河北新報社

(3)関西の同床異夢/大義実現へ、機動力を結集

0605A03.jpg<知事は温度差>
 東北が真の自立的復興を遂げるには、東北の域内で政治・経済が完結できる地域主権の実現が不可欠だ。河北新報社は提言で、6県を包括した広域行政組織「東北再生共同体」の創設を訴える。
 各知事は拙速な道州制論議を懸念し、広域組織の設立には冷ややかだ。河北新報社がことし1月に実施した6県知事アンケートで、吉村美栄子山形県知事は「初めから組織を前提にせず、連携の在り方を幅広く検討すべきだ」と述べた。

 「連携の実績を重ねることが東北の発展につながる」(三村申吾青森県知事)と、広域連携の大切さは認めながらも組織設立となると時期尚早とみる意見が大勢を占める。佐藤雄平福島県知事は「本県は震災や原子力災害からの再生が優先」と言い切り、復興から広域組織の視点を意図的に外しているかのようだ。
 広域組織に前向きな村井嘉浩宮城県知事は昨年6月の県市町村長会議で、カウンターパート方式で被災地を支援した関西広域連合に触れ「地域が機動的に力を合わせることは有意義」とあらためて必要性を説いた。
 だが他の知事らとの温度差を懸念したのか、9月の県議会では「当面は本県の復興に全力を尽くす」と一歩後退せざるを得なかった。
 関西広域連合長を務める井戸敏三兵庫県知事は昨年11月の定例記者会見で「広域連合によって東日本大震災では迅速かつ適切に行動することができた」と述べ、連携にとどまらない広域組織の意義を強調した。

<分権の受け皿>
 広域連合は地方自治法で定められた特別地方公共団体で、複数の自治体が防災、医療、産業振興などの行政課題に共同で取り組む仕組みだ。市町村で構成する広域連合は多いが、2010年12月に発足した関西広域連合は、都道府県による全国初の連合体となる。
 自治体事務を共同処理する仕組みには一部事務組合もあるが、広域連合は地方分権の受け皿として、国や県に権限移譲を求めることができる。
 7府県と2政令市でつくる関西広域連合は、防災は兵庫、環境は滋賀、医療は徳島などと、各府県の行政組織が7分野の広域行政を分担。権限を集中させるのではなく、単独の府県では達成できない分野に限り、広域連合が政策を実行するという原則に立つ。


0605A03zu.jpg<関電にも対抗>
 関西広域連合が、組織の潜在力を見せつけたエピソードがある。昨年6月、関西広域連合は当時の橋下徹大阪府知事(現大阪市長)が急先鋒(せんぽう)となり、関西電力が発表した15%の節電要請を「のめない」と突っぱねたのだ。
 「数値の具体的根拠や、関電の努力が示されていない」というのが理由だった。これにより情報公開に後ろ向きだった関電は同年冬の節電要請から、関西広域連合と事前協議するようになった。
 「組織があったからこそ、関電というガリバーに立ち向かえた」との思いは各知事に共通だ。かつては年に3、4回しか顔をそろえることがなかった知事たちが、広域連合設立後は月1回の割合で議論を重ねている。
 事務職員が「緊張の連続。正直しんどい」(京都府の担当者)と口を滑らせるほど、広域連合の圧倒的な存在感とスピード感は際立つ。
 注目したいのは、首長の考え方が厳密に一致しているわけではない点だ。橋下市長が道州制論者なら、井戸兵庫県知事や嘉田由紀子滋賀県知事は反対派。山田啓二京都府知事は中立派で、府県トップの立ち位置はグラデーションを描く。
 関西の発展という大義を実現するため、知事たちは「同床異夢」を承知の上で広域行政へ大きなステップを踏み出した。震災からの復興を至上命令とする東北がためらう理由はないはずだ。

写真:関西電力大飯原発を視察し、関電の担当者から説明を受ける山田京都府知事(左)と嘉田滋賀県知事(中央)=4月12日、福井県おおい町

(2012/06/05)