あるもの探しの旅

« そしてトリノ | メイン | チョコレートの街 トリノ »

海に湧く山の水

大自然の水循環を目撃する海辺@遊佐町釜磯

 今日8月1日、東北地方もようやく梅雨明けしました。これからが夏本番です。週末は海へ繰り出す方もおいででしょう。そこで今回は、ちょっと珍しい浜辺へとご案内します。目的地は前回同様に鳥海山のお膝元です。

mare.jpg
【Photo】夏をクールダウンするならココが一番。ひんやりした鳥海の伏流水が海辺に湧出する遊佐町吹浦の釜磯海水浴場

 独立峰ながら東北で二番目の高さで聳える鳥海山は、山自体が海から吹く風の障壁となります。そのため山頂から中腹付近は雲に覆われることが多く、出羽富士といわれる秀麗な全容をなかなか人目にさらさない山でもあります。
 
 山麓に降り注ぐ大量の雨水は、腐葉土層のフィルターを通して地中に滲みこんでゆきます。その栄養分を含んだ伏流水は、コニーデ式の円錐型の形状をした鳥海山の裾野が広がる秋田・山形の各所に湧き出しています。漏斗(ろうと)を伏せたような形をした鳥海山は、山自体が水の"ろ過器"と言ってよいでしょう。

 鳥海山の伏流水は、比較的短い期間で地上に湧き出すのでは?と見る向きがあります。この山の岩石組成は、ほとんどが溶岩が冷えて固まった安山岩です。前回述べたとおり、鳥海山の局地的な降水量は熱帯雨林地帯並み。この豊富な水が地中に滲み込み、標高 2,236mの高みから急峻な火山性の土壌の中を通ってくるため、その水には、地中のカルシウムやマグネシウムなどのミネラル成分がじっくりと浸潤することはありません。そのため、鳥海山周辺の湧水はミネラル成分が比較的少ない硬度の低い軟水となります。
UP.jpg
【Photo】釜磯の砂浜には多くの湧水口があり、長い時間は手足を浸していられないほど水温が低い伏流水が湧きだしてくる

 日本海に面する鳥海山の西側では、その稜線が海岸線まで伸びているため、多くの湧水スポットが海沿いに存在します。その中でも秋田県にかほ市の長磯や山形県飽海郡遊佐町の釜磯では、砂浜に豊富な湧水が湧き出ています。その海域では、海中にも地下水が湧き出しているといいます。夏には海水浴場となる釜磯ですが、湧き水の温度は10℃あまりと冷たいため、湧水が海に直接流れ込む付近の海水はひんやりとしています。
        TOOCEAN.jpg
【Photo】 ひんやりとした湧水が砂浜に流れを作って海へと流れ込んでゆくさまは、大自然が営む水循環そのもの

 釜磯の湧水口は砂浜だけでも20箇所以上は認められます。湧き出す水量はそれぞれ異なりますが、水脈が固まっている大きな湧水口には近づかないほうが得策です。なぜなら絶えず砂を巻き上げているその窪みは思いのほか深く、うっかり足を入れようものなら、あっという間に膝のあたりまで沈み込んでゆきます。そうなると大人でも簡単には抜け出せません。ちょっとした"底なし沼"のようなそこは、小さなお子さんには危険を伴うかもしれません。

   kaki1.jpg kakiup.jpg
【Photo】浅瀬の岩には食べられた形跡のある岩ガキも。密漁はご法度ですよ(^ ^;)

 さほど広くはない砂浜には、活火山・鳥海山の噴火によって吹き飛ばされた岩が点在しています。そうした岩と砂の間からも水がこんこんと湧いているのが見て取れます。湧水が流れ込む浅瀬にある岩の表面には、小さな岩ガキがびっしり。波打ち際からやや離れた砂浜に湧き出した水は、そのまま砂浜に水路を刻む小川となって海へと流れ込んでゆきます。その水路には湧出口から湧き出す水によって、地下から粒子の細かな砂鉄が吐き出されるため、黒い砂鉄が描き出す筋が幾つもできています。
satetsu.jpg
【Photo】水が滲み出してくる砂浜の一角には、砂鉄が黒い流紋を作る

 砂浜を挟んで両脇の岩場からも水が湧いており、場所によってはすくって飲むことも可能。すぐ目の前は海なのですが、岩の隙間から湧き出す水に塩辛さはありません。なぜか北側と南側の岩場では水の味が異なるように感じます。

