河北新報社

(5)周回遅れ/道州制を警戒、二の足踏む

saisei0607.jpg<会合1回だけ>
 「震災は不幸な出来事だったが、東北に広域連合をつくるまたとないチャンスだ」。地方自治の専門雑誌「月刊ガバナンス」編集長の千葉茂明さん(49)が訴える。
 宮城県庁で5月末に開かれた北海道東北地方知事会の検討会議に講師として招かれた千葉さん。「関西広域連合の手厚い被災地支援に触れ、東北の住民はかつてないほど自治体連携のメリットを実感している」と説き「東北の連帯」を熱っぽく語った。

 出席した各道県の課長級職員ら25人の表情はしかし、さえない。感想を求めた河北新報社の取材にも、岩手、福島の担当者は「震災対応で手いっぱい」とつれない。秋田の担当者は「東北が足並みをそろえ、広域連合を組織する機運はない」とまで言い切った。
 2000年代初め、岩手の増田寛也、宮城の浅野史郎、秋田の寺田典城各県知事の下、東北の地方分権論議は全国を引っ張っていた。だが、改革派知事が去り、広域連携の機運は急速にトーンダウン。今や「周回遅れ」とさえ皮肉られる。
 東日本大震災後、東北6県知事が一堂に会したのは、北海道東北地方知事会の定例会が新潟市であった昨年11月の1回だけというありさまだ。東北の知事だけで話し合う予定は当面ない。

<「必要性痛感」>
 47都道府県を数ブロックに再編し、国と地方の役割を見直す道州制の実現を訴える首長有志が4月に「道州制推進知事・指定都市市長連合」を発足させた。9道府県知事、15政令市長が参加し、東北からは村井嘉浩宮城県知事が発起人に名を連ねた。
 初会合で村井知事は「震災を経験し復興を進める中で、あらためて道州制の必要性を痛感した」と述べ、災害に強い行政システムの構築に道州制導入が不可欠だとみる。
 東北の他県知事にしてみれば、宮城県が道州制をリードし、地域間格差が拡大することなどを懸念。村井知事は「道州制抜きにまず手をつなごう」と広域連携を呼び掛けるが、その先に道州制が透けて見えるのか、他県は二の足を踏む状態が続く。
 河北新報社の提言は「域内における一極集中を排除し、再生共同体の財産が被災地に還元される仕組み」の重要性を指摘する。「復興の象徴となるようなプロジェクトを推進する」ために被災地起点の広域行政組織が必要だと訴える。
 提言に則せば、象徴的プロジェクトは例えば、東北の再生可能エネルギー戦略や観光を地域再生に生かす取り組みなどが考えられる。
 東北大公共政策大学院の学生有志がまとめた政策提言「東北広域連合の創設について」も参考になる。広域連合で取り組むべき施策として、広域防災拠点の設置、ドクターヘリの共同運航、地熱産業拠点の構築など7項目を挙げ、いずれも県境を超えた取り組みが不可欠としている。
 学生を指導した菅原泰治大学院教授(地方行政)は「広域連合は道州制と異なり県を否定しない。逆に財政力の弱い県を支える東北のセーフティーネットを構築できる」と解説した。

<祭りで絆確認>
 東北の夏祭りを一堂に集めた「東北六魂祭」が5月下旬、盛岡市中心部で幕を開けた。
 六魂祭は昨年4月、鹿内博青森市長が奥山恵美子仙台市長に「被災地支援と鎮魂の願いを込め、仙台七夕まつりと青森ねぶた祭の競演ができないか」と持ち掛けたのがきっかけで生まれた。
 鹿内市長は「東北の絆を再確認できた。祭りも2回目となり『東北は一つ』の機運はますます高まっている」と話す。
 六魂祭は「東北の連帯」に向けてのささやかな一歩でしかないが、広域行政組織を真剣に検討するのは、震災からの復興を誓う今がそのタイミングではないか。

写真:東日本大震災の鎮魂と復興への思いを一つにした東北六魂祭。2日間で約24万人が訪れた=5月26日、盛岡市

(2012/06/07)