あるもの探しの旅

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2008/01/29

寒中に寒鱈で乾杯

庄内の美味を堪能する会 《前編》

gassanntunnel.jpg【Photo】厳冬期の月山道路。冬ならではの庄内の美味と巡り合うためには、この難所を越えなくてはならない

 去る1月20日(日)に「庄内の美味を堪能する会」が催されました。このツアーの提唱者は、仙台のお弁当製造企業「㈱こばやし」の小林 蒼生社長です。仙台の企業経営者やブランチの長の方々に加え、当社の一力 雅彦社長も参加して行われました。小林社長から行程のプロデュースを仰せつかった私は、"庄内系"の名にかけて内容を吟味しました。ご夫妻で参加された5組を含む総勢21名が参加したこの旅行会、わが社が提唱する仙山圏交流の広域拡大版ともいえる展開となったのです。

tatsutaage.jpg【Photo】九兵衛旅館で頂いた「寒鱈の竜田揚げ」。思わず庄内弁で「んめのー(=おいしいなぁ)」

 小林社長は、職業柄、全国の美味しいものを食べ歩いておられます。これまで社長とは幾度となく庄内にご一緒しました。社長の主目的は、鶴岡のイタリアンレストラン「アル・ケッチァーノ」で食事をすること。「あんたが一緒だと店の扱いが違うから」(⇒そんなことはない...)と、いつも私の同行を求めるのです。時間が許す限り、四季折々に多彩な食材が揃う庄内の産直施設や生産の現場へも私がご案内するので、実益を兼ねてという側面もあるのでしょう。やがて社長は、すっかり庄内の魅力にハマってしまいました。お付き合いの幅が広い社長は、これまでも食に関心が高いお仲間や取引先に声を掛けられ、私がガイド役となる5~6人による庄内ツアーを何度も実施してきました。私は私で、別途お付き合いのある仙台や東京圏から訪れた料飲店関係者を庄内にご案内したことも数回あります。そうした中から、プロのお眼鏡に叶う質の高い庄内産食材が仙台や首都圏の飲食店で使われるケースが生まれています。命を繋ぐ安全で美味しい食材を提供してくれる庄内の生産者。彼らの真摯なお仕事ぶりを見るにつけ、私も自信をもって食材をご紹介できるのです。新たな販路を紹介できれば、ささやかなお返しにもなるので、一石二鳥といったところでしょう。

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【Photo】九兵衛旅館の「鱈の子ごはん」。付け合せは胡麻豆腐・フキの酢味噌和え・ひろっこ(アサツキ)のおひたしの三点。漬物は温海カブの甘酢漬けと青菜漬け

 朝8時30分に大型バスで仙台を出発したこのツアーのテーマは「寒鱈を食べ尽くす」。まず目指すは鶴岡 湯田川温泉の「九兵衛旅館」です。参加メンバーのお一人、仙台秋保温泉の名旅館「佐勘」の佐藤 勘三郎社長から、後輩にあたる先方の大滝 研一郎専務に「美味しいものを日頃召し上がっておいでの方たちなので、量は少なめで良いものを」と昼食の手配をかけて頂いていました。この日は例年2万人の人出で賑わう「鶴岡 日本海寒鱈まつり」の開催日に重なったため、寒鱈の調達に苦労されたようです。到着後、湯田川の肌触りが柔らかな硫酸塩泉のお湯をお楽しみ頂いた後、サントリー㈱東北支社 西宮 佑二支社長のご発声で乾杯。そこへ旬の寒鱈を使った料理が運ばれてきました。一皿目は「寒鱈の竜田揚げ」。脂が乗った寒鱈の白身をキツネ色に揚げたものです。ジューシーな白身の旨みがカラっと揚がった衣の香ばしさと共に口一杯に広がります。これはビールとの相性がピッタリ。地元では「ひろっこ」ともいうアサツキのおひたしや温海カブの甘酢漬けkuheikanndarajiru.jpgといった庄内の味覚を、真鱈の卵を醤油と味醂・酒で漬けた鱈の子ごはんと共に頂きました。これだけは外さないでとお願いしていた寒鱈汁【Link to back number】は、味噌に酒粕がほのかに香り、長ネギや半月切りにしたダイコンと共にガラもしっかり入ったもの。旅館の寒鱈汁ということで上品な味付けを予想していましたが、良い意味で予想を裏切られて皆さん大満足の様子でした。
【Photo】九兵衛旅館の「寒鱈汁」

