河北新報社

東北の連帯

 自立的な復興を遂げるためには、東北域内で政治・経済が完結できる地域主権型の構造を追求することが大切になってくる。震災で日本海側のインフラが、太平洋側のバックアップに回り「東北は一つ」の機運が高まっているいまこそ、原発事故で危機に立たされている福島の復興を支え、東北全体の発展を見据えた大きな構想を描く覚悟が求められる。交通・物流インフラは被災地のみなら
ず、日本海側との連携を見据えた東北全体のネットワークを構築し、戦略的に代替性を確保していかなくてはならない。

(9)自立的復興へ東北再生共同体を創設/地元密着の復興庁実現

img08.jpg 自立的な復興を実現するためには、被災地起点で構想する広域行政組織「東北再生共同体」の創設が不可欠だ。震災を時代の転換点と捉えた場合、全く新しいガバナンスの仕組みを東北から提言することが、地方分権の推進にも寄与する。

 財源配分、事業の優先順位付けなど復興に向けた自治体間の利害調整を長期にわたって担い、被災3県の連携に加えて他の3県も含めた東北全体のグランドデザインを描いていくには、6県を包括した広域的な行政組織が必要である。

 今後、復興の象徴となるようなプロジェクトを推進する上でも広域調整の場が求められる。原発事故によって大きなダメージを受けた福島を東北全体で支援し続けるという視点からも検討されなければならない。

 東北再生共同体を構築するときに留意しなければならないのは、域内の一極集中を排除し、財産を市町村、とりわけ被災地に還元する仕組みをつくることだろう。

 具体的には、1980年代初頭にフランスが分権改革の一環として導入したレジオン(道州)が参考になる。州政府には、域内で大規模開発を実施する際の計画立案と資金調達という役割が与えられている。国内では、関西広域連合(2010年12月発足)が一つのモデルとなるだろう。

10.jpg 東北再生共同体を創設する場合、時限的に設置される復興庁を母体にして発展、継承させるという手法も考えられる。

 復興庁の組織は、盛岡、仙台、福島の3市に出先機関の復興局を配置。担当事務は復旧・復興に関する基本方針の企画立案と各省庁にまたがる復興施策の総合調整で、復興関連予算の要求と配分も復興庁に一元化される。設置期間は20年度末までの約10年間となる。

 設置法は本庁の場所を定めていないが、政府は東京とする方針で、東北への本庁設置は実現しそうにない。被災地のニーズと意思決定の場を近接させることが、効率的に復興を進めるために必要だったのではないか。

 復興局には、できる限り多くの権限を委譲し、軸足を東北に置くことが重要な意味を持つ。被災自治体と復興局の支所が一体化して現場主義を貫かなければ真の復興は困難と考える。

 地元密着の組織とするため、復興庁職員は東北の人々が主体となるような配慮も必要だ。東北各地の自治体職員を出向させたり、民間から募ったりすることが望ましい。

 復興庁には、単なる「政府の組織」から脱却し、被災地の再生について「国と地方の協議の場」という性格が与えられる。復興のデザインや財源の使い道を国と地方が対等な立場で議論できる仕組みを構築し、東北は新時代にふさわしいガバナンスを内外に提示しなければならない。

【写真】復興庁設置法案を可決した衆院本会議=2011年12月6日

(10)東北共同復興債による資金調達/投資・経営支援のための再生機構設

 長期にわたる復興を支えるためには、資金調達のレベルから新たな仕組みの構築が求められる。東北6県による「東北共同復興債」を発行し、津波被災地や原発事故被害が続く福島を東北全体で支える意思を表明する。世界中から調達した再生資金を、疲弊した被災地に行き渡らせる組織として「東北再生機構」の新設も必要だ。

 復興の歩みを確かなものとするためには、復興資金を自立的に確保する仕組みづくりが不可欠となる。震災が県境を超えて広域に被害を及ぼした点を加味すれば、被災地の経済復興に必要な資金は東北6県が共同で復興債を発行する手法が有効である。

 東北共同復興債による資金は復興の象徴的事業に充当したい。生活再建の見通しさえ立たない福島の復興、そして一からの地域づくり、産業づくりには、今後膨大な予算措置が見込まれる。

 津波で壊滅的被害を受けた漁港の再生を果たし、三陸水産業の足腰を強化していくためにも一層の財政支援が欠かせない。東北での自動車産業の拠点化など復興の起爆剤として期待されるプロジェクトや新産業の発展にも資金がいる。

