亮特集をやる予算があるんだけど、彼らがやっても規模が小さくなるし、広報活動ができないんで、フィルメックスと一緒にやってくれないかという話が来たんです。なので、偶然この台湾の二大巨匠特集が実現しました。

 -これで邦画クラシックの寂しいところを補って、豪華な感じが出ましたね。

 写真は、チャン・ツォーチ監督『酔生夢死』上映後のQ&Aで、来日が叶わなかった監督に代わって質問に答える主演のリー・ホンチーさん(右)。リーさんは先週台北で開催された台湾金馬賞で最優秀新人俳優賞を獲得。

(齋藤敦子)

(2)「商業」の意味するもの/市山尚三プログラム・ディレクターに聞く(中)

2015/11/26

tokyofil2015_p02.jpg -今年、TIFFのコンペに出たハオジエの『ぼくの桃色の夢』の中でジャ・ジャンクーが憧れの監督のように描かれていて、世代交代だなと思ったんですが、今の中国の若手はちゃんと商業的に映画を撮れるようになってきたんですね。

 市山:なってきたというより、ならざるをえない。皆ジャ・ジャンクーみたいな映画を撮りたいというか、そういう社会問題をやりたいのは山々なんだけど、仕方がなくて撮っている。ハオジエも商業映画を撮りたくて撮ったというより、今撮るにはこの道しかない。撮らないと言ってしまうとインディーズ映画で一生過ごさなきゃいけない。そうすると見る人も限られるし、中国全土の観客に見てもらうことはありえなくなる。今、商業映画を作ると言うとお金が集まるんで、その中に何とか自分達の個性を忍び込ませようというのが実態だと思うんです。

 -でも、うまくかわして撮ってましたね。

 市山:ただ、いろいろ問題になってて、公開は(編集が)違うんじゃないかと思います。

 -お父さんのこととか、SARSのことも出て来て、大丈夫かなと思った。

 市山:日本では例えば塚本晋也さんみたいに自主で撮って配給しても何万人も観客が入りうるんですが、中国だとそれはもう全然ありえない。

 -インターネット配信でも無理?

 市山:インターネット配信も許可が必要なんです。ただ、配信の許可は部署が違うんで多少ゆるくて通るかもしれないんですけど、それにしても、まったくのアンダーグラウンドで撮るわけにはいかない。アンダーグラウンドで撮ったとしても見る人がいない。買ってくれない。そうすると、ある程度の有名スターを何人か使って、商業映画の体裁を整えたものにしないと一切収入がありえないのが今の中国の状況なんで、それは日本以上に深刻だと思います。

 -TIFFのワールド・フォーカスに出ていたチベット映画の『河』の監督は、フィルメックスで賞を獲ったペマツェテンの『オールド・ドッグ』の撮影監督だった人でしたが、ペマツェテンの新作がコンペティションに入ってましたね。

 市山:『タルロ』です。『河』はペマツェテンがプロデューサーのはずです。どちらかというと『河』の監督のソンタルジャの映画の方がナラティヴというか、一般のお客さんが見れるようなものを作っていて、ペマツェテンはどちらかというと突っ走っている感じというか。その辺は同じ仲間ですが、方向が弱冠違う。ただ、『河』も僕らの気がつかないところにいろんなことがあるんだと思います。

 -中国の中のチベットということで二重の難しさがあるかと思いますが、ペマツェテンは撮れてるんですか?
 
 市山:撮れてるようです。エンド・クレジットを見ると、いろんなところが協賛で入っているし、明らかに許可とってますし、ストーリー上、文句を言うところが何もない。裏を考えると、いろいろありそうな気がするんだけど。本人も言っていいことと悪い事をわかっていて、『オールド・ドッグ』のQ&Aのときにちょっとヒヤヒヤしたんですが、うまくかわしながら答えてました。

●期待できる『酔生夢死』

 -今年は台湾のチャン・ツォーチの新作がありますね。
 
 市山:『酔生夢死』は彼の映画の中でもかなりいい方で、代表作になるくらいです。今年の金馬奨でも侯孝賢に次ぐくらいのノミネートをされています。

 -チャン・ツォーチをアジアの未来に入れるわけにはいかないし。

 市山:フィルメックスでも今さらコンペでどうかという意見もあるんだけど、本人を勇気づける意味とか、いろいろ考えたら、コンペでやった方がいいかなと。

 -そのフレキシビリティがフィルメックスのいいところですね。アジアの未来も今年から監督3作目までよくなった。

 市山:少し広がったんですね。新人監督ばっかりがいいとは言わないんですけど、並びを見てみると、インディペンデントのものは浮く感じがちょっとあるかもしれない。中国のインディペンデント映画で面白いのは何本かあったんですけど。

 -コンペティションの選択基準て、並びですか?

 市山:並びは考えないようにしてるんですが、ある程度のものが決まった段階で、この中にこれを入れると見劣りがするとか、あるじゃないですか。中国がペマツェテンの『タルロ』とチャオ・リャンの『ベヒモス』なんで、もう1本入れるのもどうかということもあるし、中国のインディペンデント映画の面白いものは結構あったんですが、そのほとんどが、その後、ポレポレ東中野の中国インディペンデント映画祭で上映される。僕がいいと思って残念ながら落としたのは、みな向こうに入ってたんで、よかったです。

●新しい世代が物足りない韓国

 -そこで拾えるわけですね。それはいい話ですね。続いて韓国ですが、去年も今年もTIFFの韓国映画は私は全然ダメだったんです。

 市山:今年はそんなにすごく良くはなかったですね。今回は『コインロッカーの女』1本ですが、もう1本、韓国映画アカデミーの卒業作品の映画でかなり面白いのがあったんですが、10本には入らなくて。

 -カンヌで見た韓国映画も技術的には上手だったけど。
 
 市山:カンヌのある視点に入った2本は、僕はちょっとダメでした。1本は『無頼漢』というタイトルで、これがある視点に入るんだったら、日本映画でもっといいのがあるのに、と。韓国に気を使いすぎじゃないかと思った。

 -私は韓国映画をフォローしてるわけじゃないけど、どうも最近物足りない。

 市山:物足りないというか、新しい人でこれはという人は少ないですね。結局、昔デビューしたパク・チャヌク、ポン・ジュノ、ホン・サンスの世代で固まってて、30代以下の人達に今ひとつな映画が多い。

 -日本はどうですか。

 市山:日本は韓国よりはいます。カンヌのある視点に、あの程度の韓国映画が入るのでイラっとくるのは、応募して落ちた日本映画の方がいいと思うからで。

 -韓国に気を使ってる?