 九兵衛旅館の女将 大滝 澄子さんは、作家・藤沢 周平(1927~1997)が山形師範学校(現・山形大学)卒業後の1949年4月、当時の湯田川村立 湯田川中学校に教師・小菅 留治(藤沢 周平の本名)として着任した際の教え子でした。小菅教諭は結核を患ったため、わずか2年で教壇をyuzusamejinjya.jpg 去ることになりますが、療養後に業界紙記者を経て藤沢 周平として文壇デビューを果たした後も教え子たちとの交流は続き、九兵衛旅館にたびたび逗留したといいます。九兵衛旅館には、藤沢 周平が終生続けた女将との交流を窺わせる手紙などが常時展示されています。映画「たそがれ清兵衛」で宮沢りえ演じる朋江が清兵衛の娘たちと村祭りで演じられるひょっとこ神楽に興じる場面のロケが行われた「由豆佐売神社(ゆずさめじんじゃ)」は温泉街から石畳の小路を歩いてすぐ。雪化粧した杉並木の階段の先にある社殿へと詣で、名匠 山田 洋二監督が描いた心豊かな藤沢文学の世界に浸ったのでした。

【Photo】由豆佐売神社の参道(右写真)

kankoubussannkan.jpg【Photo】「庄内観光物産館」内の菅原鮮魚店で。一番大きなオスの寒鱈には17,000円の値札が(左写真)

 庄内の風土のように人を優しく癒すまろやかなお湯と満ち足りた食事にまったりモード漂う中、庄内観光物産館へ移動、買物タイムとなりました。オス1kg 2,000円、メス1kg 1,000円、白子1kg 3,000円という庄内浜産寒鱈の値段に皆さん目を丸くしていました。taranobori.jpg
【Photo】「鱈のぼり」が目印。鶴岡日本海寒鱈まつり会場

 そこから市街中心部の鶴岡銀座商店街で開催中の「鶴岡 日本海寒鱈まつり」会場へと向かいました。到着が14時近くとなり、まつりは終盤。すでに寒鱈汁が完売となって店じまいをした出店もありました。九兵衛旅館とは味付けのタイプが異なる寒鱈汁を皆さんに味わっていただこうと、お目当ての出店を探しました。なにせ4年連続で来ている鶴岡 日本海寒鱈まつり。事前に傾向と対策はできています。「白身が無くなって、ガラだけのガラ汁だから一杯500円のところ300円でいいよー」という呼び込みに並ぶことしばし。2008tsuruokakandarajiru.jpg皆さんには別腹で寒鱈汁を召し上がって頂きました。もはやガラだけとなった汁には寒鱈の旨みが滲み出ており、味噌と共に酒粕の効いた私好みの味付けは今年も健在でした。

【Photo】終了時間迫る「鶴岡 日本海寒鱈まつり会場」で頂いた岩海苔とアラがたっぷりと入った「商店街婦人部」のドンガラ汁(寒鱈汁)は300円のバーゲンプライス
 
 午前中から昼過ぎは多くの人手で賑わったという寒鱈まつり会場も、2時をまわって幾分人もまばら。寒鱈汁で一度は温まったものの、2℃ほどしかない気温の中で底冷えがしてきました。こりゃ堪らんと日本酒好きの呑兵衛数名が立ち寄ったのが、 商店街にある「山形の地酒 佐野屋」です。wataraimiyama.jpg鶴岡市西部の大山は、藩政期より天領の造り酒屋街として栄えた地区。現在では4軒の蔵元が酒造りを続けています。店頭でグラス売りされていたのが、「渡會本店 出羽ノ雪酒造」の限定品「和田来(わたらい)」の新酒、純米吟醸でした。冷えた体を中から温めようと再び乾杯。美山錦を55%まで磨き、朝日水系の中硬度の伏流水を精製して仕込んだ芳醇なしぼりたての生酒は、華やかな吟醸香が程よく立ち上がり、口に含むと原酒ならではのボリュームを備えながらも、トロリとした滑らかな口当たり。ん~ぬくまるのぅ。もう一杯呑みたかったのですが、次なる目的地に向けて出発の時刻が迫っていました。寒中に寒鱈で乾杯したカンカン尽くしの一行が目指す先は? そう、 ぴったしカンカンでお察しの通り、燗酒で乾杯をしに向かったのです。まぁまぁ、「オヤジギャグばっかじゃん!」とカンカンにならずに・・・。つづく

◆ 大山新酒・酒蔵まつり
新酒が出回る時期に催される日本酒好きには堪らないイベント。鶴岡市大山地区の4軒の酒蔵(冨士酒造・加藤嘉八郎酒造・渡會本店・羽根田酒造)ほかを巡る「酒蔵スタンプラリー」では心ゆくまで試飲ができ、酒蔵ならではの限定品も提供。夕刻からは旬の郷土料理を肴に「新酒パーティー」(前売り制)
【開催日】 2008年2月9日(土)
【開催地】 鶴岡市大山各所(各酒蔵・大山商工会館・大山コミュニティセンターほか )
       ※酒蔵スタンプラリー券 500円
【問合せ】 新酒・酒蔵まつり実行委員会事務局(大山商工会内) TEL:0235-33-2117
【URL】  http://www.tsuruokakanko.com/season/fuyu/sake.html


