(3)現地加工/「貢献」求める沿岸国
日本の遠洋マグロはえ縄船は、捕ったマグロのえらと内臓を除去しただけで船上冷凍し、清水港(静岡市)などに運んで水揚げする。「なぜ、わざわざ魚を持ち帰るんだ。燃油代が無駄じゃないか」
4月27日、パプアニューギニア北部のマダンの海岸地域。フィリピンの多国籍企業「RD社」系漁業会社の専務ローランド・ランパレオさん(55)は、日本船の操業スタイルを「持ち帰り漁業」と皮肉った。
言葉の端々に、日本のマグロ漁業以上に現地の経済発展に貢献しているという自負がにじむ。
12隻の巻き網船を操ってパプアニューギニアの排他的経済水域(EEZ)でキハダマグロやカツオを捕獲、RD社のツナ缶工場に供給する。約600人の船員は現地雇用だ。地元に水産加工業を根付かせた功績も高く評価されている。
日本船はEEZに入る際に入漁料を支払うだけで、沿岸国への貢献度は低いとみられがちだ。
「島しょ国は今、何よりも雇用を必要としている。どうあがいても、マグロ資源は100パーセント彼らのもの。沿岸国のニーズを無視して、日本のマグロ漁業は存続できない」
首都・ポートモレスビーでマグロ輸出ビジネスを手掛ける「三高物産」(那覇市)の社長、馬詰修さん(62)は指摘する。
同社は9年前、現地子会社「三高PNG」を設立した。ポートモレスビー港に水揚げされる生のメバチマグロやキハダを日本に空輸する。刺し身にならないマグロはステーキ向けに加工して米国のスーパーに卸す。
現地雇用は加工場の70人を含めて約100人。賃金は2週間で平均150キナ(約6000円)だ。都市部の一部地域では失業率が8割に達するという国で、貴重な雇用の場を創出している。
マグロをほぼ丸ごと日本まで運ぶことの無駄もあながち無視できない。
生鮮マグロの場合、仲卸業者がブロックなどに加工(切り分け)して商品にするのは、重量ベースで全体の約7割。小売り段階で、ここからさらに2割のロスが出る。
100キロのマグロでも店頭で刺し身として並ぶのは五十数キロ。小売り段階で鮮度を保持できる「コールドチェーン」の確保など課題は多いが、現地で加工した方が輸送面で合理的だ。
マグロ流通に詳しい東京海洋大教授の婁小波さん(46)は「沿岸国での水揚げ・加工、さらに漁業会社自体の現地化は、うまくいけば大幅なコスト削減につながる。日本漁業が『名』を捨てて生き残る上で選択肢になり得る」と指摘し、こう付け加える。
「ただ、それはマグロ漁業が完全に地域産業でなくなることを意味する。今回の国際減船でも、国による救済は関連産業を含めた地域経済への影響の大きさが根拠になっている」
地域と沿岸国のはざまで、生き残りを懸けた三陸のマグロ漁業が揺さぶられている。
写真:ステーキ向けのマグロ加工場で働く「三高PNG」の従業員=4月29日、パプアニューギニア・ポートモレスビー
