河北新報社

(7)介護福祉との連携/包括ケア推進、理想のまちに

0502_01.jpg<米寿と思えぬ>
 被災地の医療再生のため、河北新報社の提言は人材育成とともに地域包括ケア体制の確立や医療資源の有効活用などを重視する。
 保健医療と介護福祉、生活支援サービスを一体的に提供する地域包括ケアは、少子高齢化が進む全国、そして世界に開かれた地域医療モデルとなり、医療・福祉ビジネスの展開も期待できる。
 「とても米寿とは思えない」。元気に腕立て伏せをする北九州市門司区の吉田キミノさん(88)を見守りながら、ヘルパーの肥田木妙子さん(69)が目を細める。
 腰を痛め、外出もできなかった吉田さんは2年前、市の地域包括ケア推進モデル事業に参加した。介護保険の適用外だった軽い運動に自宅で取り組んだ結果、近くのスーパーに1人で買い物に行けるまでになった。
 小倉リハビリテーション病院(北九州市小倉北区)は10年前から地域包括ケアを先取りし、医療、介護、福祉の枠を超えて協力関係を構築してきた。
 高齢患者が退院する前のサービス担当者会議では、主治医と看護師、ヘルパー、ケアマネジャー、ソーシャルワーカーが集まり、ケアの在り方を検討した上で、送り出す。
 介護事業者「北九州福祉サービス」の緒方有為子さん(72)は「介護保険法は予防や重度化防止もうたっているが、現実には力を入れてこなかった。地域包括ケアの推進で介護予防も効果的になる」と期待する。
 北九州市は、拠点となる地域包括支援センターを市内24カ所に整備し、24時間対応の在宅療養支援診療所の整備も進める。
 市いのちをつなぐネットワーク推進課長の清田啓子さん(49)は「地域包括ケアの本格導入により、高齢者にかかわる医療、介護、福祉関係者の顔の見える関係づくりが進んだ。災害弱者でもある高齢者にとってセーフティーネット強化にもなる」と強調する。

<ゼロから構築>
 国は「復興の基本方針」に、地域包括ケア体制の整備支援を盛り込んでいるが、被災地では「介護事業を震災前に戻すことで手いっぱい」(石巻市)と、体制づくりは進んでいないのが実情だ。
 「高齢者施設が津波で流された。これからお年寄りをどうケアすればいいのか」。さわやか福祉財団(東京)の堀田力理事長には、被災自治体の首長からこんな相談が寄せられているという。
 堀田理事長は「生活しやすいコミュニティーをつくり、中核に看護・食事ステーションを整備すれば、高齢者が自宅で暮らしていける。地域包括ケアが整った理想のまちづくりは、ゼロから出発する被災地だからこそ可能だ」とエールを送る。

0502_02.jpg<拠点から派遣>
 拠点病院が磁石のように医師を引きつける魅力ある病院に生まれ変わることも求められている。医師や看護師ら地域の限られた医療資源を有効活用するためのキーワードが「マグネットホスピタル」だ。
 マグネットホスピタルは、東北大大学院医学系研究科の定義では、ほとんどの診療科を網羅し、若い医師の教育環境が整った500床前後の病院を指す。
 石巻赤十字病院(452床)の石井正医師(医療社会事業部長)は「医師は技術向上への意欲が強い。専門医の資格が取れない病院には若手が定着しにくい」と語り、勤務環境とともに教育環境の充実を訴える。
 被災地では震災前、自治体の財政事情により200~300床規模の病院が点在しているのが実態だった。拠点病院が魅力を高め、十分な医師数を確保して周辺の中小病院にも医師を派遣できるようになれば、被災地の医師不足解消に有効な手だてとなる。

写真:元気に腕立て伏せをする吉田さん(右)。地域包括ケアのモデル事業に参加し、介護予防に大きな効果があったという=4月13日、北九州市門司区

(2012/05/02)