河北新報社

(1)復興庁は「復旧庁」/地域発展「10年遅れる」/被災地と足並み乱れ

0603A01.jpg<数のマジック>
 「これでは復興庁ではなく査定庁だ」(村井嘉浩宮城県知事)。被災自治体の復興事業を支援する復興交付金の第1回配分(総額約2500億円)では、交付率(申請額に対する交付額の割合)が57%にとどまった宮城をはじめ、被災自治体から批判が相次いでいた。
 それが5月の第2回配分では一転、東北4県54市町村に計2523億7000万円の配分が決まった。宮城県全体の交付率は179%。村井知事の表情も思わずほころんだ。
 大盤振る舞いの実態は、自治体が要求を大幅に絞り込んだ上で、2013年度実施予定の防災集団移転促進事業を前倒しして認めた数字のマジックにすぎない。被災地の自治体が復興に欠かせない事業ではなく、予算が付きやすい事業を優先したのだとしたら...。

<収まらぬ怒り>
 東日本大震災の津波で破壊された石巻市の「石ノ森萬画館」。「仮面ライダー」「サイボーグ009」などのヒーローを数多く生んだ宮城県出身の漫画家故石ノ森章太郎さんの作品世界を表現するテーマパークは、01年に開館し、全国から年間20万人が訪れる市内随一の観光名所だった。
 石巻市は「萬画館の早期再開こそが、壊滅した観光産業を立て直す最短ルート」(商工観光課)と判断した。施設展示物リニューアルのための2億円に復興交付金を活用しようとしたが、復興庁は「不要不急の事業」と突っぱねた。
 「産業振興、にぎわい再生につながるから申請した。萬画館再開は市民にとって復興のシンボルとなる。何度説明しても、現場感覚のない人たちには地域固有の事情を分かってもらえなかった」。亀山紘石巻市長の怒りは収まらない。
 復興庁は「復興財源は増税で賄われる。納税者が納得できる使い道でなければならない」と、国民の総意であるかのように説明する。「現場感覚の欠如」との批判には「大きな復興を果たすには、どうしても東京からの目線が必要」と理解を求めた。
 結局、石巻市は復興交付金の活用を断念し、自主財源で萬画館の再開を目指す道を選んだ。
 東京に本庁を置く復興庁は、出先機関として岩手、宮城、福島の3県に、それぞれ復興局と沿岸部2カ所の支所を配置。八戸、水戸の両市にも事務所を構え、被災地全域をカバーする。被災自治体の要望を受け、ワンストップで対応することが期待されている。

0603A01zu.jpg<出だしで失敗>
 二人三脚で歩むべき自治体と復興局の足並みは、出だしからもつれた。
 年間約360万人の観光客が訪れる宮城県松島町では、第1回配分で津波避難広場の整備は認められたが、広場と海岸を結ぶ約100メートルの避難路には、復興交付金が下りなかった。「避難ルートのない広場の整備」に町は戸惑う。
 町の担当者は、東京に赴いて直接復興庁を説得した。復興局の職員も同行してくれたが、本庁の担当者を前に援護射撃は一言もなかったという。松島町は自主的に第2回配分の申請リストから避難路整備を消した。
 増田寛也元総務相(前岩手県知事)は、2月に発足したばかりの復興庁を「震災から11カ月、役割を終えて解散してもいい時期にようやく立ち上がった」と評する。これから10年を要して復興に取り組もうという組織の本質を「復旧庁」と見抜いて放った皮肉だった。
 10年掛かりで取り組んだ結果が単なる現状復旧で終わるのでは、地域の発展が丸10年分遅れるのに等しい。繰り返し発信される被災地からの訴えを受け止める組織は、どうあるべきなのか。

写真:旧北上川の中州に立つ石ノ森萬画館。「復興のシンボルに」と考える市民は少なくない=石巻市

(2012/06/04)