俳句(9/1掲載)

【石母田星人 選】

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切株は森のステージ星月夜  (石巻市小船越・芳賀正利)

【評】月がなく満天の星だけの夜を星月夜と呼ぶ。星だけで明るさを感じることはめったにない。だが、掲句のような森ならば満喫できるだろう。この切株のステージで何が始まるのか。柔軟でメルヘンがある。

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秋立つや被災の浜にアート咲く  (東松島市矢本・雫石昭一)

【評】現代アートの作家たちが独創的な作品を展示する「リボーンアート・フェスティバル2019」。今年も立秋を挟んで、夏から秋へと開催されている。季節のまたがるこの期間は、残暑と新涼が入り交じる時季。大気が澄んで物の輪郭がはっきりとしてくる。掲句はそんな空気感を「秋立つや」の調べに乗せる。また「咲く」の表現が巧み。浜の風景にアートが溶け込むさまをこの一語で表した。

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向日葵の群のなびくや地平線  (仙台市青葉区・狩野好子)

【評】広大な向日葵畑の景。「群のなびくや」には少し強い風の存在が見える。傾き伏す姿であっても、明るく鮮やかな黄は変わらずに元気を与えてくれる。

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朝採りの曲り胡瓜にある自在  (石巻市桃生町・西條弘子)

【評】平仮名の「し」と読めたり「つ」と読めたりする胡瓜。よくぞ自由奔放に育ってくれた。形よりも新鮮さとこのパリッとした歯切れのよさが命なのだ。

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捕鯨船雲の峰へと銛を撃つ  (石巻市蛇田・石の森市朗)

デッキより覗く満月手酌酒  (石巻市門脇・佐々木一夫)

闘魂の光のうねり佞武多かな  (石巻市開北・星ゆき)

晴れわたる大河を北へ祭舟  (多賀城市八幡・佐藤久嘉)

置き去りの団扇侘しき祭あと  (東松島市赤井・茄子川保弘)

樹木葬闇の底から火取虫  (東松島市矢本・紺野透光)

終戦日父の涙の行方問う  (石巻市南中里・中山文)

亡き叔母の逃げる悲惨さ終戦日  (東松島市あおい・大江和子)

陽射し欲し夏鶯は山に入る  (石巻市桃生町・佐々木以功子)

紫陽花の花に留まる雨雫  (石巻市北上町・佐藤嘉信)

主なき家の大木花木槿  (石巻市広渕・鹿野勝幸)

見覚えのある風呂敷の西瓜かな  (石巻市中里・川下光子)

風鈴や足踏みミシンゆるゆると  (東松島市新東名・板垣美樹)

八月や星を掴みて寝るテント  (石巻市吉野町・伊藤春夫)

月下美人たった一夜の艶姿  (東松島市矢本・菅原れい子)

軽鳧の子や水面に空と雲流れ  (富谷市明石台・伊藤啓強)