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2008/01/23

宮城ブランド発信フェスティバル

「地域ブランド」創出と発信に向けて

 昨年11月22日(木)に仙台市青葉区の勝山館を会場に「宮城ブランド発信フェスティバル」(主催:河北新報社)が開催されました。この催しは、今年10月から12月にかけて展開される「仙台・宮城デスティネーションキャンペーン」を控え、宮城の魅力創出と発信力強化のヒントを探る目的で開催したものです。当日は、宮城県内の行政・農林水産や商工関係諸団体・地域産品製造業・飲食業・観光関連業などの分野から150名の方々にご参加いただきました。

kaijyou.jpg【PHOTO】行政・諸団体・メーカー・農家・飲食店・ブロガーなど、さまざまな顔ぶれが揃った宮城ブランド発信フェスティバル会場。テーブルごとの自己プレゼンテーションを終えたのち、和気藹々と名刺交換タイム 

ここ数年、一部の大都市圏と地方の格差は広がるばかりです。地域おこしの先駆けとされる「一村一品運動」をかつて提唱したのは、大分県の平松知事でした。関サバ・関アジ・どんこ(シイタケ)・麦焼酎などはこの取り組みから生まれた地域ブランドのスターとして成長しました。平松知事の提唱からすでに四半世紀。300品目以上に及ぶ大分県内の地域ブランド品の年間生産高は1,400億円といわれています。地元を「どげんかせんといかん」という東国原宮崎県知事のトップセールスによる巧みなメディア戦略が世間の注目を集めたのは記憶に新しいところ。これは地域ブランドの魅力を発掘する眼力と発信力を持つことの重要性が、再認識された動きと捉えることができます。地方の生き残りをかけて激化する地域間競争のなか、地元に活力を与える "地域ブランド" が今求められているのです。

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【PHOTO】パネリストお二人の経験に基づく示唆に富んだ提言がなされたトークセミナー「宮城ブランドの作り方」。コーディネーターはワタクシ庄内系イタリア人。"庄内系が宮城ブランドじゃミスキャストじゃん! " と自問自答しつつ、セミナーはいかなる展開をみせたか。詳しくは載録紙面で

 私が前世を過ごしたイタリアは、近世まで都市国家が群雄割拠する集合体でした。そのため、各地方の風土を色濃く反映した特色ある産品や文化遺産が今もイタリア全土に数多く残っています。イタリア人たちは誇りを込めて地元の素晴らしさを語ります。いわば地方が元気な地域ブランドの宝庫と言ってよいでしょう。ひるがえって現世で生を受けた宮城はどうか。全国区レベルで見たとき、"これが宮城ブランドだ! " といえるものがどれだけあるでしょう? 地域資源をいかに活かせば、原石は輝きを放つ宝石へと変わるのか? この問いかけから今回の催しはスタートしました。

 開催に先立ち、おのが姿を客観的に把握するため、「宮城ブランド」に関する現状認識を探る事前アンケートを実施しました。その結果をご紹介すると-

Q1:宮城ブランドとして連想するものは?
A:ササニシキ・ひとめぼれなどの宮城米 / 農産物・水産物などの一次産品の食材 / 牛タン / 食材王国みやぎ / 笹かまぼこ / ずんだ / 冷やし中華 / 萩の月 / 仙台 / 杜の都 / 伊達政宗 / 松島 / 三陸 / 光のページェント
Q2:そのキーワードが浮かんだ理由は?
A:(抜粋)
  • 米どころのイメージ。以前、県外にいた頃「宮城のコメはうまい」と刷り込まれた
  • 日本の食糧基地。長い時間をかけてブランド構築された良質な農林水産物
  • 農林水産物を用いた加工製品が豊富。食は生活の基本。常に身近かなもの
  • サンマ水揚げ日本一の気仙沼、寿司の町 塩釜。牡蠣・ホヤ・フカヒレなど海の幸
  • 食に限らず「素材」の良さ。一方で活かし方、活かせる人が決定的に不足している
  • 「食材王国みやぎ」。県産食材ブランド化の動きがあるが、流通現場の実際は?
  • 「杜の都」仙台が宮城全体のイメージ

Q3:宮城ブランドの発信力を100点満点で評価すると、現状は何点?
 A:平均51点 (最高100点・最低10点)

