河北新報社

11提言 現状と課題/一歩ずつ将来像実現を(中)新しい産業システムの創生

◎提言4/世界に誇る三陸の水産業振興/進む協業化 生き残り模索

<提言要旨>漁業者の多様な協業化を本格導入し、収益性向上、省力化などを図る。産地市場、加工場などの高度化を急ぐ。

20130103_02.jpg 沿岸漁業権を民間企業にも開放する宮城県の水産業復興特区は、県漁協などの反発が依然根強い。県は、合意形成に向け漁業関係者との意見調整に時間をかける方針だ。
 特区が国に認められれば、石巻市の「桃浦かき生産者合同会社」が適用第1号となる見通し。同社は壊滅的な被害を受けた桃浦地区のカキ養殖業者と水産卸の仙台水産(仙台市)が設立。カキの生産から加工、販売まで一括して手掛ける。

 足踏みする特区構想を横目に、宮城県内では漁業生産組合の設立が相次いでいる。震災後、南三陸町の南三陸漁業生産組合など15組合が誕生した。定置網、養殖業、漁船漁業などの分野で協業化が進む。
 漁師が任意のグループをつくり、浜の再建を目指す例も増えている。特に設備投資に膨大な費用を要するノリ養殖で顕著になっている。
 東松島市ではノリ養殖業者の協業体「月光」や「太漁会」が昨年11月、震災後初めて養殖ノリを収穫した。月光と太漁会は2011年7月、津波で養殖施設や漁船が流された漁師がつくった。

写真:養殖ノリを収穫する漁師グループ。震災後、多様な協業化によって生き残りを模索する漁業者が増えている=東松島市大曲浜沖


◎提言5/仙台平野の先進的な農業再生/生産性向上へ 圃場整備前進

<提言要旨>思い切った土地利用調整を前提に、被災農地を集団的に利用し、集落単位で効率的、安定的な農業生産に取り組む。

 仙台市東部地区(宮城野、若林両区)の被災農地を対象とした国営圃場整備事業が前進した。東北農政局は昨年11月上旬に事業計画概要を公告、中旬からは農業者の同意集めに入った。
 同意を集めるのは、事業の実施・不実施を決める手続き。国は耕作者約2300人を対象に今年1月中旬まで、個別に賛否の確認作業を続ける。
 圃場整備の対象は計約1920ヘクタール。このうち7割に当たる1290ヘクタールの水田で、現在10~30アールの区画を原則90~100アールに広げて生産性を高める計画だ。
 経営感覚を持って、地域営農をけん引する農業生産法人の設立などの動きも出てきた。
 若林区井土では、集落単位の農業生産法人づくりが進む。73戸が法人を構成し、協力して水田85ヘクタールと畑15ヘクタールを作付け。経営基盤を強化、従業員を雇うことで後継者確保も期待する。
 宮城野区蒲生では、6次産業化に取り組む農業法人の経営者ら5人が株式会社を設立。養液栽培でトマトや葉物野菜、イチゴを通年出荷し、安定経営を目指す。


◎提言6/地域に密着した再生可能エネルギー戦略/買い取り始動、発電参入続々

<提言要旨>潜在能力が高い東北の再生可能エネルギー開発を進める。電力供給の安定化に不可欠な蓄電池技術を向上させる。

20130103_03.jpg 発電事業者から電力会社が一定価格で電気を買い取ることを義務付け、再生可能エネルギーの普及を図る固定価格買い取り制度が昨年7月にスタートした。東北でも新エネルギー開発が活況を呈している。
 ただ、発電事業への新規参入は東京など東北域外の資本が圧倒的多数を占めているのが現実だ。
 昨年11月には東北経済産業局が、再生可能エネルギー発電設備導入促進支援対策事業の補助金交付先に、東北で141事業を選定した。太陽光発電が138事業を占めた。全事業の出力合計は約20万キロワットに上る。
 独立行政法人の産業技術総合研究所は昨年11月、再生可能エネルギーの研究拠点を郡山市に設ける構想を表明した。再生可能エネルギーの実証に向けた総合的な研究拠点は国内初となる。
 自治体や住宅メーカー、住宅関連団体が参加する「みやぎ復興住宅整備推進会議」は、被災者が自立再建する約5万7000戸の家屋について、電力供給の最適化を図るスマートグリッド(次世代送電網)の導入を念頭に検討を始めた。

写真:国内有数の風力発電適地である東北の日本海側では、大型風車の建設計画が相次いでいる=秋田市


◎提言7/世界に先駆けた減災産業の集積/研究開発拠点 多賀城に開設

<提言要旨>減災(安全安心)産業を被災地に集積し、企業、研究開発機関などが入居する減災リサーチパークを整備する。

 東北における減災産業の中心地を目指す多賀城市は昨年7月、市内のインキュベーション(ふ化)施設「みやぎ復興パーク」をリサーチパークとし、入居する防災・減災関連企業を対象に月額10万円を上限に賃料を助成する制度を始めた。
 非常食を製造する企業や太陽光パネル、精密機器メーカーなど6社が助成を受けた。同市は復興パークで技術を確立した企業などを対象に、広さ16ヘクタールの工業団地を造成する方針だ。
 被災地の研究機関は、新産業の創出に結び付く可能性を秘めた研究成果を競っている。
 東北大は昨年4月「災害科学国際研究所」を開設した。「災害リスク」「災害医学」など7部門37分野の研究者70人が結集。震災の経験に基づいた実践的な防災学を構築し国内外の被害軽減への貢献を目指している。
 岩手大も「岩手の復興と再生にオール岩大パワーを」のスローガンの下、全学組織の「三陸復興支援機構」を設置した。「ものづくり産業復興推進」など6部門が、岩手復興の頭脳を担おうとしている。


◎提言8/地域再生ビジターズ産業の創出/語り部ツアー、各地で本格化

<提言要旨>観光情報の集約など被災地と来訪者を結ぶビジターズ拠点を創設。三陸ジオパーク(大地の公園)を整備する。

 岩手、宮城、福島の被災3県ではボランティアツアーや語り部タクシー、復興商店街買い物ツアーなど新たなビジターズ産業が芽生えている。
 4~6月の仙台・宮城デスティネーションキャンペーン(DC)に向け、東北観光推進機構などがJR気仙沼線に導入されたバス高速輸送システム(BRT)を活用し被災地を回るツアーを計画している。
 震災の記憶を語り継ごうと、各地で語り部ツアーが本格化している。石巻市や宮城県南三陸町など先行自治体に習い、亘理町でも4月、語り部ガイドの活動が始まる。
 岩手県では、県内を中心に隣県の八戸市、気仙沼市を含む三陸海岸を、丸ごと地質遺産公園とする「三陸ジオパーク」の計画が進む。宮城県松島町でも町震災復興会議が松島湾をメーンとするジオパーク整備を提案した。
 石巻市では行政、観光協会、NPOなどが「ビジターズ産業ネットワーク」を結成。被災地の産業活性化や雇用拡大を念頭に、新たな観光の在り方を探る取り組みを始めている。

 

(2013/01/04)