 市山:使ってないかもしれないですよ。毎年ある視点の韓国映画って見るとがっかりすることが多いんで。バランス上、日本映画は是枝、黒沢、河瀨があるからいいってことになってるのかもしれない。

 -でも、その下をなかなか出してくれない。

 市山:あの世代が強すぎるんですよ。

 -韓国もポン・ジュノやパク・チャヌクが強くてその下が出て来ない。

 市山:似てますね。ただ、今年の韓国はあの世代ではホン・サンスとキム・ギドクしか撮ってないんで、カンヌ映画祭的には、あの程度の韓国映画でもやったのかなという気がしました。

 -今年はアジア各国の作品が満遍なく出てますね。

 市山:今年は中国が2本あるだけで、あとはバラバラです。中国も1本はチベット、もう1本は内モンゴルで、辺境の映画が多い。それにネパールがあり、カザフスタンがあり、スリランカがあり。ちょっと外れたところの映画が多いです。(つづく)

 写真は『タルロ』上映後、Q&Aのペマツェテン監督(11月25日、朝日ホールにて)

(齋藤敦子)

(1)フリーハンドを大切に/市山尚三プログラム・ディレクターに聞く(前)

2015/11/25

tokyofil2015_p01.jpg 第16回東京フィルメックスが有楽町朝日ホールを主会場に始まりました。まずは市山尚三プログラム・ディレクターから興味深いお話をいろいろうかがいましたので、そこから始めたいと思います。

 -東京フィルメックスは今年で16回目になりました。去年、朝日新聞に古賀太さんが"フィルメックスの使命は終わった"というような説を載せましたね。

 市山:あの記事は、なるほどと思うところがたくさんありました。東京フィルメックスは東京国際映画祭(TIFF)と対抗する、というわけじゃないですが、TIFFでやらないことをやる、という感じで始まったが、TIFFもその後プログラム・ディレクターもちゃんと決めて、と言うと失礼ですが、それまでに比べて映画祭らしい体裁を整えた。日本を代表する映画祭がTIFFだとしたら、本来、そこがカバーしてなきゃいけない著名監督の作品や優れた新人の作品が明らかなにフィルメックスの方に来ている。むしろフィルメックスをTIFFの傘の中でやるようにすれば、TIFFが名実ともに日本を代表する映画祭になるんではないか、というような論旨だったんです。でも、逆に言うと、こっちとしては一緒にやる意味がない。TIFFの方から一緒にやりましょうという誘いがあったら考えられない話ではないんです。でも、こっちはフリーハンドでやらしてもらわないと意味がないですから、いろんな問題が起きる。

 -TIFFが、お金だけ与えて何かを自由にやらせるということはありえないと思いますね。

 市山:そうなんです。前に経産省から言われたときも同じ答えをしたんです。

 -経産省からアプローチがあったんですか?

 市山:経産省の現場の人から一緒に出来ないですか、というような話がありました。現場の人達がフィルメックスを見に来て、なぜこれがTIFFと一緒に出来ないんだろうということで。それで、例えば一緒にやるとこれぐらいのお金がポンと出ていきます、しかもラインアップなどはこっちの自由にやらせてもらいます、ということなら考えないわけではないということを話した覚えがあります。かなり前ですけど。たぶん、それを彼らが上にあげたところで潰れたんだと思います。その後の経過はわからないですけど。

 -それはもう、聞いただけで無理な話だと私は思いますね。

 ●TIFFとの一体化には抵抗感

 市山:こちらの懸念としては、フィルメックスをやっているということでいろいろ記事が出ていますよね、朝日だけでなく、日経や、読売にも出たりすることがあるし、それがTIFFと一緒になったときにマスコミがどういう風に扱ってくれるか。ただ今はウェブ媒体が強くなっていることを考えると懸念することではないかもしれないですが。

 -ウェブ媒体のことはわかりませんが、新聞記者の人達はTIFFに対してかなり抵抗感を持っていると私は思います。もっと新聞が積極的にTIFFについて大きな批判記事を書いてほしいと思うけれど、もう諦めているようなところがあるし、書いても変わるかというと、今の形態では無理な気がするし、それもあって、フィルメックスを応援したい気持ちが強くなるんじゃないでしょうか。TIFFは予算は戻ってきているようですけど、現場には入ってないみたいですし。上の方で何でも決めて、縛りだけはキツイというような状態の中に入って、いいことは1つもないし、石坂建治さんのアジアの未来とフィルメックスと、2つコンペがあっていいと思うんです。年に10本程度がアジアの才能ではないし、石坂さんのテイストとフィルメックスのテイストは同じではないし。

 市山:たまたま同じ映画を気に入っているということはありますけど、こっちで落ちたものが向こうに入り、向こうで落ちたものがこっちに入るということはあります。

 以前、フィルメックスの期間中に僕と石坂さんと矢田部さんが登壇して映画祭を考えるというシンポジウムをやったことがあるんです。あのとき、古賀さんが客席の方からいろいろ質問してきて、古賀さんとしては、TIFFはプサン映画祭に明らかに水をあけられてる、どういうふうにしたら海外に顔向けができる映画祭になるのかを日本全体で考えるべきだという理論なんですね。

 -無理ですね。プサンと比べてどうする、とも思うし。

 市山:プサンはオーガナイザーにちゃんと映画をわかっている人達がいて、いろんな圧力があっても跳ね返せる。去年なんか例のセオル号事件で大圧力があった。こんなものをやるんだったら助成金を出さないとか。でも結局抵抗して、ディレクターも辞めなくてそのまま残って、今回は予算が削減されましたが、それなりの規模で乗りきってるんで、ああいうのを見ると、成立の仕方からして違うと思います。