Q4:その点数をつけた理由は?
 A:◇51点以上の方(抜粋)
  • 皆それぞれに頑張っているが、打ち出しの弱さと強力なリーダーシップが欠けている
  • 牛タン・笹かまぼこなど、多種多様だが、ポイントが分散している
  • 食に関してはまあまあだが、他には思い浮かばない。全国区におけるイメージの弱さ
  • 対外的に情報の発信量が少なく、幅も狭い。生産者視点での情報発信があってもよい
  ◇50点以下の方(抜粋)
  • よそでは「宮城」ではピンとこない。「仙台」ならば通じる。全国ブランドは笹かまぐらい
  • 原材料が非地場産...牛タン:米国・豪州/笹かま:外洋の白身魚/ずんだ:ほぼ輸入品
  • 素材の良さを充分伝えきれていない。物作りだけで、流通・販売に対応できていない
  • 作り手側・発信側の熱意や危機意識を感じない
  • 知名度のある「仙台」と「それ以外」という感じ

kichoukouen-1.jpg 【PHOTO】町づくりにかける熱い情熱は郷土村上を愛すればこそ。「味匠 喜っ川」吉川 真嗣 専務の基調講演「新潟村上の鮭料理とまちづくり、そして地域ブランドづくり」

 この結果から、素材には恵まれているものの、米以外には全国区ブランドが少なく、いまひとつ顔が見えない宮城の現状が見て取れるのではないでしょうか。そこで地域資源を活かして地元活性化に結びつけた事例として、新潟県村上市の取り組みをお知らせしたいと私は考えました。鮭のまち村上については、当「あるもん探しの旅」で既にご紹介した通りです【Link to back number '07.11/18 '07.11/21 】。鮭と町屋・雛人形・屏風など、地元にあるものに光を当て、城下町の落ち着いた町並みを舞台にしたイベントで多くの人々を呼び寄せることに成功した村上の町づくり。その仕掛け人「味匠 喜っ川」の吉川 真嗣 専務に「新潟村上の鮭料理とまちづくり、そして地域ブランドづくり」と題する基調講演を頂きました。1 時間におよぶ講演の中で語られたのは、戦後一度は廃(すた)れかけた地域の伝統食「鮭料理」の復活にかけた真嗣氏の父・哲鮭氏の気概と継続することの大切さ。さらに当初は誰も価値を認めなかった町屋造りの商家や雛人形、城下町らしい黒塀の家並みなどに光を当てた真嗣氏の取り組みでした。喜っ川 伝統の「塩引き鮭」と真嗣氏が現代的な感覚を盛り込んで生み出した新製品「鮭の生ハム風味」を試食しながら、たった一人で行動を起こした吉川氏の「一歩前に出る勇気を持つこと」という言葉に背中を押された方が多かったように見受けました。

 さまざまな業種の方たちが一堂に会したこの集い。テーブルごとに各自60秒の持ち時間による自己プロフィール紹介をして頂きました。主催者としては、このフェスティバルが新たな人的ネットワーク構築のきっかけになれば、という思いがありました。そのため、なるべく多くの方と名刺交換をしていただけるよう、テーブル対抗で集めた名刺の枚数を競うアトラクションも実施しました。初対面同士で初めは硬かった各テーブルの雰囲気が和んだところで、第二部のトークセミナーへと移行、そこからは自作自演でコーディネーター役を私が務めました。「肩のこらない雰囲気で進めよう」という狙いから、旬の宮城県産食材を使ったお料理を召し上がって頂きながら進行したのですが、夜の集いということで、アルコールをお出ししたのが裏目に出ました。会場が一気に盛り上がった反面、どうも肝心のセミナーの内容が聞き取りにくかったようです。目の前のテーブルで場を盛り上げようとセミナーそっちのけで盛り上がる我が上司。これも宴席慣れした営業の悲しい性(サガ)とはいえ、主催者としては反省しております。m(_ _)m



miwasan.jpgooshidasan.jpg【PHOTO】宮城の地域ブランド開発と発信に向けたヒントを語る ㈱FMS綜合研究所 代表取締役 三輪宏子 氏(左) とブレイントラスト アンド カンパニー㈱代表取締役 大志田 典明 氏(右)



このトークセミナー「宮城ブランドの作り方」には、お二人のパネリストにご登場願いました。マーケティング・コンサルタントとして、東北地域の中小企業支援と店舗・ブランド開発に取り組んでおられるブレイントラスト アンド カンパニー㈱代表取締役社長 大志田 典明 氏と、宮城県などが出資し「食材王国みやぎ」の商品・流通開発を手がける㈱FMS綜合研究所 代表取締役社長 三輪 宏子 氏です。三輪氏が地元の人間が地場産品の良さに気付き、魅力を対外的に発信することの重要さを説く一方、大志田氏は伝統的な産品に時代のニーズに即応した付加価値をつけてキチンと魅力を発信する必要性をokumatsushimadisera.jpgアピール。ひとつの地域ブランドを生み出すには、生産者や加工業者・パッケージデザイン・流通・情報発信者など、さまざまな立場の人たちが横の連携を深めてこそ、対外的なブランド力が強化するとも指摘しました。三輪氏が手掛けたブランド「宵の奥松島」は、日頃は接点のない塩釜・石巻・東松島地域の農家や加工業者らがひとつのブランド作りという共通の目標に向かって取り組んだ成果なのです。

