俳句(8/18掲載)

【石母田星人 選】

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灯籠を抱き流るる大河かな  (石巻市南中里・中山文)

【評】東日本大震災の犠牲者を追悼する灯籠流し。名前やメッセージの書かれたたくさんの灯籠が川面に浮かべられた。しばらく岸辺でたたずんだ明かりは、それぞれの大切な人のもとへ流れて行った。この句、「抱き」が深い。この言葉のおかげで私たちの鎮魂と復興の祈りが大切に届けられるような気がしてくる。身近にあって四季折々さまざまな表情を見せてくれる大河・旧北上川。その広い懐に改めて感謝したい。

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日を弾く娘らのオールや川開  (石巻市蛇田・石の森市朗)

【評】石巻川開き祭りの孫兵衛船競漕(きょうそう)。旧北上川を舞台に今年も白熱したレースが繰り広げられた。応援にもいっそう熱が入ったことだろう。この句のように家族がオールを握っていればなおさらだ。

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捨て浮子に鴎が一羽夕立晴  (石巻市相野谷・山崎正子)

【評】川辺の景。雨に打たれていた鮮やかな浮子。夕立が去ると明るくなり気温が上昇。水と草木などの匂いが辺りを覆う。視覚と嗅覚を同時に働かせた句。

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向日葵や空突き抜けるチアリーダー  (東松島市新東名・板垣美樹)

【評】向日葵の比喩の句ではなく、熱戦が続く高校野球のスタンドの景と読んだ。「空突き抜ける」には猛暑の中でも軽やかに応援する姿が浮かんできた。

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青芦の丈の不揃ひ被災の地  (石巻市小船越・三浦ときわ)

棚経や若き僧侶の声高き  (東松島市矢本・雫石昭一)

横顔のままで別れし盆の客  (東松島市矢本・紺野透光)

本堂の開け放たれて夏休み  (石巻市広渕・鹿野勝幸)

炎天下漁師の肌は黒光り  (石巻市中里・須藤清雄)

白菖蒲天女のごとく雨吸ひて  (石巻市門脇・佐々木一夫)

梅雨空やICカードタッチする  (石巻市中里・川下光子)

補聴器に風鈴の音夕茜  (石巻市駅前北通り・津田調作)

流紋の干菓子の並ぶ夏の席  (仙台市青葉区・狩野好子)

夏燕ここが根城と道の駅  (石巻市中里・鈴木きえ)

暑き夜南に光るひとつ星  (石巻市三ツ股・浮津文好)

明易し言葉のシャワー浴びにけり  (東松島市野蒜ケ丘・山崎清美)

爪立ちてあめんぼう急ぐ恋の道  (東松島市矢本・菅原れい子)

「ダメ」言えばぎっちり泣く児柿青し  (石巻市開北・星ゆき)

初盆や遺品整理をご報告  (東松島市矢本・遠藤恵子)

紫陽花で雨宿りする雀二羽  (東松島市赤井・佐々木スヅ子)

川柳(8/18掲載)

【水戸一志 選/評】

◎来年夏の東京五輪が視野に入って、各競技のプレ五輪が盛り上がっている。日本がメダルを期待する競技、種目では、選手間の代表入り争いも佳境。スポーツ界のみならず、暑さ対策、渋滞対策、テロ対策なども加わり、尻に火が付いたように騒がしい。

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◎ もう五輪来ているようなスポーツ界  (石巻市蛇田・上村当志子)

  万霊に孫兵衛もいて川施餓鬼  (石巻市桃生町・北のから猫)

  熱帯夜星の数では寝られない  (東松島市赤井・川元とき江)

  長丁場耐えろ楽天浮き沈み  (石巻市大街道・岩出幹夫)

  物忘れ妻の名だけは忘れない  (東松島市矢本・奥田和衛)

  被災者はみんな語り部ドラマあり  (東松島市野蒜ケ丘・高橋すげ子)

  油蝉あぢぢぢぢぢとしか鳴かず  (東松島市矢本・川崎淑子)

  五坪とはこんなに広い草むしり  (石巻市桃生町・高橋冠)

 以前から気になっていたことがあります。「アメリカ合衆国」の「合衆」です。英語名は" United States of America "ですね。States は「州」という意味ですから United States は「合州」としなければ理屈に合わない。それを「合衆」と訳しているのはなぜか...。

