河北新報社

(4)新たな担い手/異業種が参入、可能性を追求

20120724.jpg<今冬にも開店>
 「農業を起点に復興を後押ししたい」
 そう考える6人が17日、仙台市青葉区の経営コンサルタント事務所に集まっていた。震災2カ月後に発足した一般社団法人「東北復興プロジェクト」の役員たちだ。
 6人の本業は経営コンサルタントやレストラン経営、障害者施設運営、建設業、不動産業とばらばら。名取市で今冬、農園と加工場、飲食店を一緒にした商業施設のオープンを目指す。

 「建物の建設許可が間もなく下りる。着工時期には影響しない」「建築の発注は4社に打診している。今日は内装や厨房(ちゅうぼう)のデザインを検討してほしい」「現場責任者も交えて一度、人員配置を確認したい」
 起業に向けて決めなければならないことは多岐にわたる。この日の話し合いは3時間を超えた。

<事業は多岐に>
 用地は、東北最大級のショッピングセンター「イオンモール名取」に隣接する3600平方メートルを取得した。ハーブ農園、パン工房、そばレストラン、カフェ、キッチンスタジオを配置し、年間30万人の来場者を見込む。
 レストランやカフェでは、近隣農地や既に取得した多賀城市の農場1ヘクタールで栽培した野菜を提供する。従業員は100人程度を雇用し、うち60人は障害者を採用する計画だ。既に40人が、オープンに向けて飲食店での研修や農場での作業に励んでいる。
 「労働集約型産業の農業は、障害者が貴重な戦力になる」と代表理事で仙台市若林区の障害者施設を運営する渡部哲也さん(44)。山形市で不動産業を営む池野広さん(45)も「仕事で培ったノウハウと人脈を生かし、山形から被災地を支援したい」と力説する。
 施設内には太陽光などによる発電装置を備える。発電システムと生産農場を組み合わせることで災害時には、避難所の役目を果たす。
 飲食、物販、雇用、福祉、環境、防災-と、農業を基軸に多様なプロジェクトを展開する。理事の一人で経営コンサルタントの島田昌幸さん(29)は「農業はどこまでやれるのか、その可能性をとことん追求したい」と意義を強調する。
 運営に必要な5億4000万円は、仙台銀行が融資を決めた。同行が震災後に新設した地元企業応援部の神戸利明部長は「2次、3次産業と結び付けることができれば、農業は有力な融資先になり得る」と戦略を描く。

0724_zu.jpg<有望な投資先>
 宮城県の調べでは、震災前の2010年度の県内総生産に占める農業生産額(691億円)の割合は0.9%にすぎない。10年の農林業センサスによると、農業就労者は全国で260万6000人。わずか5年で74万7000人(22.3%)減少し、平均年齢は65.8歳に達した。
 こうしたハンディを神戸部長は「むしろ異業種参入の余地が大きい、という見方だってできる。市場拡大の可能性もある」と意に介さない。震災後の11年度だけで、農業分野に計12億円の積極融資を進めてきた。
 融資は企画室長補佐で農業経営アドバイザーの資格も有する木村興一さん(40)が担当し、事業計画の立案段階から深く関わってきた。木村さんは「農業が有望な投資市場であることを、プロジェクトの成功で証明したい」と意気込む。
 河北新報社の提言は、先進的な農業を確立するため「6次産業化や組織マネジメントは、ノウハウのある外部資本との協力関係構築も考えられる」と指摘している。異業種から名乗りを上げた6人の野心的試みは、震災からの復興に向けた農業のインパクトになる。

写真:東北復興プロジェクトの役員会。異業種がスクラムを組み、農業関連の多様な事業展開を目指す=17日、仙台市青葉区

(2012/07/24)