河北新報社

(1)命の道/高速道、津波避難の場に/救助・支援機能も担う

1222_a1.jpg<非常階段、設置>
 「この非常階段があったら、助かった命かもしれない」。仙台市若林区役所の元道路課長菅野猛さん(62)が今月上旬、非常階段の下に手向けられた花束を見詰め、手を合わせた。
 非常階段は、東日本大震災で高さ2メートルの津波に襲われた若林区三本塚の仙台東部道路のり面に昨年5月、設置された。幅2メートルで手すりが付き、道路脇には避難スペースが確保されている。
 仙台平野を縦走する東部道路に整備された13カ所(仙台市5、名取市3、岩沼市3、宮城県亘理町2)のうちの一つだ。

 海岸平野は津波に無防備で、菅野さんは郷土誌などの災害の記録から津波被害への強い危機感を持っていた。退職後の2010年5月、盛り土構造で高さ6メートルの東部道路に非常階段を設置してほしいと、住民1万5000人分の署名を携え、宮城県と仙台市、東日本高速道路に要望していた。
 大震災では東部道路に住民ら約350人が駆け上がり一命を取り留めたとされる。
 東部道路東側の若林区種次に住む佐藤末子さん(74)は道路まで避難したがのり面の石垣を上れず、先に避難していた男性2人に引き上げられて命拾いした。「足元に第1波が押し寄せていた。間一髪だった」と佐藤さん。
 大震災は、高速道路の思わぬ効用にスポットを当てた。「命の道」の側面だ。逃げ場を失った住民の避難場所として、また津波の勢いを減じる防潮堤として。

<全国へ広がる>
 震災後、東日本高速道路は津波襲来時の緊急避難場所として東部道路を再評価した。住民が「高台避難」できるよう非常階段やスロープを設置する「仙台発」の対策が、四国横断道の徳島市や東九州道の宮崎県内など全国に広がる。
 「大震災からの復興と広域物流、防災拠点としての機能強化が期待できる」。東部道路の仙台港インターチェンジ(IC)が1日開通し、宮城野区福室であった式典で宮城県の村井嘉浩知事はICの新たな役割を防災拠点と位置付けた。
 東北地方整備局は三陸道(三陸縦貫、三陸北縦貫、八戸久慈)を「復興道路」と位置付け、異例のスピードで事業化。総延長359キロのうち未整備の230キロ区間をおよそ10年で完成させることを目指す。

1222_a2.jpg<国道の代わり>
 三陸道は簡易型IC22カ所が新設される。簡易型ICは住民の避難や救援・支援活動での利用を想定。整備局道路部は「住宅地や病院、防災拠点からの接続の利便性を上げ、高速道の災害対応機能を高めたい」という。
 実際、三陸道は津波で寸断された国道45号の代替機能を担った。三陸沿岸の45号は52区間、計85キロが津波で浸水し、長い間通行止めとなった。
 住民避難や救急搬送、物資輸送、ボランティアの被災地入りなどあらゆる場面で文字通り「命の道」の役割を果たしたのが三陸道だった。
 河北新報社の提言は「災害に強い高速道は復興を先導するプロジェクトになる」と強調。三陸道の未整備区間解消と全線4車線化を急ぐとともに、太平洋側のバックアップ機能を担う日本海側の日本海沿岸東北自動車道の早期整備も訴える。
 東北大災害科学国際研究所の奥村誠教授(交通計画)は「交通インフラの連結が究極の目的だが、道路の信頼性が前提となる。『命の道』のネットワーク構築は、山梨県の中央自動車道トンネル事故も教訓に、壊れにくく直しやすく管理しやすい道路網にしなければならない」と述べた。


 巨大津波で東北の交通インフラはずたずたに破壊された。災害時に住民の避難路や救援物資の供給ルートとなる「命の道」のネットワーク化は喫緊の課題だ。
 大震災を教訓に、社会資本整備の考え方に「命を守る」視点が加えられた。地域間のリダンダンシー(代替路線)を確保し、安全安心を担保するためには、東北一体のバックアップ体制整備と交通・物流ネットワークの強化が不可欠となる。
 東北全域で基幹となるインフラの一体整備はどうあるべきか。復興途上にある被災地の道路、空港、鉄道、港湾の現場で考えた。(東北再生取材班)=第11部は4回続き

写真:仙台東部道路に新設された仙台港IC。災害時の住民避難や救急搬送など防災面での機能も期待されている=11月30日、仙台市宮城野区

 

(2012/12/22)