河北新報社

(4)四国の備え/産業政策軸に連携を加速

saisei0606_1.jpg<一気に危機感>
 巨大災害は都道府県単体の自治に限界があることを浮き彫りにした。
 東海沖から四国沖の海底に延びる「南海トラフ」を震源とする巨大地震といかに向き合うか。深刻な津波被害が想定される四国が、広域の備えを加速させている。
 高知県南西部の太平洋岸にある黒潮町。内閣府の有識者会議が3月31日に公表した南海トラフ巨大地震の新想定で、最も高い34.4メートルの大津波が襲うとされた。人口約1万2700で、その83%が予想される津波浸水域に集中している。
 大西勝也町長は「東日本大震災の『3.11』に加え、1年後の『3.31』に出された新想定により危機感は一気に高まった」と語る。「楽観論で対策を考えられないレベルだ」と厳しい表情を浮かべた。

<来秋発足 目標>
 高知県全域が同時被災する恐れが高い中、県、市町村の役割分担についても再構築が迫られる。最悪の場合、沿岸19市町村のうち、11市町村で本庁舎が浸水するとされる。県は、県境を超えた広域的な防災システムづくりに活路を見いだそうと模索を続けている。
 昨年10月には四国知事会に広域支援本部を設置し、中国地方5県の広域支援本部とカウンターパート方式で災害時に支え合うことを決定。ことし2月には、民主党が地域主権改革で進める国の出先機関改革の受け皿として、2013年秋までに四国広域連合(仮称)の発足を目指すことで合意した。
 そもそも四国ブロックの広域連携は、幾重もの障壁があった。08年の自民党の道州制構想では、四国単独と中国との統合の2区割り案が併記された。10年の関西広域連合設立では徳島県が参加するなど、枠組み自体が揺らいでいた。
 広域連合を設立する4県は、四国経済産業局(高松市)の丸ごと移管を求めている。一方で国土交通省の出先機関で道路、空港、港湾などのインフラを担う地方整備局は防災・減災の観点から国の責務であるとし、移管を求めない立場を鮮明にした。

saisei0606_2.jpg<同心円で態勢>
 四国は東北と同様に民間資本の蓄積が小さく、急速な人口減少にも直面していることから、産業政策を軸に広域の取り組みを試行する。「震災で食料基地・東北が打撃を受けた。四国が日本の食を担う方策も考えなければならない」(飯泉嘉門徳島県知事)と、将来的には中国四国農政局(岡山市)の受け入れも検討する。
 尾崎正直高知県知事は「政策分野ごとに役割分担を明確に整理する必要がある」とし「県、四国、西日本そして国へと、同心円状に広がる態勢を何重にもつくることが欠かせない」と強調する。防災のみならず、平時から足腰の強い連携軸の形成を見据えている。
 先陣を切った関西広域連合、「九州は一つ」を旗印に特別立法を伴う「九州広域行政機構」の設立を目指す九州地方知事会。両者がリードしてきた広域行政組織の議論は、急速に全国に広がっている。
 四国に追随するように、中国地方知事会も1日、山口県で会議を開き、5県で広域連合を設立する方針で一致。まずは中国経済産業局(広島市)の移管を求めることを確認した。
 東日本大震災の教訓を土台に、東北とは好対照の軌跡を描き、西日本は府県の垣根を超えて、さらに視点を広げ始めている。

写真:海沿いの津波避難タワーを視察する高知県議ら。巨大津波の新想定により、対策の抜本的な見直しが進められている=5月31日、高知県黒潮町

(2012/06/06)