河北新報社

(2)地域ブランド競争/海外も照準、先行する静岡

20121124_1.jpg<協議会に54社>
 東海地震への危機が長年叫ばれ続けてきたことが、静岡県を防災先進県に、地元企業を防災機器開発のトップランナーに育て上げた。静岡発の防災・減災グッズはいまや「静岡ブランド」として国内はもとより、海外も視野に収める。
 静岡ブランドが照準を定めるのは、2008年に四川大地震に見舞われた中国市場だ。反日デモの高まりで今回は見送られたが、今月初めには静岡県防災用品普及促進協議会が中国・浙江省で商談会を開く予定だった。
 浙江省と静岡県は姉妹都市関係にあり10年10月、現地の防災関係団体と相互協力協定を締結。その際持参した防災用品が評判を呼んでいた。

 協議会会長で浜松市の簡易トイレ製造「アオノ」会長の青野之彦さん(75)は「世界市場に目を向ければ、防災ビジネスは無限大だ」と海外進出に積極的だ。
 協議会は県の後押しで09年8月に発足した。備蓄食料、簡易トイレ、耐震金具など防災用品の普及と販売に携わる中小企業の任意団体で、当初24社だった参加企業は54社にまで増えた。
 県防災局長として協議会設立に関わった県地震防災センター所長の小林佐登志さん(60)は「首都直下地震や東海、東南海、南海地震は被害範囲が広く、隣県からの支援は望めない。備蓄は3日ではなく最低1週間必要で、防災用品の需要はますます増える」と予想する。

<都条例で特需>
 県内を中心に27のホームセンターを展開するエンチョー(富士市)は地元開発の防災用品販売に力を入れ、12年も東日本大震災があった11年並みの2億8000万円の売り上げを見込む。
 系列のホームアシスト清水駒越店(静岡市)店長の深沢展敬さん(45)は「大震災後、津波対策に特に力を入れた。県内企業が開発した4人乗り津波シェルターに注目が集まっている」と話す。
 来年4月に施行される東京都の帰宅困難者対策条例も特需を呼び込む。条例は、首都直下地震など大災害が発生した際、職場などで一時待機するよう都民に義務付ける。従業員の3日分の水と食料の備蓄を求められる企業は「静岡ブランド」に殺到。備蓄食料は2カ月待ちの状態だという。

20121124_2.jpg<新潟など猛追>
 東京で10月中旬にあった「危機管理産業展2012」には、大手企業に交じって新潟と高知が県独自のブースを構えた。
 新潟県中越地震(04年)、中越沖地震(07年)と2度の大地震に見舞われた新潟県は「にいがた防災ビジネス研究会」加盟の25社が自衛隊や消防隊など救助側の栄養ニーズを満たす高カロリー保存食などを展示した。
 研究会を支援する財団法人「にいがた産業創造機構」シニアチーフの野呂大祐さん(43)は「県内企業の共同出展も7回目となり、単独でブースを構えたり東京に支店を出したりする企業も出てきた」と自信を見せる。
 南海トラフ巨大地震への備えに力を入れる高知県は初参加。「企業誘致が難しい中、お金を稼げる産業として防災ビジネスに着目した」(県商工労働部)という。
 県は長期産業振興計画に「防災産業の育成」を盛り込んでおり、県工業振興課の永倉慶太さん(32)は「外郭団体が支援する新潟県と違い、高知は県が全面支援している」と対抗意識を燃やす。
 「静岡に追い付け、追い越せ」。急成長する防災ビジネス市場で、新潟、高知両県はトップランナーを猛追する。
 静岡県防災用品普及促進協議会会長の青野さんは「東北でも被災経験を生かして防災関連企業の協議会をつくってはどうか。オールジャパンで世界市場を目指そう」と呼び掛けている。

写真:「静岡ブランド」を中心に防災用品コーナーが常設されている静岡市のホームセンター。津波シェルターの問い合わせが増えている=6日、ホームアシスト清水駒越店

(2012/11/24)