河北新報社

(8完)大学ネットワーク/学生が集まり、無限の力に

0402_01.jpg<中継地の役割>
 125年の歴史を持つ東北学院大(仙台市)に昨年、新たな記念日が二つ増えた。
 一つは3月29日。学内に災害ボランティアステーションを開設した。全国から派遣された学生ボランティアに空き教室を宿泊場所として提供し、被災地とつなぐ中継基地の役割を果たす。
 東北学院大4年で、災害ボランティアステーション学生代表の菊地崇史さん(22)は「『東北を助けたい』という一心で駆け付けてくれた学生から大きな刺激を受けた。全国の学生が力を合わせればとてつもなく大きな力になる」と話す。学生ボランティアの「無限の力」を信じている。

 もう一つの記念日は5月27日。ステーションを母体として、全国でも珍しい「大学間連携災害ボランティアネットワーク」が結成された。
 「全国の大学が持てる力を持ち寄り、単独の大学では不可能なボランティア活動を実現したい」
 ステーションの佐々木俊三所長(副学長、教養学部教授)はこの日、関西学院大などボランティアに熱心な大学関係者を前に意欲を語った。10大学でスタートした輪はいま、山形から九州まで16大学に広がる。

<教育にも効果>
 震災後、大勢の学生ボランティアが被災地に入った。しかし、メディアが集中的に取り上げた被災地に複数の大学が入り込む一方、交通の便が悪い小さな浜は手薄なままだった。
 佐々木所長は「被災地の大学として状況を整理しつつ情報を集め、適正なボランティアの割り振りを行う責務が生まれた」と振り返る。
 佐々木所長や菊地さんらが中心となって、主な支援先を気仙沼市唐桑に定めた。夏休みには集中プロジェクト「夏ボラ・気仙沼プロジェクト」を展開した。連携する大学の学生が東北学院大を拠点に連日、被災地に送り込まれた。
 菊地さんは7月下旬から9月下旬まで1日平均24人、延べ1500人の派遣に携わり、被災地入りした学生を支えた。自らも宮城県七ケ浜町での足湯ボランティアや山元町で子どもの遊び相手となるボランティアなど、数多くのプロジェクトに参加している。
 佐々木所長は「遠足気分が抜けない学生が被災地入りした途端、無口になる。被災者の『痛み』に触れた後は表情が一変する」と、ボランティアの教育的効果に着目する。
 「なんとか中継基地になってほしい」。震災直後、同じミッション系の大学が東北学院大を相次いで訪れ、首都圏や関西圏から送り込む学生ボランティアの「受け皿」づくりを要請してきた。これがステーション設立のきっかけとなった。
 他大学に背中を押される格好だったが、東北学院大は「ボランティアは学生の教育に非常に大きな効果があった」と総括し、本年度以降もステーションを継続し、被災地支援と中継基地の役割を果たす考えだ。

0402_02.jpg<役立つ土地勘>
 兵庫県立大の馬場美智子准教授(防災まちづくり)は「被災地は高齢者が多く、孫のような学生は歓迎される。土地勘と同窓生ネットワークがある地域の大学間連携は将来、別の地域で起こりうる広域災害に役立つはずだ」と指摘する。
 河北新報社は提言で「学生ボランティアは若者が飛び込みやすく、教育的観点からの意義も大きい」と強調。震災で得たノウハウや課題を整理しながら「大学間ネットワークで情報共有を進め、将来の災害発生に備える手だてが求められる」と訴えている。(東北再生取材班)=第4部は4月下旬に掲載

写真:足湯ボランティアに励む菊地さん(右)。「1人より2人、1大学より2大学が連携すれば大きな力になる」と言う=3月25日、七ケ浜町

(2012/04/02)