 -国自体も違うし、映画界自体のスタンスも全然違う。

 市山:あのとき、"ディレクターがクビになるんだったら、俺達はもう作品を出さない"と映画監督たちが一斉に声明を出した。あの辺は、プサンがこれまで韓国映画の若手を育ててきた歴史があるからだと思うんですけど、それはもう全然違うと思います。

-日本はそういう自体になった場合、一体になって抵抗するんじゃなく、政権寄りの人は政権寄り、反体制の人は反体制で、バラバラになっちゃいますね。

 というわけで、今年のフィルメックスですが、いつものように中国から始めたいと思います。今年は蔡明亮と侯孝賢の特集もありますし。

 市山:今年は中国圏がすごく多いんです。コンペに中国2本と台湾、蔡明亮と侯孝賢が特集で、シルヴィア・チャン、ジョニー・トー、ピーター・チャンの香港映画があって、クロージングがジャ・ジャンクーの『山河行人』。

 ●総シネコン状態の中国

 -確かに多いですね。今年はTIFFも中国映画が多い感じがしたんですが、現状はどうでしょう?

 市山:映画産業はとにかく発展し続けている。毎年毎年シネコンの数が増えるんで、それに従って観客動員数が増えるという、ちょっと世界にも例がない増え方をしていて、それが数年前に終わるかと思われたら、終わらないで、いまだに増え続けているんです。飽和状態になかなかならないで、すごく巨大なマーケットになっています。その反面、資本主義が行きついているような感じなんで、商業的に当たる映画と当たらない映画の格差がひどい。日本だと単館ロードショー館というか、テアトル新宿とかユーロスペースとか、そういうところでインディペンデント映画を上映する場があるんですけど、中国の場合は総シネコン状態なので、当たらないと1週間で消えてしまう。それどころか、ブッキングできない。要するに検閲を一生懸命クリアして中国政府の許可をとったとしても、今度は劇場がかけてくれないという経済面での検閲がある。

 -お金を集めてきて作っても、利益があがらなかったらお金を返せないですよね。
 
 市山:インターネット配信が今、爆発的なビジネスになっているんで、そいういう映画は劇場を諦めてインターネット配信に。

 -それで儲かるんですか?

 市山:見る人が多いんで。アート系の映画をインターネット配信で見る人は少ないと思うんで、どこまでかはわからないけど、ある程度は返ってくる。

 -ペイ・パー・ビュー?

 市山:そうです。ただ、1回出始めると皆が海賊版を回し始めるんで、最初にセキュリティをかけてペイ・パー・ビューで出すとちゃんと課金はされてくるらしいです。今、中国でインターネットの業者が雨後の竹の子のように出来ていて、彼らがラインアップを揃えるために作品を欲しがっているというところなんで、結構MG(最低保証金)が貰える。

 -前に聞いた、北京の郊外でやっていたインディペンデントの映画祭というのは結局どうなったんですか?

 市山:去年中止に追い込まれたんですが、今年やったかどうかは確認してません。面白いのは地方でどんどんやってることです。今年、僕は西寧(シーニン)というチベットに近い青海省というところでやってる映画祭でタレント・キャンパスのようなことをやっていて講師として招かれたんですけど、そこに行って驚いたのは、明らかに検閲を通ってない映画をやっているんです。ドキュメンタリーも、ちょっと社会派的なものをやっている。映画祭はアンダーグラウンドでなく、ちゃんと市の許可をとっていて、西寧市の大きな文化センターのようなところで派手なセレモニーをやったりして、上映はシネコンですが、明らかに検閲をまだ通ってなかったり、通すつもりもない映画をやっているんで、ちょっと驚いて聞いたところ、西寧でやっている限りは何も言ってこない、と。その映画祭も元々北京でやろうとしてたんだけど、あまりにも制約が強すぎるので、そこに逃げてきたらしいです。逃げてきたというと変ですけど。

 ●締め付けにも地域差

 -北京はお膝元なので制約が強いということ?

 市山:やっぱり北京映画祭が始まった頃から強くなったんじゃないですかね。それまでインディペンデント映画祭をやっていたのに、北京映画祭が5年くらい前に始まって、その頃から締め付けが強くなったみたいです。日本映画の上映会も北京ではすごくうるさいらしい。上海映画祭では今年も高倉健さんの特集をやったり、日本映画を山のようにやってお客さんが入っているんですが、北京映画祭は第1回目のときに日本から大勢行ったのに、2回目のときに反日デモが起こって、それからずっと日本映画をやってなくて、去年マルコ・ミュラーが就任して、ひさびさに園子温監督の『ラブ&ピース』を上映した。

 -でも、内容的な制約がかなり厳しくて、『ラブ&ピース』だったからできたと聞きました。あまりに介入がひどいからマルコが辞めるかもしれないと。

 市山:その噂は聞きました。そういうわけで上海映画祭はある程度自由で、さらに地方に行くと、今のところ無許可の映画をやっても問題がない。インディペンデントの人が発表する場というのは地方にいくと一応ある。あと、杭州にもインディペンデント映画祭があるし、南京もやってるはずで、地方のインディペンデント映画祭はそのまま開催されているはずです。

 -地方ならおめこぼし、みたいな?

 市山:地方でやってる分には誰も騒がなければそこで問題は起きないということだと思います。(つづく)

 写真は市山尚三プログラム・ディレクター​(11月11日、赤坂のオフィス北野にて)

(齋藤敦子)

(4・完)ワニ神話が不思議な味わい/最優秀作品賞に「クロコダイル」

2014/11/30

tokyo_fil_p_2014_0401.jpg 11月29日夕の授賞式を前に、プレス向けに受賞結果の発表と記者会見が行われました。中国の映画監督ジャ・ジャンクーを審査員長とする5人の審査員が選んだのは、最優秀作品賞がフィリピンの『クロコダイル』、審査員特別賞がイスラエルの『彼女のそばに』、そして中国の『シャドウデイズ』にスペシャル・メンションを、という結果でした。

【写真】受賞者と審査員。前列左が作品賞のフランシス・セイビヤー・パション、右がスペシャル・メンションのチャオ・ダーヨン。後列右から審査員の柳島克己、ジャ・ジャンクー、張昌彦、リチャード・ローマンド。

