(4)野望/ツナ缶世界一目指す

maguro_no.8.jpg 約5000平方メートルの工場建屋。約700人の従業員が11のラインに並び、手作業で魚の骨を身から外す。
 「最大のセールスポイントは漁獲から10日以内に製造される点。つまり『世界一新鮮なツナ缶』なんです」
 4月27日、パプアニューギニア北部のマダン。フィリピンの多国籍企業「RD社」の現地法人が経営する国内最大のツナ缶工場で、品質管理の担当者は胸を張った。
 日本人なら「新鮮な缶詰」という言葉に首をかしげるかもしれないが、その表情は真剣だ。
 パプアニューギニアの排他的経済水域(EEZ)で捕れたキハダマグロとカツオを原料に、一日170トンを製造。生産量は進出当初の1997年から6倍近くに伸び、年間売り上げは約50億円に上る。
 製品の85%は通商・経済支援協定(コトヌー協定)で関税がかからない欧州連合(EU)に輸出する。残りが国内向けで、65%のシェアを誇る。
 連日フル操業を続けているが、同社は「ツナ缶の世界需要は天井知らず。市場規模は60億ドル(約6000億円)になる見込み。まだ需要に追いついていない」とみる。

 パプアニューギニアではマグロ類の大規模加工場の進出が相次ぐ。
 台湾、オランダとの3カ国合弁企業とフィリピンの水産大手は、それぞれブロック加工場とツナ缶工場を新設した。タイのツナ缶製造大手「タイ・ユニオン」も、日産350トン規模の缶詰工場建設を計画している。
 パプアニューギニアEEZでのカツオ・マグロ漁獲量は2007年、過去最大の約46万6000トンを記録した。このうち国内で加工されたのは約2割にすぎない。
 国家漁業総局(NFA)のシルベスター・ポカジャム総裁(53)は「ツナ缶生産でタイを追い抜き、世界一になることが国家目標。それが、わが国の資源を最も有効に活用する道だ」と強調する。

 国別のマグロ類缶詰生産量(2006年)はトップのタイが40万トン。スペイン22万トン、米国20万トン、エクアドル18万トンと続く。パプアニューギニアの現在の最大生産能力は8万トン程度と見込まれる。
 「タイ製のツナ缶原料の多くは、パプアニューギニアから持って行った魚。わが国が一義的に加工、処理すべき資源だ」とNFA水産計画部長のオーガスティン・モビハさん(48)。工場の進出ラッシュで今後、上位を脅かす存在になる可能性は大きい。
 水産庁幹部は「ツナ缶製造などの水産加工業の振興に力を入れれば入れるほど、島しょ国は国際交渉でもより多くの漁獲量を要求するようになる」と予測する。
 世界的な需要の増大を背景にした島しょ国の「ツナ缶熱」は、縮小するマグロ類資源の争奪戦を過熱させる要因になりかねない。

写真:RD社現地法人が経営するツナ缶工場。需要の増大を背景にフル操業が続く=4月27日、パプアニューギニア・マダン

 

(2009/05/28)