 ところが、昨今のアメリカの動向を見ると、むしろ「合衆」つまり「人々の集合」とするのが妥当ではないかと思えてきたのです。

 2010年の連邦国勢調査によればアメリカ人の出自(出身国)は、イギリスやドイツなどのアングロサクソン系が約36%、他のヨーロッパ系が26%、メキシコなどのヒスパニック系が18%、アフリカ系が14%となっています。

 前回紹介した映画「ゴッドファーザー( The Godfather )」の主人公ビィトー・コルリオーニは、イタリアからの移民。J・F・ケネディの祖先がアイルランド出身というのは、よく知られています。そして、トランプ大統領はドイツ移民の家系です。

 また、おなじみのミュージカル「ウエストサイド・ストーリー」( West Side Story )は、ポーランド系アメリカ人のジェット団とプエルトリコ系のシャーク団との抗争が、トニーとマリアの悲劇を生む物語です。

 このように、アメリカはさまざまな背景を持つ人々が一つの国を構成しているのです。

 ただし、「人種のるつぼ」( Melting Pot )ではなく、それぞれが自分たちのアイデンティティを主張していることから、「人種のモザイク」( mosaic )あるいは「サラダボウル」( salad bowl )という表現が今は一般的です。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)

短歌(8/11掲載)

【佐藤 成晃 選】

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夏雲のぶ厚き壁に写し描(か)く椰子(やし)の浜辺と鮪(まぐろ)の海と  (石巻市駅前北通り・津田調作)

【評】分厚い夏雲をカンバスにして南洋の風景を描こうとしている作者。青壮年時代に働いた南洋での生活を、夏雲を背景にして思い出そうとしているのです。下の句の流れが何とも言いようがありません。「椰子の浜辺」からは漁労のあいまのひと時を、「鮪の海」からは厳しい船上での漁労が見える佳作です。命や生活が懸かっていたかつての人生の一コマ。今の自分を支えてくれる一コマなのかもしれません。

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時を刻む柱時計は半世紀を言わねど繋ぐ母から私へ  (東松島市赤井・佐々木スヅ子)

【評】50年間、時を刻んできた柱時計。長い振り子がゆったりと揺れて時刻を教えてくれた柱時計です。時を刻む音以外は何も語ってくれない時計ではありますが、この50年の間、母から私へと繋がれてきたものは少なくないのです。もしかしたらこの柱時計が仲立ちをしてくれたのかも知れません。見つめていると、柱時計は母のようでもあり、この家庭を見つめながら守ってきてくれたのかも知れません。家財に寄せる温かなまなざしが母へとつながる魅力的作品です。

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ジェネリック医薬品をばのぞみます来世逝きにも路銀のかかれば  (石巻市恵み野・木村譲)

【評】「ジェネリックス」とはいわば薬のレジェンド、名を成した先輩薬のこと。新開発の薬よりは「安く」患者に渡ります。高齢になると医者からもらう薬が増えてきます。1カ月間の薬代も馬鹿にはできません。あの世へ行くのにも金がかかるんだから、と小さな笑いのような気分をまぶしながら、つましい生活での節約を歌っています。誰もが言わずに思っていることを「77」の中に収めたわざに目を惹かれました。

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お土産の根付(ねつけ)の猿に嵌(は)めてあるレンズ覗けば観音御座す  (石巻市駅前北通り・庄司邦生)

海の日もいつしか遠くなりにつつ腕の潮味今も薄れず  (石巻市門脇・佐々木一夫)

傷つけし中指痛めば歌詠みの五指の心が中指へ向く  (石巻市開北・星ゆき)

娘(こ)の孫もバッパと我を呼んでいるひ孫もバッパと言いつつ膝に  (石巻市丸井戸・大友友子)

短歌友(うたとも)がまた遠くへと旅立ちぬわが歌ごころまで連れて逝きたり  (石巻市高木・鶴岡敏子)

貯水池の濃度濃くなる感じにて暑き夕べのセシウムの雨  (女川町・阿部重夫)

孫曾孫(まごひまご)三人並んで七夕の飾りを作る時間(とき)を忘れて  (石巻市中央・千葉とみ子)

仮設跡に取り残されし紫陽花が霧に濡れてる人待ち顔に  (石巻市蛇田・菅野勇)

真っ白にふっくら伸びし一夜茸(ひとよだけ)森の妖精一日(ひとひ)の命  (東松島市矢本・川崎淑子)

梅雨の午後さし行く傘のとりどりに映えて彩(いろ)増す長井のあやめ  (石巻市南中里・中山くに子)

北上の葦の河原の津波疵(きず)癒えてヨシズはあまたの家に  (多賀城市八幡・佐藤久嘉)