 フランシス・セイビヤー・パション監督の『クロコダイル』はフィリピン南部の湿地帯で少女がワニに襲われて亡くなったという事件をドラマ化した作品で、再現ドラマの部分とドキュメンタリー部分を、村の長老が語るワニ神話で包んだ、不思議な味わいの作品でした。パション監督は2010年のネクスト・マスターズ(現タレンツ・トーキョー)修了生で、『イロイロ ぬくもりの記憶』(12月13日より日本公開)のアンソニー・チェン監督とは同室だったそうで、劇中で母親を演じたアンジェリ・バヤニは、『イロイロ』では主人公の少年と心を通わせるフィリピン人のメイドを演じているという繋がりがあります。

 アサフ・コルマン監督の『彼女のそばに』は、学校の用務員として働く姉と、彼女が一人で面倒を見ている知的障害のある妹との関係を描いたもの。姉を演じた監督の妻リロン・ベン・シュルシュの実体験が基になっていて、姉妹の親密な愛情関係と、愛する者に束縛され、自分の人生を失ってしまう女性の痛々しい姿が胸に迫ってくる作品でした。

 ヨルダンの『ディーブ』やイランの『数立方メートルの愛』といった、まとまりのいい、よく出来た映画でなく、荒削りながらアイデアの優れた『クロコダイル』が選ばれたことは、フィルメックスの主旨に合った、いい選択だったと思いました。また、中国の『シャドウデイズ』にスペシャル・メンションが出たことは審査が割れたことをうかがわせますが、その点について質問したところ、スペシャル・メンションは作り続けることを応援するという意味で、各賞は審査員の全員一致で決まったとのことでした。

 私が特に感銘を受けたのは、パク・ジョンボム監督の『生きる』でした。山崩れで両親を失い、神経衰弱の姉とその娘の面倒をみながら、山奥の味噌工場で働く男の必死に生きる姿を描いた3時間近い作品で、市山ディレクターとのインタビューにもあるように低予算で撮られていますが、そんな悪条件を突き抜けるような監督の意志とパワーに圧倒され、この力作が賞から漏れてしまったことを、とても残念に思いました。

tokyo_fil_p_2014_0402.jpg 第15回東京フィルメックス受賞結果
<コンペティション部門>
●最優秀作品賞:『クロコダイル』フランシス・セイビヤー・パション監督(フィリピン)
●審査員特別賞:『彼女のそばで』アサフ・コルマン監督(イスラエル)
 スペシャル・メンション:『シャドウデイズ』チャオ・ダーヨン監督(中国)

●観客賞:『プレジデント』モフセン・マフマルバフ監督

●学生審査員賞:『彼女のそばで』アサフ・コルマン監督

<タレンツ・トーキョー>
●タレンツ・トーキョー・アワード2014:『Somewhere South of Reality』
 ジャンカルロ・アブラアン(フィリピン)
 スペシャル・メンション:『A Family』ムン・クォン(韓国)

【写真】タレンツ・トーキョーの修了生と講師

前列右から講師のフロリアン・ウェグホルン、ウィニー・ラウ、諏訪敦彦
後列で賞状を広げているのが受賞者のジャンカルロ・アブラアン(右)とムン・クォン(左)
(敬称略)

(齋藤敦子)

(3)コンペ作品を見てほしい/林加奈子ディレクターに聞く

2014/11/27

tokyo_fil_p_2014_0301.jpg-今年のカンヌで特に感じたんですけど、今のカンヌは巨匠が何個パルムドールを取るかみたいなところに来ていて、いきなりコンペでパルムを取るような新人は出てきにくくなっている。新人発掘の機能はフィルメックスのような、あまり大きくない映画祭に託されているような気がするんですが。

林:カンヌは既にパルムをとってしまった監督たち用にもう1つセクションを作らないと、同じ人達の同窓会の繰り返しになってしまうと思いますね。ただ、あれだけ大きいカンヌだけど、プサンやベルリンに比べたら、かなりコンパクトである努力はしていると思う。それは悩ましいとは思うし、誰に言われるよりもカンヌが一番よくわかっていると思うんだけど、映画祭の宿命として、映画祭は大きくなっちゃうんです。フィルメックスの場合は逆に広げないように、大きくしないようにしています。これで何億円かポンともらったらわからないけど(笑)。ニューヨーク映画祭なども厳選して30本くらいしかやらない。フィルメックスは今年25本ですが、全部の映画を見ることができる。1日3本とか4本で、同じ映画について話せる映画祭にしたいんです。ベルリンに行くと"私はパノラマのこれを見た、よかった"と言っても、"私はフォーラムでこっちを見ていた"となって話として成り立たない。カンヌはあれだけ大きいけれど、オフィシャルの数が限られているから、会って同じ話ができる珍しい映画祭です。

-カンヌの場合はコンペがすべての中心で、レッドカーペットにしても何にしてもすべてコンペが基本になっていて、そこを外していない。だけど、ベルリンの場合はコンペが弱いから、パノラマを見たり、フォーラムを見たりしないとベルリンに行った甲斐がないということになる。

林:映画祭の醍醐味を味わえない。

-フィルメックスもコンペが柱ですね。

林:コンペが核だと言い続けているんですが、コンペというのははっきり言って、お客様が一番入らないセクションなんです。それはカンヌとの大きな違いで、なぜなら今年9本コンペティションでやりますが、そのうち5本がデビュー作なんです。だから監督といっても知る人がいない。あとはフィルメックスを信じて見てもらうしか方法がないんだけれども、11月3日からチケット発売をしていますが、売り切れになっているのは特別招待のキム・ギドクであったり、クローネンバーグであったりで。でも考えてみるまでもなく、ギドクさんは第2回のコンペティションで上映した作家だし、アピチャッポン・ウィーラセタクンも第1回のコンペティションで上映しているんです。特別招待作品はお祭り的な賑やかなものを必要としているけれども、フィルメックスの核はコンペティションで、コンペティションを見てもらいたいと思う。みんな自分が審査員になったつもりで見てみてください。これが今、世界で最も新しい映画だし、10年15年たったときに、ギドクさんのように、即日完売のような形で新作を待っている監督になってくれる可能性はありえると思うから。

-映画祭は満席にならないと苦しいものですか?

