第153話について

『第153話 「清州の対面」』

秀吉は、人を威圧するのにしっかり手間をかけますね。
政宗をさっさと京に行かせず、小田原を見学させた後は清洲で待ち構えていました。
前年奥州に下向する際にも秀吉は宇都宮を通る日取りを頼朝の記録に合わせようとしているようです。
今回は秀吉がかつて清洲で運をつかんだ(清須会議)ことを踏まえての験担ぎでしょうか。
それとももっとほかの意味があるのかな。

「イスパニアじゃ大きな島ひとつ滅ぼし、他所から人を移住させたそうだ。同じことがわしに出来ぬと思うか」

これはマンガでのセリフで、秀吉がこういった記録はありません。あしからず。
秀吉が奥羽仕置きに際して浅野長吉に対して出した文書には「亡所になっても苦しからず」とあります。こっちは本当。
マンガでは奥州仕置の「亡所」と朝鮮出兵、新大陸の歴史をリンクさせて考えてみました。

セリフの中の全滅の島とは、エスパニョーラ島とキューバです。
全滅の後でアフリカからの奴隷を入れて労働力にしました。
元ネタはこの時代に生きた神父でインディアス保護のために戦った神父ラス・カサスの
『インディアスの破壊についての簡潔な報告』です。岩波文庫で読めます。
評伝も何種類かあります。

『インディアスの...』はラス・カサスが、新大陸でのインディオスに対する入植者たちの残虐行為を告発した書。
ラス・カサスの言い分は、キリスト教を理解する能力のある(とラス・カサスが考える)インディオスを、改宗のチャンスを与える前に残虐に殺すことを非難するものです。
1542年のバリャドリードでのインディアス評議会でカルロス1世がインディオス保護に舵を切る根拠とされます。

ポルトガルとスペインの世界征服計画に対して、秀吉の反撃としての大陸出兵という見方を宮城学院大学学長の平川新(あらた)先生が書かれています。
あ、中公新書で今月『戦国日本と大航海時代』が出るんだ!


奥州仕置の一方で朝鮮出兵gaku-02-153.jpgを推し進める秀吉。
これは秀吉がゼロから思いついたわけでなく、信長が企図していたと、フロイスの『日本史』にあります。

「(信長は)毛利を平定し、日本六十六ヵ国の絶対君主となった暁には、一大艦隊を編成して支那を武力で征服し、諸国を自らの子息たちに分ち与える考えであった」

これが秀吉に引き継がれ、奥州の運命とも絡んでいったかと思うと複雑。


このマンガを描くときには、なるべく政宗の周辺だけで調べ物が終わったらなあと思っていました。
も―とんでもない。
地域史って、いろんなこととつながっていますね