河北新報社

提言発表から1年 東北再生委員会フォローアップ会合(上)新産業創生に着手を

0225T08.jpg 東日本大震災の復興の一助となることを願い、河北新報社が3分野11項目からなる「東北再生への提言」を昨年1月に発表してから1年がたった。東北の自立と創造的発展を視野に入れた提言は、どこまで浸透したのだろうか。策定に関わった東北再生委員・専門委員がフォローアップのための会合を仙台市青葉区の河北新報社で開いた。「復興元年」と呼ばれた2012年を振り返り、今後の課題を検証する。

0225T01.jpg◎一力委員長あいさつ/「被災地起点」粘り強く訴え

 東日本大震災から来月で丸2年がたつ。しかし状況は1年前と全く変わっていない。さまざまな復旧復興の努力にもかかわらず、復興の前段である復旧すらままならない厳しい状況が続く。被災3県で地域間格差が拡大する懸念もある。
 河北新報社は提言の具現化に向け連載「東北再生 あすへの針路」を掲載したほか、特集を組んだりシンポジウムを開いたりした。今後も提言の肝である「被災地起点」「東北一体の再生」を粘り強く訴え、被災地に光を当てる活動を続ける。


◎復興元年を振り返って/生活再建はまず雇用から・今野秀洋氏/風化が進行、情報発信必要・藤原作弥氏

0225T02.jpg -「復興元年」の2012年を振り返ってください。提言を生かすために何が必要なのか、検証していただきます。

 増田寛也氏 「東北再生への提言」は、理念にとどまらず、具体的に方向性を示すことが重要だった。
 提言で被災地に定期賃借権を設定して高台移住を促しているが、国は平常時のルール、日常的仕組みの中で復興しようとしている。土地利用計画などは審査期間が短縮されたが、思い切って審査を割愛するという発想が必要だ。

 首藤伸夫氏 とにかく復興が遅い。1933年の昭和三陸津波では、震災5カ月後に宅地造成が始まり、1年後に8割が完成した。スピード感があまりにもない。採石場から被災地に砂利を運びたいが、途中に町道があり、ここは国の復興予算で修復できないといったケースもある。1カ所がネックとなって全体が進まない。

 黒田昌裕氏 復興の遅れを取り戻すには、行政の役割を根本から見直さなければならない。高度成長期の成功体験は既に構造疲労を起こしているのに、それを壊すことなく、そのままの手法で復興しようとしている。提言にある東北再生共同体の創設などは、発想そのものが政府にも自治体にも希薄だ。

0225T03.jpg 今野秀洋氏 がれき処理や護岸、道路の復旧は一定程度進んだ。だが、生活の再建はますます難しくなっているのではないか。石巻市雄勝地区では、地元に戻りたいという人が4割にとどまっている。住宅、仕事、産業の順に再建するのではなく「どんな産業を興すか」から発想していかないと雇用も生まれず、人口流出が続く。

 藤原作弥氏 時間の経過とともに風化が進んでいる印象が拭えない。市町村、県、国と上に行くほど真剣味が薄れている。一方、芸術、映画、詩などで震災が取り上げられ、強い印象を世界に与えた。日本人の生き方を示した意義は大きい。被災地から世界に発信していくことは決して無駄ではないと確信した。


0225T04.jpg◎復興の先を見据えて/防潮堤頼らず防災意識向上・首藤伸夫氏

 -提言は、震災復興の先に「新たな東北の創造」を掲げています。「安全安心のまちづくり」では今後、どのような視点が大切でしょうか。
 首藤氏 1993年の北海道南西沖地震で30メートルの津波に襲われた奥尻島青苗地区では、防潮壁は無傷だったのに家屋は全壊した。構造物に依存しすぎると防災意識が薄れ、かえって危険だ。
 1000年に1度の津波を想定した巨大防潮堤を誰が維持していくのか。防潮堤が高くないと安心できないという論調に不安を感じている。人は忘れやすいという前提で、震災の記憶を後世に残すシステムがないと真の安全は確保できない。

 -「新しい産業システムの創生」はどうでしょうか。
 今野氏 被災企業向けのグループ化補助金は、予算の増額や申請の簡略化で大いに役立った。ただ、販路を失った事業所が多く、どう立ち直らせるかが課題だ。新産業の創生は、ことし以降のテーマだろう。被災地の外からもアイデアや資本を入れてほしい。
 黒田氏 少子高齢化が加速する東北だからこそ、高齢者産業に着目してもらいたい。介護と医療のシステム融合や、日本の弱点だった高度医療機器の開発にぜひ取り組むべきだ。

 -「東北の連帯」は進展していません。
 藤原氏 交通・物流ネットワークの復旧は比較的進んでいるが、東北再生共同体は具体的な姿が見えない。経済や観光、文化など緩やかな連携から着手したらどうだろうか。
 増田氏 仙台の経済力を東北全体で有効活用する方法を考えるべきだ。岩手県知事時代に中央から地方への富の配分を訴えてきたが、これからはそれも難しくなる。東北の域内で新たな配分モデルを考えてほしい。


顔写真:(上から)一力雅彦氏、今野秀洋氏、藤原作弥氏、首藤伸夫氏

(2013/02/25)