林:満席になってもだめです。チケットの売り上げだけでは1席1万円くらいにしないと。1万円で売ってもぎりぎりかな。以前、"3分の1は州や国などの行政でカバー、3分の1はスポンサー、3分の1は入場料収入だと、なんとかバランスがとれる"と、セルジュ・ロジック(モントリオール世界映画祭ディレクター)に言われたことがあって、なるほどと思ったけれども、会場費などを全部計上していくと映画祭によっては凄いでしょうね。カンヌなんかは自前の会場がありますが。

●映画祭ならではの自己矛盾
-そうすると、チケットを売っても売らなくても赤字で、寄付なり助成金なりで補填して運営していくわけで、純粋にお客に来て欲しいというのは、この映画監督を見て欲しい、作品を見て欲しいという気持ちですよね、儲かりたいという気持ちじゃなくて(笑)。

林:というか、お客様が入ることは結果的には望まなきゃいけないことだけど、入ることを1番の目的としていたら、もっとお客様が入る映画ってある。たとえばエンターテインメント。香港映画とか、スターが出ているとか。入ることを目的とするんであれば、全然違うセレクションになるわけです。

-以前、市山さんが"インド映画をやれば入ることはわかってるんですけどね"と言ってました。

林:うちのアンケートでも、サプライズ映画はインド映画や香港映画がいい、誰々の新作だったらいいというはある。でも、お客様はもちろん大事だけど、お客様が見たいものを見せるだけだったら映画祭じゃないと思う。ただ、やる限りはお客様に入っていただかないといけなくて、"こんな凄い映画をやってるけど誰も見てくれなくていい"というのとは違う。見てもらいたいんです。そこの自己矛盾は凄いです。逆に、映画祭のビジョンとは何かを考えていたときに、逆説的に考えたらフィルメックスがなくてもいいことだと思ったんですね、世の中的に。東京フィルメックスがなくても、こういう映画が普通に公開されて、普通にお客様が見に来てくれて、配給会社でも何でも全然なりたっていて、フィルメックスがなくても機能しているんだったら、本当はそれが一番理想なんじゃないかなと思った。

-そうはいかない、"もっと他にいい映画がありますよ"って絶対に言い出すよ(笑)、今年のコンペ9本以外にも紹介したい映画があるはずだから。

林:元を返すと、フィルメックスがなかったら日本で上映されなかった作品がこれだけあるってことですね。私がどうしてもやらなきゃと思う映画が日本でどんどん公開されて、いくらでも見るチャンスがあれば、普通にお金を払って映画を見た方が、精神的には幸せじゃない?って思う。天の邪鬼な言い方じゃなくて、本当の幸せはどこにあるんだろう?と思います(笑)

-15年やってきて、フィルメックスでやらないとどこもやらないような映画が増えていると思いますか?

林:数としてどうなっているかわからないけど、相変わらずありますね。

-この15年、リーマン・ショックの前後でいろいろ変わったし、映画がフィルムじゃなくなったり、日本映画も沢山作られているけど上映されない映画も沢山あって。

林:80年代90年代ミニシアターまで含めると波が幾つもになりますが、ここ15年に絞ってもフィルメックスで上映される映画が1本も配給が決まっていなかったときと、ちょっと決まっていたときがあって、また最近厳しくなっていて、より一層やらなきゃいけない映画がある。それは悲しい、残念なことだと思う。

●才能を見つけたい

-今は配給する側の話でしたが、作る方は?

林:数は増えているんじゃないでしょうか。海外からフィルメックスの名前をあげて上映して欲しいと言ってくる作品が増えているからかもしれないけれど。日本映画は前からですが、海外でも、たとえばトルコは今まで1作品もやれていませんが、毎年20~30本以上見続けていて数はすごいです。アフガニスタンとか、今まで知らなかったところからビデオで撮った作品が出て来たりしている。ただ、私達は技術はつたなくても、アイデアというか、なんとかしなきゃというユニークネスがどこかにあるものを取ろうとしているんです。

-撮れる状況があれば才能が増え、なければ減るというわけではなく、どんな状況でも才能はいる?

林:それを何とか見つけようとしている毎日なんです。

-今年は見つかりましたか?

林:今年の9本はいいと思いますよ、毎年同じことを言ってますけど(笑)

-フィルメックスはなるべく新人を捜そうとしているわけですよね?

林:1作目だけじゃなく、その人の次を見たいと思う作品を選んでいるつもりです。だから、その作品の完成度はそんなにびっくりするようなものでなくても、この人が次を作れるために、たとえば映画祭で選んで上映することで応援の気持ちを伝えられるんだったら、コンペでやるしかないという気持ちかな。監督に来てもらって、私がこんなにあなたの映画を好きだったんですよ、こんなにあなたの映画のことを受け止めていますということを伝えたいと思う人を選んでいるんです。

●賞が増える。映画祭の宿命
-今年はジャ・ジャンクーが審査員長で、中国映画が1本ですね。

林:ヨルダン映画が初めて入りました。イランはドキュメンタリーと劇映画が1本ずつ入っています。コンペティションというのは基本的に必要悪だと思っているんです。映画を比べるとは何事ぞと。それはわかっているけど、でもやっぱりコンペティションにすることでアテンションを高めたり、もし賞に結びついたら、その人が次に作れるためになる。フィルメックスでお客様が応援してくれたことが弱くても太鼓判になるんだったら意味があることじゃないかと。ベルリンのフォーラムも元々はコンペティションじゃなかったのに、コンペ部門よりも凄い映画をやってたから、いろんなスポンサーがついた。それでフォーラムの中の何かに賞をあげましょうとカリガリ賞とか、ウォルフガング・シュタウテ賞ができた。

-カンヌのある視点も、最初は賞の名前もなく、『そして人生はつづく』のときはグラス・ジェルヴェ賞といってアイスクリームの会社が出したんです。そのときはその1つだけだったのに、その後どんどん増えて、今は5つくらい出る。結局、賞って増えていく。

林:パルム・ドッグも含め(笑)。それは冗談ですが、批評家週間も監督週間も含めて、だんだん賞ができてくる。それは作った人への敬意、アプローズ、すばらしかったです、本当にあなたの映画を応援しているんです、ちゃんと受けとめたんですよと伝えるためのものだから、映画祭ができることとしては悪じゃないと思ってやるしかない。それは映画祭の宿命みたいなところです。

-今年のクローネンバーグ特集はどこから?

