(5)劣勢/巻き網船、海外勢増隻

maguro_0529.jpg 「日本をはじめ外国のはえ縄船を入漁させないのは、初期投資が比較的小さく、国内でも育成可能だからだ。巻き網漁船とは話が違う」
 パプアニューギニアの首都・ポートモレスビー。港を見下ろす事務所で国家漁業総局(NFA)水産計画部長のオーガスティン・モビハさん(48)は力説した。
 パプアニューギニアが昨年、排他的経済水域(EEZ)での操業を認めた巻き網船は、5年前に比べ約3割増の196隻。このうち国内資本の船は7隻にとどまる。国策に掲げるツナ缶産業振興のため、原料を供給する外国巻き網船の認可を増やしたことが主な要因だ。
 「自力で育てられない漁業と加工業をセットで持ち込んでくれる国だけが、われわれのベストパートナー」とモビハさん。近年は認可船の大型化も進んでいる。

 カツオ・マグロ漁業者や漁具販売業者でつくる「パプアニューギニア漁業協会」会長代行のヘンリー・チャウさん(75)は「この調子で漁獲圧力が高まれば、島しょ国周辺の中西部太平洋が地中海、東大西洋の二の舞いになる」と懸念する。
 1990年代以降、日本向け蓄養マグロの生産が過熱し、スペインなどの大型巻き網船がクロマグロ(ホンマグロ)を乱獲。深刻な資源危機に陥ったことが念頭にある。
 パプアニューギニアなどの島しょ国周辺では、主にカツオを狙う巻き網船が小型のキハダマグロを一緒に漁獲することが問題視され始めている。
 NFAは「資源を脅かさないよう、外国船を含めて厳しくコントロールしている」と言うが、漁獲量の抑制には慎重だ。
 中西部太平洋のキハダ漁獲量は2005年までの20年間で、はえ縄漁が3200トン減ったのに対し、巻き網漁は15万3000トン増加した。

 3月30日、石巻港(石巻市)。太神漁業(静岡県焼津市)が新造した国内最大の巻き網船「第83福一丸」(760トン)が、パプアニューギニアなど島しょ国水域への初航海に向け、準備を進めていた。
 パプアニューギニアは日本のはえ縄船を拒み続ける一方で、巻き網漁業については06年、19年ぶりに漁業協定を締結し、入漁を復活させた。
 資源保護のため大型巻き網船の新造を認めなかった水産庁も従来の方針を緩和し、昨年は太神漁業と大手水産2社の計3隻に限り建造を許可した。増隻・大型化が進む海外の巻き網船団に対して、日本の競争力が低下しているためだ。
 06年に資源管理機関「中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)」に登録した巻き網船189隻のうち日本船は35隻。自国籍にバヌアツ籍、米国籍などを加え60隻以上を操る台湾勢に水をあけられている。
 水産総合研究センター(横浜市)は「中西部太平洋のキハダは過剰漁獲状態にないとは言い切れない」と分析する。日本の船団が苦戦を強いられている世界有数の豊かな漁場で、マグロ資源に黄信号がともっている。

写真:フィリピン系漁業会社が所有する巻き網船。巻き網船の増加と大型化が進み、マグロ資源への影響が懸念されている=4月27日、パプアニューギニア・マダン

(2009/05/29)