河北新報社

(2)カウンターパート/「次」に備え、相互関係築け

saisei0325_01.jpg<河村流の覚悟>
 東日本大震災では、自治体間で支援相手を固定するカウンターパートを組み、継続して被災地を支える「自治体相互支援(ペアリング)」の有効性が実証された。河北新報社の提言「新たな『共助』の仕組みづくり」では、各自治体はこの仕組みを制度化し、被災地支援力を高めて、災害への備えとしなければならないと訴える。

 「派遣した職員は、そのまま陸前高田市に移住しても構わない。定年まで復興に従事してちょ」。昨年4月、河村たかし名古屋市長は陸前高田市に特化した支援策を発表した。独特の言い回しの中に大都市の責任と覚悟がにじんでいた。
 震災で陸前高田市は、職員295人のうち68人が犠牲になった。司令塔となるべき市庁舎は津波で流失。行政機能を完全に喪失していた。
 「陸前高田市に絞って支援を集中投下しよう」。先遣隊の報告を受け、名古屋市による全国初の試みが始まる。「丸ごと支援」と名付けられた。
 現在、陸前高田市に派遣されている自治体職員52人のうち19人を名古屋市職員が占める。延べ人数では保健福祉、被災調査、インフラ復旧、学校教育など23分野、150人を超える。
 9人のうち6人が亡くなった保健師の穴を埋め被災者ケアに当たったのも、被災住民に復興計画を説明したのも、名古屋市職員だった。

<縦割り"打破">
 従来の被災地支援は、自治体からの職員派遣を国が調整し、各省庁が担当分野に応じて決定するのが基本手順。非常時でも縦割り行政と中央集権がまかり通っていた。
 名古屋市はこうしたセオリーを覆し、国の指示がないまま自発的に「顔の見える支援」先を探し出した。被災地との連絡調整に当たる名古屋市総合調整室の高橋正人さん(34)は「今や、名古屋市イコール陸前高田市」と言い切り、身も心も陸前高田市職員になり切っていると強調する。
 丸ごと支援の背景には、東海・東南海・南海3連動地震の被害が予想される名古屋市にとって、支援することで若手職員が災害復興のノウハウを学ぶという側面もある。
 ここで名古屋市が重視したのは説明責任だ。支援費用は既に4億5000万円に達する。財政力のある政令指定都市とはいえ「税金をつぎ込むには、市民の理解が大前提」(市総合調整室)となる。
 名古屋市民は、どう受け止めているのだろうか。市は昨年、丸ごと支援の賛否を問うネット・モニターアンケートを実施した。結果は「賛成」94.0%。これが民意だった。
 2月に名古屋市であった市民報告会では、修学旅行に行けなかった陸前高田市の中学生を名古屋市に招待する事業や、被災企業を支える産業支援プロジェクトが紹介された。両市の交流は、震災復興の域を超え、お互いに顔が見える持続可能な結び付きとなっている。
 
<支援先を固定>
saisei0325_02.jpg 関西広域連合は加盟7府県が、大規模に支援を続ける。カウンターパート方式で府県ごとに受け持ちの被災県を固定。震災から1年間で延べ6万2600人の職員を被災地に送り込んだ。
 井戸敏三兵庫県知事は「東海、東南海、南海、首都直下と次なる巨大地震が迫っている」と、近未来を見据え「日本全体で遠隔地域と相互協定が不可欠だ」と訴える。
 関西広域連合は昨年11月、九州知事会と災害時相互応援協定を締結した。井戸知事は「やがて東北にも広域的バックアップをお願いする時がやってくる」と語った。
 次の巨大災害に備え、東北もカウンターパート方式による組織的支援体制の構築を急がなくてはならない。

写真:名古屋市被災地域支援本部の現地事務所。旅館と飲食店を借り上げ、常駐職員が連絡調整の任に就く=7日、一関市大東町摺沢

(2012/03/26)