調査から(5)老健施設<下>/「最期まで」増す需要

 特別養護老人ホーム(特養)との垣根が低くなっていると指摘される介護老人保健施設(老健)。その現状をどう受け止めているのか。私たちは別の老健施設も訪ねた。
 「在宅介護が無理な人に、在宅に近い形で最期を迎えられるようにしてあげたいという点では、老健も特養も変わりません」
 宮城県川崎町にある「アルパイン川崎」の施設長佐竹恵子さん(64)が話した。
 アルパイン川崎は、河北新報社と広南病院(仙台市太白区)が実施した実態調査で、遷延(せんえん)性意識障害の入所者を「9人」と答えた。原因別では5人が脳卒中。「その他」の4人について、佐竹さんは「認知症が進んで意思表示や反応がなくなった方々です」と説明した。
 大半が5年以上、入所しているという。「特養は100人待ちがざら。(特養は医療職が少ないので)たんの吸引や経管栄養が必要な人は、なおさら入所できないでしょう」

<入所の8割女性>
 9人中、7人を女性が占める。アルパイン川崎に限らず、実態調査でも女性の比率の高さが目立ち、老健にいる該当者では8割近くに達する。
 佐竹さんによると、男性より女性が多い傾向は入所する時点からで、「夫をみとった後に入所する女性が多い」と、女性の長寿を理由に挙げる。
 「夫の介護は妻が自宅でできるという理由もあるでしょうね。この地域は夫婦二人暮らしで老老介護の世帯が多い。妻を自宅で介護できない夫が妻の入所を申し込むケースもあります」

<地域間格差訴え>
 佐竹さんは「地域には24時間態勢のヘルパー事業所はなく、訪問看護も往診体制も満足な状態ではない。介護住宅への改修費用の支援も不十分で、自宅で安心してケアできる環境にはありません」と続けた。
 病院・施設が充実した都市部と、乏しい郡部の地域間格差を訴える声は少なくない。
 調査に「9人」と回答した宮城県色麻町の「加美老人保健施設」は加美郡にある唯一の老健だ。
 施設長で医師の石橋清人さん(47)は「公立ということもあって入所段階から意識障害が重く、医療依存度の高い人を受け入れています」と説明する。
 加美郡に3カ所ある特養はいずれも入所待ちが常態化している。その影響で「老健施設の需要は増えている」という。
 入所の経済的な負担は大きい。「個室でなく4人部屋でも自己負担が月額9万~10万円となるため、在宅介護を選ぶ人もいます。入所させずショートステイでつないでいる家庭も多い」
 夕方、ベッドを半分起こして認知症の男性(87)が、食事の手助けを受けていた。スタッフがスプーンで食べ物を運ぶと、もぐもぐと口を動かすが、声を掛けても返事はない。かなり意識障害が進んでいる様子だった。
 施設で生活を続ける入所者たち。スタッフらは揺れるともしびの「風よけ」になっているようにも見えた。
 アルパイン川崎の佐竹さんが取材に答えた言葉がよみがえった。
 「かわいそうだという思いはありません。そう思うのは逆に失礼。どんな状態であっても寿命まで生きていくのが、その人らしい生活なんだと思います」

 

(2011/02/07)