 先日、釜磯海水浴場を訪れた際、湧水口に缶ビールやスイカを冷やしておく人を見かけました。確かにひんやりと冷たい湧き水は天然の冷蔵庫代わりになってくれます。ただし、水量が豊富な場所は避けたほうがよいでしょう。さもないと、せっかく冷した飲み物が泳いでいる間に流されていってしまいますので。(笑)

 車を運転していた私は、冷えたビールをおいしそうにあおる連れを横目に、この時とばかり岩場の湧き水を飲んでみました。砂浜の入り口(北側)に近い大きな岩裾から湧き出すひんやりと冷たい水は、まぶしい陽射しで火照った体をクールダウンするにはもってこい。しかも鳥海の湧水の例にもれず口当たりの柔らかな軟水で、なんとも贅沢な気分になりました。地元の事情通に言わせると、ほんの微量ながら海水が混じり込むといわれる釜磯の水は、ミネラル成分が増してカラダにも良いのだとか。
aquasassi.jpg
【Photo】岩の隙間から流れ出す鳥海山の湧き水は冷たくまろやかな味がする

 こうして海辺に湧き出す釜磯の水は、直接目の前の海へと戻ってゆきます。その水はもともと日本海の水だったもの。太陽によって暖められた海水が蒸発して雲となり、雪や雨となって陸地に降り注いだ後、地中に滲み込んだ伏流水となって、地上に湧き出してきます。

 釜磯は水が循環する大自然のメカニズムを目のあたりにすることができる稀有な場所なのでした。


◆追記◆

 釜磯を訪れた際に立ち寄りたいのが、すぐ近くの名跡「十六羅漢」前にある「サンセット十六羅漢」。ココのイチオシは「夕日ラーメン」(650円)。味の決め手は酒田沖に浮かぶ飛島で捕れたトビウオのダシが効いた上品なスープ。縮れた細麺と澄んだ醤油系スープの相性はバッチリ。トッピングは加熱すると鮮やかな緑色を呈する地元吹浦産のアオサ。磯場に育つミネラルたっぷりのアオサが加わってすっきりとまとまる。仕込みに使うのは、すべて鳥海山の湧水だという。
         youhi.jpg

 対馬海流に乗って日本海を北上してくるトビウオは、庄内沖が北限。酒田の沖あいに浮かぶ飛島では、初夏が漁期となる。頭と内臓を除いたトビウオを浜で炭火焼にしてから一週間ほど天日干しにして作る「アゴ(⇒トビウオの別名)の焼き干し」は、庄内の食事に欠かせない食材。

         gaki.jpg
 加えて夏の庄内浜のオススメは岩ガキ。海中に伏流水が湧き出る吹浦産岩ガキは、庄内浜でもとりわけ美味とされる。滋養豊かな湧水が湧き出す付近に群生が見られる岩ガキは、低い水温のために、ゆっくりと成長して濃厚な旨みが凝縮してゆく。何を隠そう、カキ特有のヨード香が苦手な私は、三陸産の生ガキは残念ながらNG。しかし庄内浜の獲れたて新鮮な岩ガキは、カキの種類が違うためか、苦手な香りが全くせず、ミルキーな甘味すら感じさせ非常に美味。三陸のカキがダメでも岩ガキならいけるのは、「庄内系」なるがゆえか?(爆) 私同様、生ガキが食べられないという会社の後輩も岩ガキならば全然オッケーだという。優雅な一人暮らしの彼女は、夏に庄内を訪れると必ず殻付きの岩ガキを実家用と自分用にそれぞれ箱買いしてくるそうな。

 国道7号線沿いにある「道の駅 鳥海 ふらっと」では、旬の岩ガキを店頭で食することができる。ひときわ大きな「スーパージャンボ」は、およそ8年の間、海中で育ったものだという。目の前で殻を開け、サッと水洗いされたプリップリの岩ガキを口にほお張ると...。 おっと、ヨダレが。

************************************************************************ 
 ◆サンセット十六羅漢 :山形県飽海郡遊佐町大字吹浦字西楯7-30
  TEL 0234-77-3330 (元旦以外無休・P有り)

 ◆道の駅 鳥海 ふらっと :山形県飽海郡遊佐町大字菅里字菅野308-1
  TEL. 0234-71-7222 (元旦以外無休・P有り)
   URL. http://www2.ocn.ne.jp/~furatto/index.html

baner_decobanner.gif

Luglio 2018
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

archive.gif

Copyright © KAHOKU SHIMPO PUBLISHING CO.