あるもの探しの旅

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チンクエ・テッレの絶品シーフード

リストランテ サン・ジョヴァンニ@カサルッツァ・リグーレ

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【Photo】海岸線から少しアペニン山脈沿いに入った小さな街カサルッツァ・リグーレ。小高い山の先にはリグーリア湾が広がる

 高速A12を Chiavali キアヴァリで降り、陽光あふれる海岸線から若干内陸に入った Casarza Ligure カサルッツァ・リグーレという小さな町にあるリストランテ「San Giovanni サン・ジョヴァンニ」に着いたのは、11時すぎ。ここで、リグーリアの東端の都市 La Spezia ラ・スペツィアの先にある別のリストランテを予約していたジョルジョと西川さんとは、しばしのお別れです。そこからはガイド役不在のまま、半日を過ごすことになりました。実はこの日の昼食は、各 Guida(=レストラン評価本)において、東リビエラで随一の評価を受けるリストランテ「Ca'Peo」でとりたかったのですが、当時はシェフを務めるお母さんの体調が優れずに休業中。

 そこで、イタリアの料理評価本「l'Espresso」や「Accademia Italiana della Cucina」などで、魚料理が美味しいとの理由で評価が高い「San Giovanni サン・ジョヴァンニ」を、数軒の候補の中から、いわば"勘"で代役に立てました。ことの経緯はともかく、結果的にこの選択は大正解だったのです。帰国後、「サン・ジョヴァンニの料理が一番だった」と言うメンバーすらいたのですから。到着早々に見舞われた強烈な先制パンチさながらのピエモンテ料理に、すっかり根を上げた面々にとって、それは正に体が欲した料理だったのです。四方を海に囲まれた私たち日本人のDNAが、新鮮な魚介を切実に求めていました。
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【Photo】リストランテ「サン・ジョヴァンニ」の名前の由来となったサン・ジョヴァンニ・バティスタ教会は7世紀~8世紀に創建されたロマネスク様式。リストランテの裏庭から鐘楼が見える

 リストランテ「サン・ジョヴァンニ」は、小柄で気さくなお母さんのピヌッチャ・ノヴァロさんがシェフで、娘さんがフロア係という家族経営の店です。白い外壁が青い空に映えるその店の敷地には、オリーブやミモザが植えられています。ピヌッチャさんのお母さんだという、肝っ玉母さんといった風情で魚を抱えるジュゼッピーナさんの絵が掛けられた明るい店内は、いかにもリビエラの開放的な雰囲気を漂わせていました。
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【Photo】店のエントランスにて日伊のグランシェフ揃い踏み。奥田シェフとピヌッチャ・ノヴァロさん

 テーブルについた私たちは、「今日はアンティパストとプリモピアットを魚介系中心でいきましょう」と示し合わせた上で、胃腸を癒す料理のチョイスを奥田シェフにお任せしました。メニューと睨めっこのシェフの脇では、私がワインリストと睨めっこ。"料理とワインは一心同体"が信条の私が選んだのは、これから訪れるチンクエ・テッレの急斜面を段々畑に切り開いて栽培される地ブドウ、Boscoボスコ種を主体にVermentinoヴェルメンティーノ種、Albarolaアルバローラ種を混醸した辛口のDOC白ワイン、その名もずばり「Cinque Terreチンクエ・テッレ」。ものは試しと異なる生産者の2本をオーダーしました。そこから前日とはガラリと変わった地中海の幸あふれる饗宴が幕を開けたのです。

【以下、空腹時は閲覧をお勧めしないPhoto が続きます】
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 さっぱりした軽い酸味が心地よい「カタクチイワシのエスカベーチェ」と、ピンクペッパーがアクセントになった「茹でサーモンのサラダの盛り合わせ」(上写真)、優しい歯ごたえと上品な薄味で一同狂喜した「茹でイカのシンプルサラダ」(下写真)は軽くレモンを絞って。

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 「トマトのスライスに刻みルッコラ・マグロの燻製包み」(上写真)はサンダニエレの生ハムのように、まったりとした食感とスモークの香りが香ばしいマグロと、ルッコラやフレッシュトマトが口の中で渾然一体。これまた一同悶絶。からっと揚がったキツネ色の衣をまとって登場したのは、「小麦粉の詰め物をしたムール貝のフリット」(下写真)。小ぶりなムール貝の旨みが詰め物の小麦粉に滲み出て、素材のおいしさを増幅します。

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 揚げ物の次は口をさっぱりさせる「カタクチイワシと玉ネギ、レーズンのマリネ」(上写真)が登場。「殻付きムール貝のムース仕込みトマトソース煮込み」(下写真)と、7品いずれもが新鮮な素材の良さを引き出す伝統と革新の技が冴えるアンティパストばかり。

