河北新報社

(3)鉄路復活/ BRTは「仮」/完全復旧が要

20121224_01.jpg<貨物列車再び>
 東日本大震災の直後、被災地は深刻な物資不足に見舞われていた。窮地を救ったのは「磐越西線を経由して新潟から郡山に貨物列車を運行させる」というJRの提案だ。
 今では旅客専用の磐越西線だが、かつては貨物が走っていたことをベテラン鉄道マンが思い出した。調べてみると、トンネルの内径や橋脚の強度などコンテナ輸送にも対応できる軌道の仕様は健在だった。

 突貫工事で線路を補修。震災の2週間後からタンクローリー約60台分のガソリンや灯油を満載した貨物列車が連日、運行ダイヤの隙間を縫って東北を横断した。
 震災は、大量の人や物資を一度に確実に目的地へ届けるという鉄道の強みを証明した。ただし、それはレールが寸断されずにつながっている限りにおいてだ。河北新報社の提言は「被災した鉄道の全線復旧は復興の要となる」と、交通網の維持を復興の大前提とする。

<恒久化を懸念>
 震災から1年9カ月がたった今なお、被災地の鉄道は9区間、計304キロで不通が続く。計算上、約1万8000人が不便を強いられていることになる。
 こうした状況を打開しようとJRが打ち出したのがバス高速輸送システム(BRT)だった。気仙沼線では、8月の暫定運行に続いて22日、柳津(登米市)-気仙沼間(55.3キロ)で正式運行が始まった。大船渡線も気仙沼-盛(大船渡市)間(43.7キロ)に2013年春、導入される。
 BRTは、軌道を舗装した専用道などをバスが走行する交通システムだ。整備するJRにとっては、鉄道に比べて建設費や維持費を大幅に抑えられ、容易に導入できる。
 気仙沼市の菅原茂市長は「BRTで確保できるのは、当面の利便性だけ。あくまでもゴールは鉄路の完全復活だ」と、BRTの恒久化に懸念を抱く沿線住民の思いを代弁する。BRTでは定時性、速達性、連続性という鉄道の特性をカバーし切れないからだ。
 定時性を担保する専用道は、気仙沼線BRTでわずか4.4キロ。さらに整備を進めても、全区間の6割程度にとどまる。
 国土交通省東北運輸局が被災路線ごとに開催する復興調整会議では「BRTの導入と気仙沼線の復旧は別建て」と確認し、ようやく関係機関の折り合いを付けた。

20121224_02.jpg<ためらうJR>
 それでも、JR東日本仙台支社は「地域にふさわしい公共交通の在り方を今後検討する」と慎重姿勢を崩そうとしない。JRに鉄路復活をためらわせているのは、ほぼ新設に等しい復旧工事に伴う膨大な費用だ。
 国の支援を期待しようにも東北運輸局は「特定の民間企業に財政支援はできないという大原則がある。しかもJRは黒字企業であり、国費を直接投入する理由を見いだせない」と説明する。
 これに対してJR仙台支社は「黒字を生み出しているのは首都圏の路線であり、東北の在来線は全て赤字路線であることを国や沿線住民にも理解してほしい」と訴える。
 一方で、JRと同様に路線が壊滅状態となった第三セクターの三陸鉄道は、復旧に必要な108億円のほぼ全額を国が拠出する。赤字企業である点が考慮され、災害復旧補助金、復興交付金など被災自治体を迂回(うかい)する手法で民間支援の壁を突破した。
 復興調整会議には国交省、復興庁、JR、沿線自治体のトップが勢ぞろいする。「これだけのメンバーが顔をそろえながら『鉄道復旧を断念する』などという結論が許されるはずはない」。菅原市長はそう語り、あくまでBRTは仮復旧だとくぎを刺した。

写真:気仙沼線はBRTで当面の利便性を確保したが、被災地の願いは鉄道の完全復旧だ=17日、気仙沼市・陸前階上駅

(2012/12/24)