俳句(11/10掲載)

【石母田星人 選】

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台風が来るぞ二階へ玩具箱  (石巻市桃生町・西條弘子)

【評】このたびの大雨で被害を受けられた皆さまに心よりお見舞い申し上げます。さて、俳句で時事的な素材を表現することはとても難しい。事実説明だけに追われてしまうからだ。掲句も事実だけを述べているようだが、唐突に感じられる「玩具箱」の具体描写が生きて、家族の中の緊迫感を出すことに成功した。

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ラグビーに国中が沸き天高し  (石巻市桃生町・佐々木以功子)

【評】釜石でのフィジー対ウルグアイの一戦は胸を熱くしてくれた。大震災の津波で全壊した小中学校の跡地に建つ競技場には大漁旗が翻り、スタンドは白熱した世界戦に沸いた。「ラグビー」は冬の季語だが、掲句の季語は秋の「天高し」。試合当日の澄み渡った青空を表現したのだろう。残しておきたい時事句だ。

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秋風のすうすう通る埴輪の目  (石巻市小船越・三浦ときわ)

【評】埴輪は古墳の副葬品で権力者の功績を表す。その造形は稚拙だが無造作にくりぬかれた目が存在を示す。この穴をくぐり抜けられるのは秋風くらいだ。

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鬼灯が賢治のことば話しけり  (東松島市矢本・紺野透光)

【評】鬼灯からイメージを膨らませて、宮沢賢治が浮かんだ。自らの苦難と闘いながらも苦しむ人に手を差し伸べた賢治。彼のどんな言葉を聞いたのだろう。

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颱風圏に入り泥水に囲まるる  (石巻市相野谷・山崎正子)

幾たびも水に浸りて残る稲  (石巻市広渕・鹿野勝幸)

台風や手鎌で刈りし稲の束  (石巻市吉野町・伊藤春夫)

稀にみる豪雨に耐えし秋ざくら  (石巻市南中里・中山文)

せせらぎや芋煮の湯気と鳶の輪  (石巻市蛇田・石の森市朗)

雲上はいつも紺碧鳥渡る  (石巻市小船越・芳賀正利)

小春日のみやげに遠き海の音  (東松島市矢本・雫石昭一)

鬼灯の赤鮮やかに露店かな  (石巻市北上町・佐藤嘉信)

霜月の雨のさみしさ情なさ  (多賀城市八幡・佐藤久嘉)

幼子のどんと背の伸ぶ冬支度  (仙台市青葉区・狩野好子)

金木犀窓の高さを猫過る  (石巻市中里・川下光子)

教会の鐘の轟き冬隣  (東松島市新東名・板垣美樹)

伸びやかな字の失せメールそぞろ寒  (石巻市開北・星ゆき)

休み鍬ひらりと止まる赤とんぼ  (東松島市矢本・菅原れい子)

秋時雨筏にかもめ浦の宿  (石巻市門脇・佐々木一夫)

湖に化した田んぼに初白鳥  (石巻市桃生町・高橋冠)