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 オーダーしたチンクエ・テッレDOC2種。最もブドウの生産量が多い集落とはいえ、Riomaggiore リオマッジョーレのブドウ生産組合のワインCosta de sèra di Riomaggiore'05は年産わずか4,000本。ふんわりと柔らかに香りが広がってイイ感じ。 対照的にキリリとしたTerre di Levanteは、チンクエ・テッレで集落が唯一海に面していないCorniglia コルニーリア産。典型的なリグーリア料理と地元の辛口ワイン「チンクエ・テッレ」が見事にピタピタと好相性を見せてくれました。隣りあう州同士でも、内陸のピエモンテと海に開かれたリグーリアでは、かくも劇的に料理の質が違うものかと実感させられます。

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 多彩なバリエーションでオーダーされたプリモピアットは、タジャスカ種のオイル特有の繊細なナッツ系の香りが活きた「バジルペーストとフレッシュトマト和え半生イカのポレンタ」(上写真)から、続々と運ばれてきました。素材の旨みが凝縮したコッテリとしたブロードの「イカのリゾット」(下写真)には、モチモチした歯応えのスペルト小麦Farroファッロ(注)が使われていました。

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 コクのある海の幸たっぷりのソース「スコーリオのリングイーネ」(上写真)、「イカスミ入りタリオリーニの魚介の軽いトマトソース」(下写真)

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 「ジェノヴェーゼ・ソースを軽くまとったイカのスパゲティ」(上写真)、「トロフィエのペスト・ジェノヴェーゼ風味」(下写真)と、平らげたプリモは全6品。いずれの皿も適度にメリハリが効きながらも、調和がとれたしつこくない味付け。疲れ気味の胃とカラダが一気に生き返りました。

幸福な余韻に浸るメンバーの心境を詠んで一句。「おいしさや、腹に染み入る 海の幸」

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 皿に山盛りで運ばれてきたのは摘みたての黒ブドウ(上写真)。ドルチェのティラミス(下写真)とレモンソルベには、スローフード協会からプレシディオ指定されているチンクエ・テッレ産の有名なデザートワイン、「Sciacchetrà シャッケトラ」を合わせたくなり、一杯だけグラスでオーダーしました。30年に及ぶ熟成も可能というシャッケトラは、DOCチンクエ・テッレに使用するブドウを陰干しして作られます。目のくらむような切り立った斜面で栽培される収量の少ないブドウ100キロから、わずか25リットルも作れないために、高価なデザートワインとなります。小さなワイングラスに注がれたシャッケトラを皆でちびちび回し飲みしましたが、似たような製法で作られる同価格帯の良質なヴィンサント・トスカーナと比較して、若干複雑味が足りず、線が細い印象でした。しかし、料理はどれも素晴らしく、充分に満足のゆくものでした。

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 「フルーツを食べたい」という女性陣のリクエストで、キウイ・バナナ・ラズベリーのマチェドニアと爽快な酸味のレモンソルベも追加。タイプは違えど二日続きの充実した昼食をカッフェと共に終えました。

 面倒見が良く気のおけないピヌッチャさんは、「ペスト・ジェノヴェーゼを本場リグーリアで手に入れよう」という私たちの買い物にまで付き合ってくれました。超ベテランのバリスタが渋~く切り盛りしている近所のバールでお礼のカッフェをピヌッチャさんに一杯ご馳走した後、チンクエ・テッレで最も風光明媚といわれるVernazzaヴェルナッツァに向かったのが15時頃。直線距離にして26キロほどの距離ですが、そこから先の長かったことといったら!地図を頼りに行程のほとんどを山中の曲がりくねった道を駆け抜けたため、つづら折りの道が続く尾根の高みから絶海に浮かぶ孤島さながらの佇まいのヴェルナッツァを目にするまで、およそ一時間半を要したのです。

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Ristorante San Giovanni
リストランテ サン・ジョヴァンニ
住所 Via Monsignor Podestà 1.CASARZA LIGURE (GE)
    HP なし/ TEL 0185-467244
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【注】
イタリアでは Farro と呼ばれる古代より人類が栽培してきた穀物がスペルト小麦。肥料や農薬の力を借りずとも、過酷な環境下での栽培にも耐える。反面、品種改良をされていない分、収量は少なく、殻が固く製粉に手間取るために栽培量を減らしてきた。小麦の栄養分の多くは、脱穀の際に取り除かれる殻や胚芽に存在する。しかしスペルト小麦は粒自体に栄養分が含まれるため、製粉後も栄養素が失われない。こうした長所が見直され、無農薬栽培に取り組む生産者たちによって再評価の機運が高まっている。そのまま Zuppa スープや Risotto リゾットにすると、プリプリした食感が楽しめる。栄養価が高いため、ファッロ100%で製麺したパスタの需要がイタリアで高まっている


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