毎朝の食卓彩る野菜群畑の恵みに両の手合わす  (東松島市矢本・奥田和衛)

幼き日寺で踊った盆踊り住職様も笑顔で輪の中  (石巻市丸井戸・高橋栄子)

「経過良し」の医師の話を聞く二人笑い堪えて頷(うなず)きながら  (石巻市北村・中塩勝市)

友の土産花がら模様の匂い袋便りのようにほんのり香る  (石巻市須江・須藤壽子)

この辺り一面田んぼだったはずニョキニョキ復興住宅並ぶ  (石巻市向陽町・中沢みつゑ)

うつむいて時の流れを語るごと苧環(おだまき)の青こころ澄むまで  (石巻市蛇田・千葉冨士枝)

川柳(8/11掲載)

【水戸一志 選/評】

◎長い梅雨が明け青空が戻った。外に出た幼児が、水たまりでピチャピチャ遊んでいる。その時、水面に映った雲に気付いたのだろう。足元を見て「雲に乗った」とはしゃぐ様子を、童心に帰って受け止めている。一句に仕立てた喜びが伝わる。

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◎ 水たまり雲に乗ったと靴見る子  (石巻市蛇田・佐藤久子)

  新議員じゅうたん踏むも初志だけは  (石巻市三ツ股・浮津文好)

  入るのは勝手知ったる刑務官  (石巻市大街道・岩出幹夫)

  防潮堤砂無し海に夏も無し  (石巻市開北・安住和利)

  夏休み今朝も親子の一、二、三  (石巻市美園・澤谷昭子)

  勝ちか負け隣の国とオセロやり  (石巻市向陽町・佐藤功)

  入選用切り抜き鋏おおあくび  (東松島市赤井・片岡シュウジー)

  暑気払いチュウハイ重ね冷気待つ  (石巻市蛇田・鈴木醉蝶)

 ニューヨークの湾に浮かぶ「リバティ・アイランド」( Liberty Island )に立つ、「自由の女神」( Statue of Liberty = 自由の像 )は有名ですが、その近くの「エリス島」( Ellis Island )はご存じでしょうか?

 19世紀後半から60年余りの間、ヨーロッパからの移民はこの島からアメリカへ入国しました。アメリカ合衆国移民局が置かれていて、厳しい審査を受けなければならなかったのです。

 ここで思い出すのは、映画「ゴッドファーザー Part II」(アメリカ映画、1974年)の一場面。後にゴッドファーザーになる孤児ビィトーが、故郷シチリアから船でアメリカに渡る際に移民局で審査されます。

 入国管理官が彼に" What's your name, son? "と名前を尋ねますが、英語ができないヴィトーは黙ってしまう。そばにいた係官が彼の名札から「ヴィトー・アンドリーニ、コルレオーネ村より」と答え、彼は「ヴィトー・コルレオーネ」として登録されます。

 1200万~1700万もの人々がこの島を通過。アメリカ人の5人に2人が、エリス島を通ってきた移民を祖先に持つといわれるほどです。

 移民たちによって「希望の島」( Island of Hope )とも呼ばれたこの島は、まさに「自由の国」アメリカの入り口でした。ヨーロッパをはじめ、さまざまな国から望みを抱いてやってきた人々...。多種多様な背景を持つ移民によって今日の合衆国が成り立っているのです。

 ところが、これを否定するような動きが昨今のアメリカに起きています。

大津幸一さん(大津 イングリッシュ・スタジオ主宰)

俳句(8/4掲載)

【石母田星人 選】

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翡翠の掠めし水の華麗なり  (東松島市矢本・紺野透光)

【評】翡翠(かわせみ)は、青き宝石と呼ばれるほど美しい鳥。この句のポイントは「掠めし」という過去形の表現。この言葉で目の前に翡翠がいないことを語っている。素早い動きで急降下し水を掠めて行ったのだ。水面に飛び去った影が映っているはずもない。だが、残像という強い印象が作者の心を動かして、渓流の水の面を一段ときらびやかに感じさせたのだ。

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万緑の岩を流るる鳥の唄  (東松島市矢本・雫石昭一)

【評】万緑の中のこの岩は、何十万年もの間ここに鎮座している。その間、移り変わる天候や動・植物の動きなど地球上全ての息遣いを感じて過ごしている。きょうは珍しい鳥が自慢の唄を聴かせにやって来た。「岩を流るる」の表現が時空の広がりを感じさせる。

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終戦日あの時案山子何を見た  (石巻市吉野町・伊藤春夫)

