俳句(4/14掲載)

【石母田星人 選】

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金星の光吸ひたる黄水仙  (東松島市新東名・板垣美樹)

【評】金星はいつも太陽のそばにいる。朝方見える時は明けの明星、夕方に見える時は宵の明星と呼ぶ。この句は朝の景。太陽を先導するように明るく昇ってきた金星。圧倒的な存在感だが、日の出とともに見えなくなる。中七「光吸ひたる」は黄水仙にかかるが、太陽光の中に消えてしまう金星の姿をも表している。

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裏木戸は銀河鉄道春の駅  (石巻市小船越・芳賀正利)

【評】家の裏木戸に立つとどこからか「銀河ステーション、銀河ステーション」と聞こえてきた。「どこまででもいける切符」を手に「ほんとのさいわい」を探しに乗り込んだ列車は春の駅を静かに滑りだした。この句では裏木戸が「天気輪の柱」。下五「春の駅」には「出発の春」の意味合いが込められている。

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旋回といふ別れあり鳥帰る  (石巻市相野谷・山崎正子)

【評】遠い北国に帰って行く鳥たち。これから挑む長旅には多くの試練が待ち受けることだろう。方向を定めるためか名残惜しいのか、大きな旋回を見せた。

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球春の聞こえて午後の春炬燵  (多賀城市八幡・佐藤久嘉)

【評】プロ野球東北楽天の本拠地開幕戦。途中雪が舞って中断になった。現地で防寒着をまとった応援もあれば、春炬燵に陣取った少々気楽な応援もある。

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借景の銀嶺はるか花吹雪  (石巻市南中里・中山文)

桜咲くここから始まる九年目  (石巻市吉野町・伊藤春夫)

山ざくら横穴古墳に降りしきる  (東松島市矢本・紺野透光)

田の神の遅きお出まし春夕べ  (石巻市大森・横山つよし)

畔塗られ田んぼ姿勢を正したる  (石巻市広渕・鹿野勝幸)

菜の花や黙す眼裏怒濤来る  (石巻市飯野・高橋芳子)

陽溜まりをわが物顔の蕗の薹  (石巻市北上町・佐藤嘉信)

彼岸入り人生少し前のめり  (東松島市矢本・雫石昭一)

ゆらゆらと空を揺らして春の水  (東松島市矢本・菅原れい子)

草藁をそっと押し上げ蓬摘む  (東松島市あおい・大江和子)

歳月や匂ひ深める春の宵  (石巻市門脇・佐々木一夫)

茎立ちの抱く土塊や活断層  (石巻市開北・星ゆき)

ひらひらとめまひのやうな蝶の昼  (石巻市駅前北通り・小野正雄)

若者の門出の朝春の海  (仙台市青葉区・狩野好子)

黄水仙八とせ帰らぬ母の家  (石巻市蛇田・石の森市朗)

うららかやカルボナーラの香りして  (東松島市野蒜ケ丘・山崎清美)