河北新報社

(2)一元化窓口/旅行商品仲介、人の流れ加速

20120917_a01.jpg<大学生が企画>
 福島第1原発から約40キロ離れた二本松市東和地区で今月上旬、夏野菜の収穫を体験する1泊2日の被災地ツアー「福島を感じて考えるスタディーツアー スタ☆ふく」が催された。
 東京都や埼玉県、福島市などから24人が参加。原発事故や風評と向き合って暮らす地元農業者と対話したり、収穫したトマト、インゲン、ナスの放射線量を測定したりした。
 一行を案内した福島大3年の吉田哲朗さん(21)は「都市住民が被災地に抱くイメージと現実の溝を埋められた」と充実した表情を浮かべた。
 ツアーは、吉田さんが旅行会社の福島交通観光(福島市)にアイデアを持ち込んで実現した。8月のいわき編と今月初めの喜多方編、そして今回の計3回実施された。
 同社営業企画課主任の支倉文江さん(45)は「生活再建のままならない被災者が観光をどう受け止めるか。初めは不安もあった」と振り返る。
 ツアー商品の企画で県内各地の被災者と会ううち、高まる復興への期待を肌で感じた。「地域の再興には人の流れが不可欠。交流人口の拡大につながる観光業の再開が今こそ大切だ」と支倉さんは自信を深めた。

<半年で2000人も>
 被災地ツアーの需要を追い風に、地元旅行会社は商品開発に力を注ぐ。震災を契機に、旅行目的地側の主導による「着地型」商品の重要性を再認識したからだ。
 岩手県北観光(盛岡市)は、いち早く昨年5月から東京発のボランティアツアーを開催し、同年10月までの半年間で約2000人を被災地へ呼び込んだ。
 「地元密着のわれわれには『地の利』がある」と同社執行役員の平沢光昭さん(55)。「地方の交通事業者は着地型商品の開発に生き残りへの活路を見いだせる」と言い切った。
 修学旅行や研修旅行などの「教育旅行」にも注目が集まる。
 震災前は年間50校5000人の教育旅行を受け入れてきた気仙沼市の離島・大島。昨年はキャンセルが相次いだが、ことしは5月下旬の札幌市の中学生112人を皮切りに、10月までに4校約620人が訪れる予定だ。
 官民による観光振興組織「東北観光推進機構」(仙台市)の坂本文男国内事業部長(57)は「全国で大規模災害への備えが求められる中、三陸沿岸は他にまねのできない教育旅行向けプログラムを手に入れたことになる」と語る。

20120917_a02.jpg<息長い支援に>
 全国、世界中から被災地を目指すビジターと、地元の事業者らをつなぐワンストップ窓口として、河北新報社は「東北再生ビジターズセンター」の創設を提案した。
 「語り部」養成など、ビジターズセンターの機能は多様であるべきだ。それでも、被災地と旅行会社のマッチング活動に絞れば、宮城県が昨年10月に設置した「みやぎ観光復興支援センター」が一つのモデルとなる。
 支援センターは、渉外担当の7人が沿岸の被災12市町をくまなく回り、観光客を受け入れられる語り部の人数、駐車場やトイレの有無といった情報を収集する。
 仙台市の事務所に3人が詰め、旅行会社からの問い合わせに応じる。「不案内な旅行会社と被災者が直接やりとりすると誤解やトラブルを招きやすい」。佐藤一彦センター長(44)が中間支援の意義を説いた。
 支援センターの仲介で訪れた観光客はことし8月末で約1万2000人に達したが、センターは雇用創出基金を財源としており、来年度以降の活動は未定だ。
 ビジターズ産業に目覚めた被災地を支援するためには、恒久的なビジターズセンターを整備しなくてはならない。

写真:野菜の放射線量を測定する道の駅従業員の説明に耳を傾けるツアー参加者=9日、二本松市の道の駅ふくしま東和

(2012/09/17)