【評】田んぼの案山子に語りかけているようだが、本当は困難な時代をくぐり抜けた少年の自分に問うている。74年の時が過ぎても下五の疑問が新鮮に響く。

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夏つばめ飛翔の似合ふ大河かな  (多賀城市八幡・佐藤久嘉)

【評】普通の燕は春から夏にかけて2回産卵する。今は二番子を育てる時季。餌を探すために飛び回る。その姿は大河の懐に飛び込んで行くように見える。

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青梅の転がる先に鳥の声  (石巻市中里・須藤清雄)

切通し抜け来る風と夏つばめ  (石巻市小船越・芳賀正利)

天を向く蓮華のまろし古刹かな  (仙台市青葉区・狩野好子)

補聴器を外して秋の海の底  (東松島市新東名・板垣美樹)

涙とも汗とも孫のユニホーム  (石巻市広渕・鹿野勝幸)

父母逝きて誰の娘や雨蛙  (石巻市開北・星ゆき)

亡き母にやわらかく炊く豆ご飯  (石巻市向陽町・佐藤真理子)

七月や商業捕鯨のくじら刺し  (石巻市蛇田・石の森市朗)

炎昼や溶接火花加はりぬ  (東松島市あおい・大江和子)

ひざまづき草引きはげむ婆の業  (石巻市中里・鈴木きえ)

ほつれ網雨に踏んばる女郎蜘蛛  (東松島市矢本・菅原れい子)

老鶯の谺し聞こゆ里の墓  (石巻市南中里・中山文)

戒名となりし友にも百合香る  (石巻市渡波町・小林照子)

五月雨の濁流うずまく大河かな  (石巻市三ツ股・浮津文好)

金魚すくい袖を濡らして帰り来る  (石巻市中里・鈴木登喜子)

子が燥ぐ夕立晴の水たまり  (石巻市のぞみ野・阿部佐代子)

川柳(8/4掲載)

【水戸一志 選/評】

◎反社会的勢力とお笑い芸人の関係に端を発した、芸能界のドタバタ劇が続いている。テレビカメラの前で、涙ながらに真相を語る芸人という構図は、いったい何だろう。ニッポンがお笑いに占領されそうな風潮に、そもそも病根があるのではないか。

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◎ お笑いが泣きの会見みっともない  (石巻市不動町・新沼勝夫)

  杖ついて清き一票薄化粧  (東松島市矢本・後藤桃子)

  だんごむし日課の散歩おこたらず  (石巻市桃生町・米谷智恵子)

  茄子漬けがあればご飯も酒もよし  (石巻市湊・小野寺徳寿)

  ミニトマト支えてもらい赤くなる  (石巻市桃生町・大友雄一郎)

  ドクダミのわれ関せずがうらやまし  (東松島市赤井・佐々木スヅ子)

  晩学のねじのゆるみを巻き直す  (東松島市矢本・菅原れい子)

  浴衣着てビールが進む夏祭り  (東松島市矢本・遠藤俊彦)

フェスティバル

 みちのくの夏は、人々が心一つに燃え上がる季節です。「まつり」は「祀る」の名詞形だと知りました。神に物を献上したり、祈りを捧げることを意味します。「祭り」の文字、そして「マツリ」という言葉の響きには、おごそかで、しっとり感があります。

 「サマー・フェスティバル」より「夏祭り」の方が趣がありますよね。今回は、この「フェスティバル」(festival)について探ってみます。

 festivus - このラテン語が、festival の源となった言葉です。意味は「楽しい」、つまり愉快なひととき「宴」が元々の語義なのです。

 「フェスティバル」と似た言葉がラテン系の言語に見られます。スペイン語の「フィエスタ」(fiesta)、イタリア語の「フェスタ」(festa)など。

 さらに「カーニバル」(carnival)。語源については諸説がありますが、carne vale(カールネ バーレ)「肉よ(carne)、さらば」という説がよく知られています。復活祭(イースター)の前にキリスト教徒は懺悔(ざんげ)をして肉を絶つ。その苦行の前に肉を食べ、お祭り騒ぎをする...「謝肉祭」と訳されているのは何となく分かります。

 どことなくわが国の風習に似ていませんか。夏祭りは普通お盆前に行なわれます。盂蘭盆(うらぼん)は祖先の霊に祈りを捧げ、自らを顧みる厳粛な期間。その前にお祭りで美味しいものを心ゆくまで...。

 夜店で焼き鳥を食べながら、人の営みというのは洋の東西を問わず同じなんだなぁと思ったしだいです。

大津幸一さん(大津イングリッシュ・スタジオ主宰)