あるもの探しの旅

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La Strada per Torino~トリノへの道

類いまれなイタリアの魅力

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【PHOTO】トスカーナ州南部 Pienza ピエンツァ郊外 Val d'Orcia オルチア渓谷【click !】で。粘土質の不毛の大地を耕作地に変えるため、この地の人々は何世紀にも渡って土壌改良を続けてきた。雲間から降り注ぐ柔らかな朝の光の粒子に影絵のように浮かび上がる礼拝堂。自然と人の営為がほんのひととき魅せてくれた忘れ得ぬ光景


 まずは思いつくままイタリアの魅力を挙げてみましょう。

 陽光溢れる美しい自然と神々の仕業としか思えぬ息をのむ風景。
 国内はもちろん欧州と地中海世界一円に広がる数々のローマ遺跡。
 先住民族エトルリア人以来、あまたの天才を輩出してきた至高の芸術。
 ギリシャの様式美を規範としながらも独自の発展を遂げた建造物。
 マエストロの誇りと天賦の造形感覚の賜物である珠玉の工芸品類。
 モードに敏感な人々を魅了し、激しく物欲を刺激する Made in Italy 製品。
 伝統と革新の技が融合し無類の美しさと心地よさをもたらす工業デザイン製品。
 恵まれた気候風土と伝統を重んじる気質が生み出す美味しい食事やヴィーノ・・・。

 あなたが魂を揺り動かす情熱的なイタリアオペラを聴きたければ、世界屈指の歌劇場ミラノのスカラ座やボローニャ歌劇場へ。それが7~9月ならば古代ローマの闘技場 Arena di Verona で屋外オペラが上演されるヴェローナが最高の舞台となるでしょう。官能的なイタリア車の真髄に触れたければ、Ferrari フェラーリの聖地 Modena モデナ近郊の Maranello マラネロへ。お好きなイタリア映画の舞台を訪れたければ、シチリアやヴェネツィアなどを訪れるもよし。アルペンスキーの本場アルプスやドロミテには、素晴らしい絶景も待っています。2006FIFAサッカーW杯で頂点に立ったイタリア代表メンバーの試合を観戦したければ、スタンドで贔屓チームを応援する Tifoso (ティフォーゾ=イタリアの熱狂的なサッカーファンの通称) に混じって CALCIO (=サッカー)に熱狂するもよし。本場のピッツァを食べたいのなら、プルチネラと呼ばれる白い道化の看板を掲げるナポリのピッツェリアで、釜に一番近い席に陣取ればOK。イタリア語が少し話せるのなら、"人生の達人"イタリアの人々の味わい深い生きざまに触れるのもいいでしょう。

 初めて訪れた人から私のようなマニアに至るまで、オールマイティに満足させてくれる懐の深さがイタリアにはあるのです。それは西洋文明の源泉として長い歴史のなかで積みあげられてきた遺産の重層があってこそ。ユネスコの世界遺産登録数が最も多い国は42件のイタリア。そのうち41件は文化遺産です。(2007年6月末現在。2位はスペインの40件) 人類が欧州で積み上げてきた英知は、イタリアの大地のみならず、ローマ人が統治した地中海世界一円にその記憶の痕跡を残しています。(注1)

これほど多岐に渡るジャンルにおいて類い稀な魅力を放つ国がほかにあるでしょうか?

 古来、イタリアはその地を訪れた多くの旅行者を虜にしてきました。冬は暗い雲が立ち込める日が続くアルプス以北のヨーロッパ諸国の人々にとって、年間を通して陽光に包まれるイタリアは、憧れの国だったのです。ドイツの詩人ゲーテが「ヴィルヘルム・マイスターの修行時代」で"ミニョンの歌"としてイタリア出身の少女に語らせた一節は、端的にゲーテのイタリアへの憧憬を吐露したものです。

  君よ知るや南の国  レモンの花咲き
  緑濃き葉陰には黄金のオレンジたわわに実り
  青き空より、やわらかき南の風

 ゲーテやスタンダールらを引き合いに出すまでもなく、イタリアは今も数多くの世界中の人々を魅了してやみません。"永遠の都" Roma ローマや"水の都" Venezia ヴェネツィア、"花の都" Firenze フィレンツェのみならず、「ナポリを見て死ね」と称えられる美港 Napoli ナポリや、糸杉の並木が美しいトスカーナの牧歌的な丘陵など、地域ごとに特色あるその魅力は、北から南まで国内各地に満遍なく存在します。この点もイタリアならではの強みでしょう。

 2006年冬季五輪の開催地として一躍世界の注目を浴びた都市 Torino トリノは、国内で4番目の人口を抱える大都市。それでいて、これまでトリノはどちらかと言えば比較的地味な存在だったといわざるを得ないでしょう。その理由は、私が車で街の中を走って感じたトリノの第一印象と符号する理由によるものだと考えます。

・・・「この街、なんかイタリアらしくないなぁ」。

 トリノ中心部の佇まいは、あくまでもシックでエレガント。その落ち着いた街並みは、むしろ隣接するフランスに雰囲気が似ているとさえいわれます。バロックやロココ様式で建てられた王宮群もそう。クラシックでスノッブな雰囲気が漂うカフェもそう。晩秋から冬にかけては霧のヴェールに閉ざされることもしばしばで、そんな時期にトリノを訪れると陰鬱な街という印象すら抱きかねないのでは? どうやらイタリア好きの琴線に触れる"イタリアらしさ"とは異なる個性が"トリノらしさ"であるのかもしれません。ゆえに根っからのイタリア好きの私には、トリノの街は正直に言って異郷にすら映りました。その理由は、トリノがサヴォイア家の遺香を色濃く漂わせる街だったからなのです。


(注1)ブリタニア(現イギリス)ハドリアヌスの長城、ゲルマニア(同ドイツ)トリアーのポルタ・ニグラなどのローマ遺跡、ガリア(同フランス)の水道橋ポン・デュ・ガールとアルルやオランジュのローマ遺跡、パルミラ(同シリア)、ドゥガ(同チュニジア)、ティムガッド(同アルジェリア)タラゴナ、ルーゴの城壁(同スペイン)などは、当時の属領にローマ人が遺したユネスコの世界遺産である。さらに入殖した退役兵によって広く属領へと伝播したのが、ブドウ栽培であったことを考え合わせると、ローマが果たした功績は計り知れない

「ローマ2760年の歴史を10分でおさらい」 (→ちょっと無謀なんじゃ・・・) に続く
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