林:今年が日本とカナダの友好85周年というのを去年から聞いていて、フィルメックスが15年だから合わせて100年じゃないですかみたいな話から。

-足せるものですか?(笑)

林:これまでもフランス、フィンランド、ハンガリーなど、アジアにこだわらずに国をとりあげてきています。大使館にも周年だと予算があるので、カナダは前にガイ・マディンを特集したことがあって、他にやりたい監督を何人も考えて、最近の若い人のクラシックを見なさ加減を考えて、『ザ・フライ』より後の作品はDVDで見られるチャンスはあるけれども、本当の初期の頃のクローネンバーグって、今の若い人たちや作り手にとっては本当に全く初めましてなんだな、と思ったんです。今年、私達がクローネンバーグをやることで、『ザ・フライ』とか『ザ・ブルード』とか、見ようと思えばDVDで見られるものはキャッチアップしてもらえる。やる気のある人達は調べようがある。今年、初期の2本と『マップ・トゥ・ザ・スターズ』と両方上映できるのは、ある意味奇跡なんです。

-変わってないということがわかる。

林:この人って最初から巨匠だったんだと。

-いや、最初から変だったと(笑)

林:最初からずっと、ということは本当に凄いことです。クローネンバーグが初期のお金がない中で、学校の校内を使って撮って、空間が独特な雰囲気を持っている。クローネンバーグが工夫していることを今、篠崎誠さんが『SHARING』でやっている。それはすごくつながったなと思ったし、キム・ギドクさんの『ONE ON ONE』や塚本晋也さんの『野火』のバイオレントへの考え方も、巨匠と見比べると見えてくるものがあるはずだなと思った。映画祭にできることって、そういう一緒に見ることでつながっているのを見せることだと思う。例えばサプライズ映画の『ジャ・ジャンクー フェンヤンの子』も、ウォルター・サレスがなぜジャ・ジャンクーに密着してドキュメンタリーを撮ったか、なぜこんなにジャ・ジャンクーのことを愛しているのかということがわかるドキュメンタリーですが、ジャ・ジャンクーが審査員にならなかったら、これをやってもサプライズの意味があんまりなかった。結果的にうまく収まって本当によかったです。ジャ・ジャンクーがいるときに、この映画を見て、"ジャ・ジャンクーは、もう世界の作家なんだ"ということがわかってもらえる。本当に、まとまるまでは本当に苦しい日々だったんです。『マップ・トゥ・ザ・スターズ』もカンヌ直後に配給が決まらなかったりで、よくフィルメックスでやらせてもらえたなと思うし、映画祭はいろんなミラクルの積み重ねなんです。

-特別招待作品にはバイオレントという切り口もあるように思え、そうすると<1960 破壊と創造のとき>の特集にもつながりますね。

林:1960年て、塚本さんとギドクさんが生まれた年でもあるんです。だから何って言われたら何でもないけど。

-85と15を足したら100みたいに(笑)。

林:本当に結果的なものなんだけど、楽しんでもらいたいなと思います。

(11月10日、赤坂の東京フィルメックス事務局にて)

(齋藤敦子)

(2)上映活動への締め付け厳しく・中国/市山尚三プログラムディレクターに聞く

2014/11/25

tokyo_fil_p_2014_0201.jpg-まずうかがいたいのは、今年インディペンデント映画祭(北京独立電影展)が中止になり、香港でも学生デモがあって、外から見ると揺れている中国のことですが。

市山:検閲に関しては特に変わってないです。コンペ作品の『シャドウデイズ』は、内容が一人っ子政策の批判なので、許可がとれないのをわかりきって作っていて、ベルリン映画祭を始め、いろんな映画祭に出ていますが、特に監督に何か害が及んだという話は聞いていない。ジャ・ジャンクーやロウ・イエがアンダーグラウンドで撮っても妨害がなかったのと同じで、アンダーグラウンド映画を作ることに特に締め付けがきつくなったということは聞かない。締め付けが厳しくなったのは映画祭なんです。インディペンデント映画祭に対して締め付けが厳しくなった。それは3年前に、誰も知らないと思いますけど、北京映画祭(北京国際電影祭 BJIFF、今年4月に第4回を開催)というのが始まって、その頃から始まっているんです。

-上海映画祭は有名ですが。

市山:上海は歴史があるし、国際映画製作者連盟にも加盟しているんですが、突然北京映画祭というのが始まって、それはもう完全に国家イベントなんです。上海映画祭は、上海撮影所を母体としている上海電影集団という製作配給会社があって、そこが運営しているんで、ある意味民間なんです。民間といいながら、中に国家官僚出身の人達がいるんだけど、厳密に言うと国家イベントではない。

-私は国家がやっていると思っていました。

市山:許可をとった映画しかやっていませんけど、もともと国営の撮影所だった上海撮影所を民営化して、製作出資をやったり、配給をやったり、ジャ・ジャンクーにいつも投資している上海電影集団というのになって、そこのトップの人がプレジデントの映画祭なので、実は国家イベントとは言えないんです。これに対して北京映画祭は完全に国家イベントで、1年目には結構日本映画もやって、日本の映画関係者もたくさん行って混乱ぶりを目の当たりにして(笑)、いろんな話を聞いたんですが、2年目から日本映画をやらなくなって、第2回、第3回は日本映画一切上映なし。それに対して上海映画祭は日本映画をがんがん上映している。