【PHOTO】こだわりの宮城県産食材を統一ブランドで製品化した「宵の奥松島」。商品開発に関わった加工業者やササニシキ麺を店で提供する飲食店オーナーが壇上に招かれ、「地元の人たちにこそまず食べて欲しい」と紹介された

 当日の模様は同年12月20日(木)付 河北新報の載録紙面でお伝えしました。年末年始の繁忙期を挟んだために、当「あるもん探しの旅」で当日の模様をご紹介できるまでに二ヶ月もの時間が経過してしまいました。紙面を見逃した方にもご覧願いたい内容ですので、改めて載録紙面をここにアップします。

こちらからどうぞ
 

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2008/01/15

寒鱈汁は怒涛のうまさ

冬こそ庄内へ!! こばえちゃ「寒鱈まつり」

mare_giappone.jpg【Photo】次々と押し寄せては岩礁に砕け散る荒波。まるで東映映画のオープニングを観ているかのよう。厳しい冬の表情を見せる鉛色の日本海。R7 鶴岡市波渡岬付近

 厳冬期の庄内浜。灰色の雲が低く垂れ込める空の下、岩に砕けた高波は強風にあおられ浪の華となって舞い飛びます。防波堤を乗り越えた荒波は港に停泊した漁船を弄ぶかのように揺らします。「この時化(シケ)じゃ、タラ漁は休漁だ」。

 そんな考えが頭をよぎると、とある演歌のフレーズが浮かんできませんか? "♪ 波の谷間に 命の花が~、ふたつ並んで 咲いている~" そう、ここは鳥羽一郎の「兄弟船」をBGMにすると世界に浸れますよー。((-.- = -.-))〃ソンナコト、ナイナイ) ハイ、ご一緒にぃ "♪ 兄弟船は 真冬の海へ 雪の簾をくぐって進む、 熱~いこの血は~ 親父譲りだぜぃ..." くぅ~、シビレルのぅー。

 押し寄せる日本海の怒涛を前にすると、荒海に立ち向かう男の歌に妙にラテンの血が騒ぐ自分。波間を舞い飛ぶウミネコは風にあおられ右往左往。
"♪ ヒュルリー、ヒュルリララ~"(⇒こりゃ冬のツバメの歌でしたっけね ?(゚~゚)ヾ

 さっ、気を取り直してと・・・

fiore_di_onda.jpg【Photo】荒波が岩に砕けてできるフワフワとした浪の華が岩肌にびっしりと貼り付く。肌を刺す冷たい北西からの強風に煽られた浪の華が目の前を舞ってゆく。R7 鶴岡市波渡岬付近

 霰(あられ)混じりの雪と北西の季節風が吹き荒れる1月から2月にかけては、日本海が最も荒ぶる季節。たとえ一昨年のような記録的な豪雪であっても、高い雪の壁ができる月山道路や、水墨画の世界と化す最上川沿いの凍結したR47を越えてでも、美味の宝庫庄内を目指す庄イタ。それは寒さが一番厳しい季節にこそ、その地でしか味わえないものがあるから。

 その筆頭格が、凍てつく冬の日本海の恵み、寒鱈を味噌で煮込んだ「寒鱈汁」。二十四節気で最も寒さが厳しいとされる大寒の頃(1月20日頃)、脂が乗って丸々と太った真ダラを庄内では「寒鱈」と称して尊びます。

nezugasekikanndara.jpg【Photo】粘液で覆われヌラヌラとした肥満体。水圧変化によって飛び出した目玉。こんなオジサンは世の女性たちから疎まれそうだが、寒鱈にとってはコレが男前の条件。宝石のごとくテラテラと輝く白子、滋養が詰まった肝臓。うまいんだ、コレがっ!

