第170話について 

『第170話 留守、命乞いをする』

大崎合戦で伊達を押し返した黒川月舟斎gaku-170-01.jpg(げっしゅうさい)、留守政景の奥さんのお父さん、つまりお舅さんのお話です。
マンガでは黒川月舟斎の方を出すのが精いっぱいで、長江月鑑斎(ながえげっかんさい)を描けませんでした。
大崎合戦を描いた『政宗に睨まれた二人の老将』は郷土史家である紫桃正隆(しとうまさたか)さんの、資料に基づいた物語で、月舟斎、月鑑斎ふたりの命運を描いています。
1975年宝文堂からの出版で、古書として手に入れることができるのではと思います。

六郎政景が留守家に入嗣するとき、私はまず黒川家の竹乙姫が留守家の当主顕宗の養女となり、竹乙姫の婿になる形で留守家の当主になったのではと理解しています。
いきなり留守家先代の養子になったのではなく、黒川氏のワンクッションがあったのでは。こういう養嗣子のあり方は、芦名家で盛興が酒毒で死んだ後、隠居の芦名止々斎が盛興の妻彦姫を自分の養女にし、そこに二階堂家から人質に来ていた盛隆を婿に入れて芦名家当主にした...と、これも私はこう理解しているのですが、これと似た形ではないかと考えています。
彦姫って、実家の名前の「伊達御前」って聞いたことがないんですね。芦名の彦姫、という感じなのは、止々斎の養女になったことが関係していないかな。

えー話を戻します。
留守政景にとって黒川月舟斎は入嗣する19歳からの恩人だし、入嗣先の留守家中を制圧する戦では味方でした。そして大崎合戦(大崎一揆じゃないです。第86話 正月の語らい 第87話 大崎攻め・壱 第88話 大崎攻め・弐 第88話+1雪八島(ゆきやしま) 第89話 大崎攻め・参 )では、留守政景対黒川月舟斎の戦いがありました。gaku-170-02.jpg
その月舟斎の命の危機に、政景は政宗に食い下がり続け、最後は留守家領土をすべて献上、自分は一介の旗本として政宗のために働くと申し出ます。
この辺は治家記録から。こんな面白い話、私が考えたんじゃなくて資料があるんです。

このマンガを描くにあたって留守政景に注目したのは、きっかけは仙台市史。
その次が大崎合戦で負けた時の「自分だけでなく僚友全てを逃がしてくれるなら戦わずに退くが、手を出すようなら徹底抗戦」という治家記録。あのさあ負けてるんだよね、ずいぶん強気に出るよねという交渉ぶり。
それから今回の、留守領全てを差し出しての義父の命乞い。
負けたり追い詰められたりしたときに見えるキャラクターってありますよね。

月舟斎についてだけ見ると温情の人のようだけれど、政景は同時期に政宗に追い詰められた長江月鑑斎...このひとは最上に通じていた疑いをかけられていたのですが...については全く命乞いをしていません。この辺は実にドライです。
マンガでは「強い情を強い理性でコントロールできる人」と思って描いています。

マンガの真ん中の廊下のシーン、留守さんが緑、政宗が白で描き分けたんですが、色がどのくらい出たか...。廊下に映る柱の影で時間の経過を出して、留守さんが粘ったのを表現しようとしたんですが、絵が小さいからなあ。

今回絵で頑張ったのは最初のコマの空のうろこ雲なんですが、ほぼ吹き出しの下になりました。残念だから楽屋に挙げておきました。