川柳(8/25掲載)

【水戸一志 選/評】

定年という制度は今ぐらついているが、ここから別の人生がスタートすることは確かだ。心の準備がないと、突然、真っ白な世界へ放り込まれる。空に無用の「昼の月」が、所在ない主(あるじ)の姿を巧みに表現して、泣ける。作者が女性ではなおさら。

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◎ 定年後台本のない昼の月  (東松島市矢本・菅原れい子)

  噛みしめるガムと九条八月忌  (多賀城市八幡・佐藤久嘉)

  墓じまいご先祖様もアパートへ(石巻市蛇田・菅野勇)

  暫くと交わす握手の皺だらけ  (富谷市明石台・伊藤啓強)

  募金箱仲良く一円重なって  (石巻市向陽町・佐藤功)

  甲子園160キロを見たかった  (石巻市あゆみ野・日野信吾)

  顔の砂あせと涙で蛇行して  (東松島市赤井・片岡シュウジー)

  脳トレは駄作の多作指を折る  (石巻市須江・市川つね子)