マグロ類の資源が減少する中、太平洋島しょ国は「ツナ」に関心を寄せる日本以外の先進国にも厳しい要求を突き付けるようになった。
島しょ国15カ国・地域などでつくる太平洋漁業機構(FFA)と米国が結ぶ「米・FFA協定」。パプアニューギニア国家漁業総局(NFA)は4月、事務レベルで「ほかの島しょ国の利益のためにも入漁料改定を求めるべきだ」との見解をまとめ、シルベスター・ポカジャム総裁(53)に報告した。
米国は毎年、協定に基づき入漁料として約21億円(約3億円は漁業界負担)を支払う。FFAは、管理費を除く15%は加盟国で均等割りし、残りは各国水域内での漁獲量に応じて配分する。
島しょ国にとって小さな額ではなかったが、受け止め方は変わりつつある。
「ツナの価値が高まっているのに、入漁料が変わらないのはおかしい」とNFA水産計画部長のオーガスティン・モビハさん(48)。「2013年の協定更新で米国が入漁料引き上げに応じなければ、わが国はFFAを脱退する」と強硬な姿勢ものぞかせる。
* * *
「日本をはじめ外国のはえ縄船を入漁させないのは、初期投資が比較的小さく、国内でも育成可能だからだ。巻き網漁船とは話が違う」パプアニューギニアの首都・ポートモレスビー。港を見下ろす事務所で国家漁業総局(NFA)水産計画部長のオーガスティン・モビハさん(48)は力説した。
パプアニューギニアが昨年、排他的経済水域(EEZ)での操業を認めた巻き網船は、5年前に比べ約3割増の196隻。このうち国内資本の船は7隻にとどまる。国策に掲げるツナ缶産業振興のため、原料を供給する外国巻き網船の認可を増やしたことが主な要因だ。
「自力で育てられない漁業と加工業をセットで持ち込んでくれる国だけが、われわれのベストパートナー」とモビハさん。近年は認可船の大型化も進んでいる。
* * *
約5000平方メートルの工場建屋。約700人の従業員が11のラインに並び、手作業で魚の骨を身から外す。「最大のセールスポイントは漁獲から10日以内に製造される点。つまり『世界一新鮮なツナ缶』なんです」
4月27日、パプアニューギニア北部のマダン。フィリピンの多国籍企業「RD社」の現地法人が経営する国内最大のツナ缶工場で、品質管理の担当者は胸を張った。
日本人なら「新鮮な缶詰」という言葉に首をかしげるかもしれないが、その表情は真剣だ。
パプアニューギニアの排他的経済水域(EEZ)で捕れたキハダマグロとカツオを原料に、一日170トンを製造。生産量は進出当初の1997年から6倍近くに伸び、年間売り上げは約50億円に上る。
製品の85%は通商・経済支援協定(コトヌー協定)で関税がかからない欧州連合(EU)に輸出する。残りが国内向けで、65%のシェアを誇る。
連日フル操業を続けているが、同社は「ツナ缶の世界需要は天井知らず。市場規模は60億ドル(約6000億円)になる見込み。まだ需要に追いついていない」とみる。
* * *
日本の遠洋マグロはえ縄船は、捕ったマグロのえらと内臓を除去しただけで船上冷凍し、清水港(静岡市)などに運んで水揚げする。「なぜ、わざわざ魚を持ち帰るんだ。燃油代が無駄じゃないか」
4月27日、パプアニューギニア北部のマダンの海岸地域。フィリピンの多国籍企業「RD社」系漁業会社の専務ローランド・ランパレオさん(55)は、日本船の操業スタイルを「持ち帰り漁業」と皮肉った。
言葉の端々に、日本のマグロ漁業以上に現地の経済発展に貢献しているという自負がにじむ。
12隻の巻き網船を操ってパプアニューギニアの排他的経済水域(EEZ)でキハダマグロやカツオを捕獲、RD社のツナ缶工場に供給する。約600人の船員は現地雇用だ。地元に水産加工業を根付かせた功績も高く評価されている。
* * *
海岸地区に860ヘクタールを所有するフィリピンの多国籍企業「RD社」が用地を提供。世界各国から水産加工業を誘致し、集積する構想だ。
既にRD社と台湾の漁業会社フェアウェル社が、沿岸で捕れるキハダマグロやカツオを原料にしたツナ缶の製造工場を建設することが決まっている。
国家漁業総局(NFA)は当面の予算として約4000万円を確保、誘致活動を本格化させている。国は別に予算を組み、工場の建設費なども助成する方向で検討を進めているという。