 北海道から東北一円にかけてが、おもな漁場となるマダラ。なかでも日本一の高値を付けるのが庄内浜で揚がる寒鱈だとされます。例えば、三陸産のマダラは白子が入った10キロ近い大型のオスでも5,000円ほどですが、日本海の荒波に揉まれた庄内浜の寒鱈は大型のオスともなると、ゆうに20,000円を超える値が付きます。かつては醤油漬けにして温かいご飯にのせて食べるタラコを持つメスのほうが価値があったのだそう。現在では、男女の地位が逆転し(?)、メスはオスの半値ほど。

 タラというと、鱈ちり鍋などの比較的淡白な料理を連想するかもしれませんが、身が締まった寒鱈を使った寒鱈汁は全くの別物。胴(白身)とガラ(白身以外のアラ)を余すところなく使うことから、「ドンガラ汁」とも呼ばれます【注】。身と内臓をブツ切りにし、ヒレやエラ、中骨と共に煮込む漁師料理が原型とされる豪快な冬の庄内の味覚です。

tarajiru.jpg【Photo】厳しい冬の日本海の恵み寒鱈汁。体の芯まで温まる

 重低音の海鳴りを伴った時化が収まった深夜2時過ぎ。鶴岡市の由良漁港や鼠ヶ関漁港からは、真っ暗な港を次々とタラ漁の漁船が沖合い10~20km付近の「鱈場」と呼ばれる漁場へ出港してゆきます。狙い目は水深200~300m付近にいる産卵を控えた真ダラ。主流となるのは底曳網漁で、延縄(はえなわ)を用いた漁も行われています。延縄漁師が狙うのは、水深300mより深い海底近くにいる底生魚です。海底付近では、年間を通して氷温に近い海水温度が保たれています。底曳網で一網打尽にされる寒鱈よりも、延縄で一尾ずつ釣り上げられる寒鱈のほうが、魚体を保護する表面のぬらぬらとした粘膜が残されたまま揚がるため、より傷みが少なく上物とされます。

 もともと大食漢のタラは、多量の消化酵素を持つことで消化・吸収を行っています。真鱈は海中では消化酵素の活動が抑制される低温域に生息する魚。それが船上に揚がると、自身が持つ多量の酵素が活性化し、魚体の傷みが一気に進むのです。そのため、漁獲したタラは速やかに氷詰めにされ、鮮度維持に細心の注意を払って港へと運ばれます。タラの旬となる1月は海が時化ることが多く、希少性が高い「由良産の寒鱈」はひときわ威光を放つブランドとして地元で定着しています。

mizuage.jpg【Photo】鮮度が命の寒鱈は、水揚げされると直ちに氷詰めされた発泡スチロールの箱に入れられ港まで運ばれる。鼠ヶ関漁港にて

 真ダラは産卵期が近くなると、「鱈腹食べる」の由来となった旺盛な食欲に拍車がかかります。タラは一般に広範囲な回遊はせず、寒帯から亜寒帯にかけての水深300mよりも深い深海域に生息する魚。エサが少ない深海域にいるタラは、大きな口と体長の1/3以上を占める巨大な胃に手当たり次第にエサとなるイカ・タコ・貝・小魚・ゴカイなどはおろか、海底の石までも飲み込みます。そうして摂りこんだ栄養は肝臓に蓄えられ、ぷっくりと膨らんだメタボな体型を形作るのです。ビタミンを豊富に含む「アブラワタ」(肝臓)は寒鱈汁の味に深みを与える立役者となります。コリコリとした胃袋やエラに加えて「タダミ」(酒田)「タヅ」(鶴岡)と呼ばれる白子のまったりとした食感が堪りません。

kandarajirutsuruoka.jpg【Photo】鶴岡・日本海寒鱈まつり「商店街婦人部」の出店で出される寒鱈汁。例年、アブラワタと酒粕をたっぷりと用いた濃厚な味付けで、身も心も暖めてくれる私のお気に入りのひとつ

 寒鱈汁に欠かせないのが、雪が舞って海水温が下がると波打ち際の岩場に密生することから「雪海苔」ともいわれる「岩海苔」です。寒鱈の漁期と岩海苔の収穫期は12月から2月にかけてと重なり、ともに寒ければ寒いほど味が良くなるとされます。寒風吹きすさぶ波打ち際でしぶきを浴びながらかじかむ手で岩海苔を手摘みする作業は、ことのほか重労働。凍てつく海へと漁に出る男衆と岩海苔を摘む女性たち。寒鱈汁は、冬の苛酷な自然と向き合う庄内の人々が生み出した、海の恵みを余すところなく使った郷土料理にほかなりません。

kandarafes_Tsuruoka.jpg【Photo】多くの人出で賑わう'07年の「鶴岡 日本海寒鱈まつり」会場。毎年およそ2万人分が用意される寒鱈汁に舌鼓を打つ。「平成18年豪雪」と気象庁が命名した厳しい前年の冬から一転、穏やかな陽気のもとで寒鱈まつりが開催されたこの年。鯉のぼりならぬダンダラ模様の「寒鱈のぼり」(写真奥)を眺めながら、「こうも暖冬じゃ"暖ダラまつり"じゃん!」とひとり突っ込みを入れるのだった

kandarafes_sakata.jpg【Photo】鶴岡の翌週に開催される「酒田 日本海寒鱈まつり」会場のひとつ、中通り商店街にて。鶴岡と同様にテント張りの出店ごとに味付けが異なるため、ハシゴして好みの寒鱈汁を探すのも楽しい。会場では、寒鱈の解体実演やお楽しみ抽選会もあり、この日は「すし券」を見事ゲット。寒鱈汁を満喫ののち、市内日吉町の寿司屋へと繰り出した。ゲプッ・・(失礼) 
 