-そう聞くと、確かに国家イベントですね(笑)。

市山:インディペンデント映画祭は、北京映画祭が始まった年から突然締め付けが厳しくなった。今までリ・シェンティン(栗憲庭)というアーティストが募金で作った基金(栗憲庭電影基金)があって、そこがソンチュアン(宋荘)という北京の郊外にあるアーティスト村で映画の上映会をやったり、ドキュメンタリー映画の助成をやったりしてきた。それが、今年ついに中止に追い込まれた。一説には、どうせインディペンデント映画祭なんて見に行く人もいないだろうと思っていたら、意外に海外で評判になって外国の映画祭のディレクターが見に行ってる、あるいは北京市内の映画ファンが行ってるということで、今まで無視していいと思っていたものが、何となく盛り上がっていることに気がついた。今までも、オープニングの招待者の名簿を出せとか、そういう干渉はあったんですが、今年はついにアートディレクターのワン・ホーウェイと、もう一人が呼ばれて、宣誓書みたいなのを書かされて中止になったということです。これは僕の予想ですけど、たぶん北京映画祭をネットで検索していたら、知らない間にこっちが出て来て(笑)、それで気がついたんじゃないかと。

●映画祭の影響力
-今年は香港で大規模なデモもあったんで、いろんなところに締め付けが来ているのかと思いました。

市山:それとはあまり関係ないです。3年前からじわじわと。オープニングのパーティをやってると警察がやってきて、皆を見張っている中で飯を食っているという、そういうのが2年くらい続いてた。

-なるほど(笑)

市山:笑い事じゃないですよ。でも、去年までは結構笑い事で終わってたんですが、今年ついに中止に。

-私もネットのニュースで知りました。
市山:中止だけだったらいいんですが、映画基金に置いてあった、いろんなドキュメンタリーのフッテージが接収されたらしい。そっちの方がもしかしたら重大かもしれません。そこで中国のドキュメンタリーを閲覧できた。見たいというと見せてくれたんです。製作に関しては相変わらずで、許可をとらずに勝手に撮って、それが妨害されたという話は聞かないけど、上映活動に関して、いろいろなクレームが来ている。それは北京だけじゃなく、地方の主要都市でもインディペンデント映画祭をちょくちょくやってるんですが、場所によってはホールを貸してくれないとか、そういった締め付けが来ている。もしかしたら、北京が中止に追い込まれたんで、地方のホールがビビってるだけかもしれないけど、今年になってから上映活動に関する締め付けが厳しくなったのは間違いない。以前は映画祭なんて関係ないと思ってたのに、意外に影響力を持ち始めていることに気がついたのかもしれないですね。

-『シャドウデイズ』は無事に外へ出られたわけですか?

市山:ベルリンで上映してますし、監督本人もいろんな映画祭に参加しています。

-中国国内での上映は?

市山:できないですね。前はできたんです。インディペンデント映画祭では王兵の『無言歌』を上映してQ&Aをやっているんで。今回は何を上映するのか事前にリストを出せというところからじわじわ始まって、最終的には、何が理由かということは言わないんです。この映画をやったらダメとかは絶対に言わない。とにかく中止にしないと、お前達はここから帰さないみたいなことを言われて結局中止という。

-作れていることは作れているが、上映はできなくなっている?

市山:ただ、いずれにしても収入にはならないんです。こういう作家は海外に出資相手の人達がいるし、細々と上映料を徴収したりしながら何とかやっているけど、中国国内では見返りを期待していない。公開はできないわけだし、インディペンデント映画祭から上映料をとるわけにもいかないだろうから。でも、今までは少ないながらも見せる機会があったのに、それが今、失われつつある。中国のインディペンデントの作家達が今大変だと思うのは、彼らが普通の映画を撮ろうと思ったとしても、今度は商業的な検閲があって公開されないとか、その前に出資者がつかないとか、アートシアターというものが全然ないんで、結局、作ったのはいいけど世に出ない映画がたくさんある。

-作っても上映できなければ出資者がいなくなるでしょうね。それで自己検閲したりする。

市山:作家性なんか関係なくなって、スターを使って娯楽映画を作らないと道がない。だから、政府の検閲にプラスして、そういう商業的な一種の検閲があって、そういう点では厳しい状況ではありますね。

-最近、中国映画が大きな映画祭のコンペになかなか出てこなくなりました。

市山:娯楽映画的なものは海外の映画祭はやらないんで。今年でいうと、カンヌはコンペがなく、ヴェネチアでワン・シャオシュアイがかろうじてコンペに入っただけ。文革の傷跡みたいなものを扱っていて、ちょっと社会性もあり、検閲的にはすれすれのクレームのつかないところで撮っているというタイプで、いい映画だとは思いましたが、じゃあ、国内で公開して当たるかというと、おそらく当たらない。中国には、他で儲けているから映画が儲からなくてもいい、映画祭に出してみたいというスポンサーがたまにいたりして、そういう人達をなんとか見つけてきて撮ってるみたいなところはありますね。

 前にフィルメックスでやった『オールド・ドッグ』のペマ・ツェテン監督の新作が今年の上海映画祭に出ていましたが、ちゃんと許可を取って撮ってて、政治的なテーマは一切なし、チベットを舞台に弓矢を射る若者達の話で、ちょっとエキゾチックだけど、別に有名な役者が出てるわけでもないし、公開はされるだろうけど、ではそれが当たるかというと難しい。インディペンデントの人達が生き残るのは、自主ばっかりやっていると疲弊するだけだし、かといって商業的なものを作っていると国際映画祭からは遠ざかっていくという、そういうジレンマというものは皆あるかもしれないですね。

●韓国映画にも同様の問題
-今年は韓国映画が2本ありますが。

市山:去年は韓国映画が1本もなかったですけど、今年は結構面白い映画がありました。ただ、韓国映画も同じような問題があって、『扉の少女』の方は一応ペ・ドゥナというスターが出ていて、大当たりするような映画ではないけど、公開はできる。『生きる』の方は、実はチョンジュ・デジタル・プロジェクトの一環なんです。今までは短編3本だったのが、それがなぜか長編3本になって、1本が『生きる』で、もう1本がパールフィ・ジョルジの『フリー・フォール』、それにもう1本が韓国映画。

