河北新報社

(4)アーカイブの意義/記憶語り継ぎ、防災に寄与

20120919_01.jpg<復興、定点観測>
 国内外から被災地を訪れる観光客らの受け入れ窓口「東北再生ビジターズセンター」には、学術データや震災記録を集積するアーカイブ(記録保存)機能も備えたい。
 被災地では今後、研究や視察目的の来訪者が増えるとみられる。そうした活動に、速やかなデータ提供によって応えるためだ。震災記録を収集、保存して語り継ぐことは、何より防災・減災意識の啓発につながる。
 東日本大震災で仙台市太白区向山にあった老舗旅館が倒壊した。解体され更地となった旅館跡地に今月上旬、同市宮城野区のNPO法人「20世紀アーカイブ仙台」の副理事長佐藤正実さん(48)の姿があった。

 佐藤さんは被災地の復興過程を記録する定点観測に取り組む。「被災の記憶を風化させてはならない」。衛星利用測位システム(GPS)搭載のデジタルカメラを手に、佐藤さんはあらためて心に誓う。

<当事者増やす>
 映像や写真の収集・保存活動を続けていたNPOが、被災現場や生活を伝える写真の提供を募ったのは、震災後間もない昨年3月22日だった。
 1995年の阪神大震災は記録収集の本格化が5年後と遅れ、その間に多くの写真が散逸したと伝えられる。デジタルカメラやカメラ付き携帯電話が普及していなかったという事情もあった。
 そうした教訓からNPOは、短文投稿サイト「ツイッター」などを使って呼び掛けを急いだ。宮城県内から寄せられた1万8000枚のうち1500枚を抽出し、ことし3月に写真記録集「3.11 キヲクのキロク」の出版にこぎ着けた。
 本年度は収録写真の全撮影地点にメンバーが足を運び、被災から1年以上たった現場に再びレンズを向けている。成果は来春にも、撮影地点の地図とともにウェブサイトで公開する予定だ。
 サイトを見た人に定点観測の担い手となってもらうほか、インターンシップ(就業体験)の大学生らも受け入れる。佐藤さんは「震災の記憶をつなぐには当事者を増やすのが一番」と確信する。
 市民視点での震災記録保存の取り組みは、仙台市の芸術文化施設「せんだいメディアテーク」(青葉区)による事業「3がつ11にちをわすれないためにセンター」などもある。

20120919_02.jpg<公開法開発へ>
 学術的な観点に立ったアーカイブの取り組みも着々と進む。ことし4月開設された東北大災害科学国際研究所は「みちのく震録伝」と銘打ち、各種データや調査、研究の成果など震災に関連する情報を収集している。
 あらゆる情報を網羅的に集めるため、協力関係を構築した政府機関や自治体、企業などは100以上を数える。
 担当する准教授の柴山明寛さん(36)=災害情報学=は「せっかく情報を収集、保存しても、利用してもらえなければ生きたデータとならない」と強調。研究者から一般市民まで、さまざまな目的やニーズに即した検索手段、公開手法の開発も目指す。
 もともとは地震工学が専門で、木造建築物の被害調査を手掛けるうちにアーカイブの意義に気付いた。「研究者の裏方として、世界の防災・減災対策に寄与できるといい」と柴山さんは話す。
 東北再生ビジターズセンターはこうした既存の団体や大学などによるネットワークに参画し、集積されたデータ・記録を活用しながら来訪者を支援するイメージだ。必要に応じてセンターが独自のアーカイブ活動を展開し、ネットワークの補完的役割を果たすことも可能だろう。

写真:震災の記憶を次の世代へと確実につなぐため、復興の道のりをカメラに収める佐藤さん=5日、仙台市太白区向山

(2012/09/19)