河北新報社

(7)調整役への期待/ボランティア、被災者と結ぶ

0401_01.jpg<体系的に学ぶ>
 「僕たちがお手伝いしましょうか?」
 巨大津波の爪痕が生々しい昨年3月下旬、半壊家屋で途方に暮れる陸前高田市のお年寄りに、日本国際ワークキャンプセンター(NICE)事務局長の上田英司さん(30)が優しく声を掛けた。
 NICEは、被災者と生活を共にする合宿型ボランティアを展開するNPO法人だ。震災の約10日後に現地入りした上田さんは、被災地を歩いて住民のニーズに耳を傾け、災害ボランティアへ橋渡しをするコーディネーター(調整役)として活躍した。

 事務所のある東京と陸前高田市米崎地区の廃寺に構えた現地拠点との間を何度も往復した。インターネットでボランティアの募集を呼び掛けたり、地元の災害ボランティアセンターに運営スタッフを派遣したりした。7月以降は主に東京で財団や企業からの寄付金集めに奔走している。
 NPO法人の日本ボランティアコーディネーター協会(東京)が独自に行う検定に「ボランティアコーディネーション力検定」がある。上田さんは2年前に3級に合格。調整役としての活動歴10年になるベテランだが「検定でボランティアの意義や役割を初めて体系的に学んだ」と言う。

<対等な立場で>
 例えば活動前に調整役が行うオリエンテーションには、ボランティアの緊張を解き、一体感を醸成する狙いがある。しかし経験豊富なボランティアほど、オリエンテーションをおろそかにする傾向がみられると言う。
 「多様な人が集うボランティアの現場はマニュアル社会。ただマニュアルにあるからやるのではなく、調整役がその意味を説明できれば、意欲を一層引き出せる」と上田さんは考える。
 協会は毎年、全国の社会福祉協議会やNPOのメンバーを集めて研究集会を開いてきた。検定は2009年から行い、これまで入門編の3級を1099人、応用編の2級は143人がパスした。
 ことしはより専門性の高い1級検定を実施する予定だ。さらに協会の認定コーディネーターを養成する計画もある。
 原点は1995年の阪神大震災にあった。当時、神戸市で調整役として活動した経験を持つ協会の後藤麻理子事務局長は「ボランティア一人一人の個性の違いを認めながら、対等な立場で調整できる人材を育てたい」と検定の意義を説明する。
 阪神大震災は「災害ボランティア元年」とされる一方、ボランティアと被災者をつなぐ調整役の活動や認知度が不十分だったとされる。
 阪神の教訓はその後、都道府県と市町村社協による災害ボランティアセンターの開設につながった。しかし東日本大震災は社協の想定を超える被害規模だったため、人手不足に陥った現場は混乱を避けられず、あらためて調整役の重要性がクローズアップされた。

0401_02.jpg<82人を初認定>
 東北福祉大(仙台市)工学院大(東京)神戸学院大(神戸市)が昨年3月に設立した「社会貢献学会」は、ボランティアなどの現場でリーダーシップを発揮できる人材を「社会貢献活動支援士」として認定している。
 学会が認定する社会貢献活動3年以上の経験者が対象で、ことし2月に第1回の試験を行い、NPO関係者や自治会役員ら82人を認定した。
 東北福祉大職員で、同大ボランティア支援室の鶉橋(うずらはし)徹コーディネーターは「災害時のボランティアコーディネートは情報の質と量がものをいう。日常の業務や生活の中で少しずつ人脈を広げ、いざという時に備えたい」と話す。
 首都直下地震や東海・東南海・南海3連動地震などに備え、河北新報社の提言は「国は、調整役を確保する制度設計と財政的な裏付けを急ぎ、その養成と能力向上に努めるべきだ」と求めている。

写真:日本ボランティアコーディネーター協会が主催した研究集会。全国の社協やNPOなどから300人余が参加し、調整役の活動の意義を学んだ=3月3日、東京・池袋の立教大

(2012/04/02)