河北新報社

(2)「東北の自治医大」/臨床を重視、地元定着図る

0426_01.jpg<構想委を設置>
 東日本大震災によって沿岸部の医療機関は壊滅的な被害を受けた。地域医療の最前線を担う自治体病院の多くが機能不全に陥り、勤務医の離職が相次いだ病院もある。
 河北新報社の提言「地域の医療を担う人材育成」は、仙台に臨床重視の医学部を新設し、慢性的に不足している病院勤務医の養成を図り、医師の地域偏在や診療科偏在の解消を訴えている。
 仙台厚生病院を運営する財団法人厚生会(仙台市青葉区、目黒泰一郎理事長)が医学部新設構想を打ち出したのは2011年1月。震災の2カ月前だった。
 「震災で医師の供給がさらに大変になった。地域医療重視の新たな医学部を誕生させることは、東北の復興と再生にとって不可欠だ」。目黒氏の信念は「3.11」を経てより強固になった。
 6月には連携先の東北福祉大(青葉区、萩野浩基学長)などと合同で「宮城に新設を目指す医学部の基本構想検討委員会」(委員長、久道茂・元東北大医学部長)を設置。「臨床重視」「地域貢献重視」を2本柱とする基本方針や教育目標を定めた。
 東北福祉大の健康科学部では、看護師や作業療法士らを養成。既に約20人の医師が教員として勤めている。「経営は安定し大学施設も余裕があり、ベストパートナーだ」と目黒氏は見る。

<学費貸与を検討>
 仙台市内には東北大医学部(12年度入学定員125人)があるが、研究と臨床を一手に引き受け、負担が集中していた。
 同大医学部出身でもある目黒氏は「東北大のモットーは研究第一主義。仙台に臨床第一を掲げる医学部ができれば、東北大は研究と高度医療に専念できる」と強調する。
 単に医学部をつくっても、医師が地元に残らなくては問題は解決しない。対策として、自治医大(栃木県)のように一定期間、地域の医療に従事してもらうための制度を導入していく。
 医師の勤務先を強制することができない中で、地域医療に導く仕掛けが奨学金制度だ。構想では、新医学部の定員を100人とした場合、30人分の学費を大学が全額貸与。卒業後、医師を受け入れた東北の病院が返還金を肩代わりすることで医師の地元定着を図る。
 制度が軌道に乗るまでに必要な約87億円の原資は仙台厚生病院が用意するという。残る70人も協力病院に送り込み、被災地の医師不足に役立てたい考えだ。
 目黒氏は「地域医療と同時に医師の心と健康を大まじめに考えた大学にすることで東北定着を図りたい。トランク一つで過疎地に行かされた残酷物語を終わりにしたい」と語る。国が医学部新設を認めた場合、14年4月の開学を視野に入れる。

0426_02.jpg<被災地も要請>
 東北に医学部新設を求める声は被災地からも相次いでいる。最大の被災地となった石巻市の亀山紘市長は2月下旬、平野達男復興相を訪ね、岩手、宮城、福島3県の16市長連名による文書で新設を要請した。
 医療崩壊が進んでいた石巻医療圏(石巻市、東松島市、女川町)では震災でさらに事態が深刻化。廃止や休止に追い込まれた病院・診療所は、宮城県内全体の34%を占め、石巻市立病院(206床)など30カ所に上った。
 亀山市長は「石巻の医療過疎は急速に進んだ。いま手を打たなければ10~20年後に手遅れになる」と危機感を募らせる。
 医師でもある立谷秀清相馬市長も危機感を共有する。立谷市長は「震災で『医療はライフライン』ということをあらためて思い知らされた。医療不在の地に人は住めず、東北復興も成し得ない」と強調している。


写真:医学部新設構想を打ち上げた仙台厚生病院。地域医療充実への期待が高まる=仙台市青葉区

(2012/04/26)