河北新報社

再生委員に聞く

20120103.jpg 東北の太平洋沿岸に壊滅的な被害を与えた東日本大震災からの復興に向け、河北新報社は「安全安心のまちづくり」「新しい産業システムの創生」「東北の連帯」の3分野で計11項目の提言をまとめ、1日付で公表した。提言を基に被災地のまちづくりや産業興しを成し遂げ、東北の輝く未来を切り開くには、どんな課題や困難が待ち受けているのか。提言づくりに携わった河北新報社東北再生委員会委員に聞いた。(6回続き)

 ―東北再生への元年が幕を開けた。
 「東京電力福島第1原発事故の福島や津波被災地・東北は『FUKUSHIMA』『TOHOKU』という単語になり、世界を駆けめぐっている。震災により各国との距離が縮まり、支援に応じた多くの人々が今も、復興への足取りにまなざしを向けている。世界の一員としての東北を意識し、視野を広げて将来を見据えることが大切だ」

(2012/01/03)


20120104.jpg ―大震災の被災者の生活再建は道半ばだ。
 「復旧・復興のスピードが遅く、状況は震災直後とほとんど変わっていない。一番の原因は先が見えないことだ。不安解消につながる明確なメッセージを、政治が打ち出せていない」

 ―福島第1原発事故も予断を許さない状況が続いている。
 「除染は長期化が予想され、廃炉となるとさらに長い年月が必要だ。東京電力はもちろん、政府、行政、科学者の役割が問われる。それぞれの知見を総動員し、事態の早期収束を図るべきだ」

(2012/01/04)


20120105.jpg ―あらためて東日本大震災をどう振り返るか。
 「政治的不安定と経済不況のさなかに起きた大災害という意味で、関東大震災、阪神大震災、東日本大震災には共通の背景が認められる。しかし政権交代といい、世界同時不況といい、その規模の大きさと深刻さは過去に例がない。あらゆる条件が不利になった」

 ―政府の震災対応への不満が根強い。
 「与野党あるいは政官を問わず、震災前からもたつきが目立った。福島第1原発事故をめぐる情報の遅れ、透明性の欠如が拍車を掛け、国民の不信を大きく募らせた」

(2012/01/05)


20120106.jpg ―津波工学の専門家として、東日本大震災で最も印象に残っていることは何か。
 「大津波で驚いたことが二つある。鉄筋コンクリートの建物が倒壊したことと、仙台平野を襲った津波が真っ黒なヘドロだったことだ」

 「鉄筋コンクリートの建物倒壊は宮城県女川町で6件、宮古市で2件。女川町では建物の全てのくいが引っこ抜かれた例もあった。政府は津波避難ビルの指定や新規建設を推進するが、倒壊の恐れがある津波避難ビルに人が逃げ込むという悲劇が起こりかねない」

 ―構造物頼みの防災ではなく、河北新報社の提言では高台移住を提案している。
<近隣と一緒に>
 「高台移住が一番いい。もちろん移住する住民が納得することが大前提になる。その際、命、生計、コミュニティーを守ることが鍵を握る。インドネシアの大津波で高台移住した住民は5~6年で低地に下りてきた。生計が成り立たなかったためだ。移住は向こう三軒両隣、一緒がいい。阪神大震災で問題となった孤独死も防止できる」

(2012/01/06)


20120107.jpg ―河北新報社の提言では、高台への移住促進と、地域一体の環境整備を後押しする施策として、被災土地への「定期賃借権」の設定を掲げた。

 「災害に強いまちをつくり直すには、個人が所有する土地や建物などの問題に立ち返らざるを得ない。復興を加速するために、定期賃借権のシステムは有効だと思う。住まいの再建には経済的な負担が大きく、被災者支援にもつながるだろう」

 ―釜石市で復興計画のアドバイザーを務め、市民と新たな都市づくりを模索している。課題をどう認識しているか。
<縁側文化重要>
 「海との関係性や平場から高台への土地利用、街並みの配置などは被災地ごとに違う。地域の特性を最大限生かす発想が欠かせない。海に臨む斜面を活用した住居、切り妻屋根で共生をイメージした集合住宅などを提案している。各地に長方形の住宅団地ばかり立ち並んだら、東北の風景は台無しになってしまう」

(2012/01/07)


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