河北新報社

(2)東北公益文科大学長・黒田昌裕氏/太陽光や風力、集約が鍵

20120104.jpg ―大震災の被災者の生活再建は道半ばだ。
 「復旧・復興のスピードが遅く、状況は震災直後とほとんど変わっていない。一番の原因は先が見えないことだ。不安解消につながる明確なメッセージを、政治が打ち出せていない」

 ―福島第1原発事故も予断を許さない状況が続いている。
 「除染は長期化が予想され、廃炉となるとさらに長い年月が必要だ。東京電力はもちろん、政府、行政、科学者の役割が問われる。それぞれの知見を総動員し、事態の早期収束を図るべきだ」

 ―そもそも原発政策の何が問題だったのか。
<原発、安易な解>
 「1970年代の石油危機と近年の地球温暖化問題、さらにエネルギー自 給という観点から、最も安易に導かれた解が原発だった。国の根幹のエネルギー政策を決める政府の審議会でも、危険性に関する真摯(しんし)な議論があった とは言えない。反省を込めて言えば、アカデミズムも省庁も縦割りだった」

 ―河北新報社の提言では原発依存度の低減を図ろうと、地域密着の再生可能エネルギー戦略を打ち出した。
 「脱原発か卒原発かの議論とは別に、日本が今後、頼れるのは太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーしかない。コスト面の考慮は必要だが、原発の発電コストは安全対策や除染対策を含めれば今の数倍に膨れ上がる」

 ―東北は再生可能エネルギーの宝庫だ。
 「潜在力はかなりある。東北公益文科大に設置した250キロワットの太陽光発電の稼働率は12%。東北は日照時間が少ないと言われるが、全国平均並みだった」

 「再生可能エネルギーの課題は、資源が偏在し分散型にならざるを得ない点。安定的に集約し、産業用や家庭用に供給する社会システムが必要になる。スウェーデンのように、発電と送電を別会社が担当する発送電分離が不可欠だ」

 ―以前から多様なエネルギーの最適な組み合わせを提唱している。
<国家的議論を>
  「東西別々の周波数を一致させることは技術的に可能だし、新エネルギー中心のスマートグリッド(次世代送電網)を構築すれば、いずれ脱原発は可能になる。 エネルギーのインフラ構築は、東北復興の最重要課題になる。エネルギー供給システムをどうするか、復興庁などで国家戦略として議論していくべきだ」

 ―提言をどう生かすべきか。
  「日本は明治以来、中央集権型のシステムで運営されてきた。地方の自立が叫ばれるが、真に東北が自立するシナリオをどう描くかが重要で、提言には新しい東 北をつくるための提案が数多く含まれている。東北の豊かな自然や資源を有効に使い、地域自ら発想し、地域の人々が創り上げる新生東北。このために提言をぜ ひ役立ててほしい」

 <くろだ・まさひろ>1941年、金沢市生まれ。慶応大卒。慶大商学部長を経て2008年から現職。総合資源エネルギー調査会需給部会長も務めた。専門は経済学。

  <発送電分離>電力会社が一体的に経営している発電・送電部門を分け、別会社化すること。欧米では1990年代半ばに電力自由化法ができ、送電網の開放が 義務付けられた。新規事業者の参入で競争が活発化、料金引き下げにつながり、再生可能エネルギーの利用にも道が開けるとの期待がある一方、電力会社は「安 定供給ができなくなる」と主張。米カリフォルニアで2000年に起きた大停電は、発電会社の経営基盤や送電網が脆弱(ぜいじゃく)だったためとの指摘もあ る。

(2012/01/04)