 平成の世を迎えた頃から、遊佐・酒田・鶴岡・温海など庄内各地で「寒鱈まつり」が開催されるようになりました。寒鱈汁は、味噌ベースの出汁に酒粕を混ぜ、鱈のほか家庭によって具にネギや大根、豆腐などを加えるので、味付けが家ごとに異なります。居並ぶ出店からは、鍋から立ち上る湯気と共に濃厚でおいしそうな寒鱈汁の香りが漂ってきます。底冷えする屋外でハフハフさせながら頂く寒鱈汁はまた格別。口直しには青菜漬で包んだ味噌おにぎりを炭火で焙った香ばしい「弁慶めし」をどうぞ。アツアツの寒鱈汁には、何と言っても地元庄内の燗をつけた日本酒が良く合います。左党の方には、鶴岡「雪見昼御膳」【click!】や酒田「地酒フェア冬の膳」【click!】もまた一興。藩政時代からの酒どころ鶴岡・大山の蔵元や、酒田の蔵元のしぼりたて新酒と寒鱈汁をはじめとする料亭の味がセットで楽しめるという欲張りな企画です。"寒鱈汁はおいしそうだけど、寒いのは苦手"というネコ科の方には、屋内で頂ける由良や遊佐の寒鱈まつりをオススメします。地元の寒鱈汁通に言わせると、観光客向けに白身を多く入れる上品な寒鱈汁では物足りないのだとか。野菜や豆腐を入れず、ガラがたくさん入る由良のドンガラ汁こそダイナミックな漁師料理としての寒鱈汁本来の味がするといいます。 しかし、威勢の良い声が飛び交い、いくつもの出店が立ち並ぶ鶴岡・酒田の寒鱈まつりには、さまざまに食べ比べる楽しさもあります。

【Photo】 ガラからとれるダシが合わせ味噌の味にコクを与え、具はアラが多く入った寒鱈と岩海苔だけ。地元の支持が高い「由良寒鱈まつり」の寒鱈汁は、これぞ「ドンガラ汁」と呼びたい磯の香漂う味わい

 遊佐まで足を伸ばせば、寒鱈に福を呼び込むクサフグを加えた「鱈ふく汁」を頂けます。いずれも地元のどんがら汁ファンに観光客も少なからず加わるので、昼前に早く行かないと、売り切れ (TT)なんてことにもなりかねませんよー。
 では、会場でお会いしましょう。こばえちゃ(庄内弁で「来ればいいのに」「いらっしゃい」の意)、寒鱈まつり !


2008年寒鱈まつり概要 
▼鶴岡 日本海寒鱈まつり
【開催日】 2008年1月20日(日)午前10時30分~午後3時
【開催地】 鶴岡銀座商店街 特設会場
        ※寒鱈汁:当日500円 前売券:1,000円(1,050円分の商品券)
【問合せ】 鶴岡銀座商店街振興組合 TEL:0235-22-2202
【URL】 http://www.tsuruokakanko.com/season/fuyu/kandara.html

▼鱈ふくまつり
【開催日】2008年1月20日(日)午前10時30分(受付開始)~午後2時
【開催地】遊佐町 吹浦西浜 ふれあい広場(マルチドーム「ふれんどりぃ」)
       ※鱈ふく汁:当日600円(抽選券付)前売券:1,200円(抽選券付)
【問合せ】 遊佐鳥海観光協会  TEL:0234-72-5666
【URL】 http://www.town.yuza.yamagata.jp/

▼酒田 日本海寒鱈まつり
【開催日】2008年1月26日(土)27日(日)午前10時30分~午後3時30分
【開催地】中町モール・中通り商店街・さかた海鮮市場・JR酒田駅前広場・中町交流ひろば
      ※寒鱈汁:当日500円 前売券:1,200円(寒鱈汁券2枚、お楽しみ券2枚、抽選券1枚)
【問合せ】 酒田観光物産協会 TEL:0234-24-2233
       酒田市観光物産課 TEL:0234-26-5759
【URL】 http://www.sakata-kankou.gr.jp/matsuri/kandara/index.html