 6県が財産権を有する広域行政組織として「東北再生共同体」が創設されれば、東北全体で支え合う仕組みが実質化される。共同体が復興債の格付けの裏付けになるため、国内外から広く資金を調達しやすくなる。こうした起債の仕組みを可能とするため、国には特別法の制定を強く求める。

 大規模な金融市場から遠距離にあり、地域産業の衰退、過疎化が進行していた被災地の場合、官民の財政・資本力を裏付けとして投資や経営支援をバックアップする組織がぜひ必要になる。歴史の転換点にふさわしい、東北の災後復興に特化した「東北再生機構」の設立を提言する。

 東北による自立的復興を追究する観点から域内自治体や域外も含めた民間に資本参加を求め、単なる資金提供から一歩踏み出すことで、真に東北の人々のための機関を目指すことが望ましい。

 被災地では民間の金融機関が相次いで公的資金の注入を決断するなど地域経済の再生を支援する態勢が急ピッチで整いつつある。しかし、こうした資金の投資先である被災企業の多くが再生ノウハウを持っていないのが現状だ。貸し手と借り手のミスマッチを解消するために東北再生機構は、投資機能に加え、起業の提案や市場の開拓など踏み込んだ経営支援にも積極的に関与する。

 自治体や事業者とともに事業計画を策定し、必要な資金を市場から調達する役割を東北再生共同体と東北再生機構が担う仕組みが実現すれば、財政システムの一国多制度化に一石を投じ、地方分権の推進に弾みがつく。

(11)交通・物流ネットワークの強化/東北一体のバックアップ体制急げ

11.jpg 太平洋側と日本海側の連携の重要性を念頭に、東北全域で基幹となるインフラの一体的な整備を求める。災害時に住民の避難路や救援物資の供給ルートとなる「命の道」のネットワーク化を急ぎ、地域間による代替機能を確保して安全安心を担保する。

 東日本大震災では、三陸縦貫自動車道など三陸沿岸道路が、津波で寸断された国道45号の代替機能を果たした。住民避難や救急搬送、物資輸送などあらゆる場面で「命の道」の役割を担った。

 災害に強い高速道は復興を先導するプロジェクトになる。まずは三陸道の未整備区間解消、全線4車線化など高規格化を急ぐべきだ。

 日本海側の国道7号に並行する日本海沿岸東北自動車道も、早期整備を進めたい。仙台東部道路が津波からの堤防の役割を担ったように、高規格道路は高盛り土構造を基本としたい。

 今回の震災では日本海側の各自治体がいち早く支援に乗りだし、心強い援軍となった。東北横断自動車道釜石秋田線、東北中央自動車道、宮古盛岡横断道など、太平洋側と日本海側・内陸部をつなぐ横軸の整備を促進する必要がある。

 津波被害を受けた鉄道の全線復旧は復興の要だ。現行ルートの変更も含め、まちづくりと一体で整備を急ぎたい。JR仙石線、仙山線などの都市間鉄道は防災・危機管理対策を強化しつつ、将来的には複線・高速化も図られなければならない。

 交通網に併せて高度な物流システムの構築を急ぐべきだ。災害ロジスティクス(物資供給)整備は東北全域に加え、新潟や北海道、北関東も視野に入れた広域的な対応が求められる。

 各空港は、空港民営化や航空自由化(オープンスカイ)の世界的な流れを受け、国際競争に対処できる施設の整備や運営手法が問われる。

 3000メートル滑走路を備える仙台空港は、国際定期便のさらなる就航を働き掛けて真の国際化を目指すべきだ。同空港は津波被害を受けた唯一の空港であり、全国の空港の津波・防災対策をリードすることが期待される。臨空地域の活性化のためにも、仙台空港の機能強化は優先して進めなければならない。

 各港湾は、国際ハブ港の中国・アジア新興国シフトという国際情勢をにらみ、復旧にとどまらない積極的な整備が必要だ。

 宮城県は仙台塩釜、石巻、松島の3港湾の統合を打ち出し、投資と復興の効率化や迅速化を図る方針を示している。

 八戸、釜石、小名浜など太平洋側、秋田、酒田など日本海側の各港湾も、県境を超えたネットワーク化に本格的に取り組むべきだ。災害時の代替機能はもちろん、一体となって東北経済の復興と発展を下支えする役割が求められる。

【写真】宮城県が民営化の方針を打ち出した仙台空港。「復興のエンジン」としての期待がかかる=2011年9月

(2012/01/01)