-『フリー・フォール』は東京映画祭で見ました。クレジットにチョンジュの名前が出てきたんで驚いたんです。

市山:今年からアジアとか関係なく3本長編を作るというふうに変えたんです。どの程度製作費が出たのかわかりませんが。『生きる』も、お金がない中で作っていると思うんですけど、そういう意味では極まってて、すごい映画なんです。チョンジュ映画祭のおかげで出来た映画とも言える。実際に韓国映画界でこういうものを作っていくのが大変なのは間違いない。やっぱり商業映画が強いですし、基本的には商業映画にしか興味のない出資者というか、そういう人達しかいない。

-韓国映画は行き詰まっている感じがしますね。キム・ギドクさんのところはギドクさんというパーソナリティがあるので別格でしょうけど。

市山:日本だと、例えばビデオ会社とかが何回か投資して、いつか儲かったらいいみたいな感じがあるじゃないですか。でも韓国だと、出資者が投資会社みたいなところなんで、長期的にやってどこかで儲ければというより、その場で儲からないともう次は出さない。

-シビアなんですね。

市山:長い目で見て、この人にぜひ投資をというような言い分がほとんど通用しない。キム・ギドクとかホン・サンスは海外セールスで回収できるくらいの低予算で作って、韓国で当たらなくても最悪なんとかなるというやり方だから、なんとかなってる。

-チョンジュも変なことをやりますね。

市山:不思議ですね。ディレクターとかが一層されて新体制になったら突然。1つわかるのは、短編オムニバスにすると3本全部がいいということはほとんどない。フィルメックスにも応募が来るけど、1本は駄目なものがある。で、これやるのは厳しいよねということになって、結局やらなくなることが多い。長編だとバラ売りしてどんどん出て行く。少なくとも『フリー・フォール』と『生きる』の2本が展開していければ、映画祭のプロモーションとしてはすごくよかったということになる。最近は政府のサポートが厳しくなり、昔ほど助成金が多額に出るという状況じゃないんで、それがたぶん韓国映画が映画祭的に厳しくなってる1つの理由ではありますね。前は新人だと助成金が結構出るというんで、思い切ったものが出来ていたのが、今は新人でも商業的なことを考えなきゃいけなくて、そこで日和ってしまっているということはあるかもしれない。

-中国と韓国はインディーズの作家に別の意味で問題があるような感じしますね。中国は政治的な、韓国は経済的な。
市山:経済的なというところでは中国も同じかもしれない。自主で作る以外には、もう商業映画と折り合いをつけなければやっていけないという状況になってますから。

-フィリピンから『クロコダイル』という作品が入ってますね。

市山:フィリピンは今年も面白い映画が何本かありました。フィリピンはとにかく低予算で作るんです。確かにお金があまりかかってないように見えるけど、その代わりに国際映画祭に対して強いのと、いろんな助成金がある。1つはシネマラヤ映画祭が企画に助成金を出してて、そんなに大きなお金じゃないけど、人によってはその助成金だけで映画を作ってしまうし、多少実績のある人はヨーロッパから助成金を貰えたりするんで、そういったお金だけで作ってしまう。そうすると日本で商業公開するのはなかなか難しいようなものしか出来てこないんだけど、とりあえず作り続けることはできる。
 最近大きく変わってきたのは、この『ディーブ』がそうなんですが、アラブなんです。アラブ圏にはドバイとアブダビとカタールという3つの映画祭があって、それが競って助成金を出している。

-オイルマネーで。

市山:ドバイは資金難で今年コンペがなくなったと聞いたんで、これがいつまで続くかわかりませんけど、その3つの映画祭がアラブ・プレミアを条件に助成金を出しているんで、どれかの助成金が出たアラブ系の映画が結構多いです。

●1960年という切り口
-特集上映<1960―破壊と創造のとき>について。

市山:今年、松竹が大島渚監督の『青春残酷物語』のデジタル・リマスター版を作ったところから始まったんですが、大島さんの特集は、すでにいろんなところでやっているんで、時代を切ってみた方が面白いのではないかと。特に1960年というのはいろんな人達が続々デビューしてるんです。厳密に言うと、大島さんはその前の59年のデビューで、60年は吉田喜重さんや篠田正浩さんなんかがデビューしている。ただし、吉田さんや篠田さんの作品は海外に出ているので、今回は高橋治さんの『彼女だけが知っている』と森川英太郎さんの『武士道無残』の2本で、英語字幕を作ったのは初めてなんで、海外では誰も知る人がいないと思います。

-これはデジタル上映ですか?

市山:そうです。なぜかというと、去年ベルリン映画祭で中村登監督の特集をやったときに35ミリで上映できる会場が2か所しかなかったんです。1か所はデルフィという昔ながらの会場で、西ベルリン側なのでプレスの人もなかなか行かない。もう1か所はアルセナールというキャパの小さいところで、すぐ人がいっぱいになってしまう。でも、ベルリンだから35ミリで上映できたんで、他の映画祭はデジタルでなければ上映できないところに来ていると思い、だったらDCPを作ってしまおうということで、DCP英語字幕付きになりました。作ったはいいけど上映できなければ話にならないんで。

-デジタルで英語字幕が付くのはこの3本?

市山:『青春残酷物語』は松竹がJ-LOP(ジャパン・コンテンツ ローカライズ&プロモーション支援助成金)で作ったんですが、『彼女だけが知っている』と『武士道無残』はフィルメックスの経費で作りました。本当はあと何本かやるべきとは思ったんですが、この本数が限界なんです。

-1960年という切り口が面白いですね。

市山:大島渚さんが61年に松竹を辞めてるんで。もちろんその後、吉田喜重さんとか篠田さんがいろんな作品を作ってますけど、松竹全体で盛り上がったのは、本当にこの1年限りなんです。
 この『武士道無残』は見てますか? 監督の森川英太朗という人は1作しか撮ってないんです。松竹とごたごたして、おそらくそれが嫌で辞めてしまって、しばらく創造社にいて、大島渚さんの助監督をしたり、日活の映画の脚本を書いたりしていた方ですが、結局、監督作品はこれ1本で終わってしまった。『武士道無残』はすごく硬派な作品で、演出力もあるし、もったいない人材という感じがします。

-1960年と言えば日米安保の年でしたし、若い映画ファンに1960年を再発見してもらいたいですね。

(11月10日、赤坂・東京フィルメックス事務局にて)

(齋藤敦子)
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