河北新報社

(3)「学」の役割/「産」と連携 実社会に寄与

20121125.jpg<インフラ診断>
 「気の遠くなるような作業だったが、自分が学んできたスキルで古里の復興に役立つチャンスを与えてもらった」
 いわき市出身で会津大(会津若松市)4年の新妻佑記さん(22)の声が弾む。同大画像処理学講座の研究室では、大学院生と学部生合わせて8人が30万枚の画像と格闘する日々を送っていた。
 会津大、東北大、NTTデータの3者は今春、産学連携のコンソーシアム(研究体)を結成した。「社会インフラ診断共創型クラウド」の開発に着手し、経済産業省の助成事業に採択された。

 福島県内の道路1500キロの路面状況を車載カメラで5メートル間隔に撮影。コンピューター理工学で日本の最先端を行く会津大は、画像データをコンピューター解析し、路面のひび割れや段差を瞬時に判定するソフト作りを担った。
 研究成果は、震災で傷んだ道路の復旧に役立てられる。もちろん、全国各地で起こり得る将来の地震災害への応用も可能だ。
 画像データと解析ソフトをインターネット経由で提供するクラウドコンピューティングを活用すれば、国や自治体の担当者が路面損傷を見つけたり、改修を発注したりする際、大幅な省力化が期待できる。
 会津大で研究開発を指揮する岡隆一教授(パターン認識)は「福島の復興、日本の再生につながるという具体的な目標が研究のモチベーションになった」と強調する。「実務を担った学生たちは、現場感覚を持った研究でないと実社会や産業界に応用可能な成果は得られないことを学んだのではないか」と振り返った。

20121125-map.jpg<原発にも投入>
 福島第1原発の事故現場には、東北大が千葉工大と共同開発した災害対策支援ロボットが投入された。高放射線量の中、がれきを乗り越えて進み、原子炉建屋内部の撮影に成功した機動力は、米国製ロボットと肩を並べて高い評価を得た。
 開発グループを率いたのは、産学一体のNPO「国際レスキューシステム研究機構」会長も務める東北大の田所諭教授(ロボット工学)だ。
 田所教授は「実用型ロボットは軍需が研究開発の動機となる傾向が強く、どうしても日本は欧米に後れを取っていた。軍需を防災・減災に置き換えれば、わが国でも産業化を加速できる」と期待を寄せる。
 田所教授らの研究から生まれた屋外で稼働する無人搬送ロボットは、近くトヨタ自動車東日本(宮城県大衡村)の工場に導入されるという。

<研究機関続々>
 震災後の東北では今、多くの研究機関が新産業の創設に結び付く可能性を秘めた研究成果を競い、走りだした。
 東北大は今年4月に「災害科学国際研究所」を旗揚げした。岩手大は昨年10月に「三陸復興支援機構」を設置し、釜石市にサテライト施設を開設した。弘前大の北日本新エネルギー研究所も災害時のエネルギーリスク分散をテーマに研究を加速させている。
 「東日本大震災により、高等教育機関、研究機関として社会に寄与する研究を発信することの意義が一層高まっている」。会津大の岩瀬次郎理事兼産学イノベーションセンター長は、そう自らに言い聞かせた。
 東北の再生に向かって産学の連携は、かつてない盛り上がりを見せている。

写真:画像データを解析する学生たち。震災復旧の研究から新たな減災技術が生まれようとしている=15日、会津大

 

(2012/11/25)