▼由良寒鱈まつり
【開催日】2008年1月27日(日)午前10時30分(受付開始)~午後1時30分
【開催地】鶴岡市フィッシングセンター(由良自治会隣り)
      ※寒鱈汁:500円(限定800食)
【問合せ】 由良寒鱈まつり実行委員会(由良自治会内) TEL:0235-73-4141
       鶴岡市農山漁村振興課 TEL:0235-25-2111(内線558)
【URL】 http://www.city.tsuruoka.lg.jp/050200/page1816.html

▼しゃりん寒鱈まつり
【開催日】2008年2月3日(日)午前10時(受付開始)~完売まで
【開催地】鶴岡市早田 道の駅あつみ「しゃりん」
      ※寒鱈汁400円(限定500食)
【問合せ】 鶴岡市温海庁舎 産業課観光商工班 TEL:0235-43-4617
【URL】 http://www.city.tsuruoka.lg.jp/901500/page303.html

さて、今年は何処へ? (いずれもなくなり次第終了)

【注】 「ドンガラ汁」は元来、魚のアラを使った汁物一般を指す。なかでも寒鱈を用いた寒鱈汁は横綱格。ここ数年、さまざまな味付けで寒鱈汁を振舞う「寒鱈まつり」が冬の庄内の観光資源として定着して以来、「ドンガラ汁」イコール「寒鱈汁」を指す場合が多い。鱈を使った汁物料理は、ほかに青森県津軽地方周辺の「じゃっぱ汁」、秋田県男鹿半島周辺や宮城県南三陸町志津川の「ざっぱ汁」なども。味噌仕立てのほか「しょっつる」味や塩味にするなど、地域によって味付けや材料とする魚が鮭や鯛だったりとさまざま。酒田でも塩味・酒粕仕立ての「新寒鱈汁」が3年前から登場した

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2008/01/07

すったもんだのお年越し

決死の潜入レポートinナポリ

【PHOTO】放送作家の鶴田 純也氏(写真右奥)が持参した北イタリアのProdotto tipico(=典型的な産品)のひとつ蕎麦パスタ「ピッツォッケリ・デッラ・ヴァルテリーナ」
 
 多分にイタリアナイズされた我が食生活ですが、大晦日には今年も年越し蕎麦を頂きました。喉越しも味わいのうちのこの縁起ものを頂く場合は、威勢良くズズズ~と大きな音を立てるのが流儀。堅苦しいテーブルマナーには寛容なイタリアですが、ロングパスタを頂く場合だけは、そこがイタリアだろうと日本だろうと音を立ててススるのはやめましょう。周囲から顰蹙を買うこと請け合いですので。    ┏ (・||| ・) ヾ(- _ -;)

 北イタリアの山岳地帯では、寒冷な気候と痩せた土地でも育つ Grano saraceno グラーノ・サラチェーノ(=ソバ)がニョッキなどのパスタ料理やポレンタで食べられています。ソバを使ったポレンタと聞くと、日本人はちょっと緩めの「蕎麦掻き」を連想してしまいますね(笑)。

 朝日放送制作の「上沼恵美子のおしゃべりクッキング」や季刊「四季の味」でエッセイ「おやつの時間」を手掛ける放送作家の鶴田 純也 氏とピエモンテで合流した際に、鶴田氏がスイス国境に程近いロンバルディア州最北部ソンドリーノ県 Prata Camportaccio プラータ・カンポルタッチョで買ったという乾燥パスタ「Pizzoccheri della Valtellina ピッツォッケリ・デッラ・ヴァルテリーナ」を持参されました。

 スイス国境にほど近い4,000m級の山々が連なるヴァルテリーナ渓谷では、山の南斜面で栽培されるブドウの間や、小麦が育たない狭小な平地の耕作地でソバが栽培されているのです。幅1cm 長さ5cmほどの平面状のパスタ、ピッツォッケリは、山あいで採れるジャガイモやサヴォイアキャベツなどの野菜と共に食べられます。

Valtellina-Panorama.jpg 【PHOTO】ソンドリーノ県 Castello dell'Acqua カステッロ・デッラ・アックアの風景。ともにソバが栽培される松本市や山形市周辺とこのヴァルテリーナ渓谷は、さして景色が変わらない

 ピエモンテ州の北、スイス・フランスに国境を接するイタリア最小の州ヴァッレ・ダオスタや、ドロミテ渓谷の山あいにある前回登場したBolzano ボルツァーノ、Trento トレントなどアルト・アディジェ地域では、Gocchi di grano saraceno (=ソバのニョッキ)が家庭料理としてはポピュラー。グラーノ・サラチェーノが育つ風景は、どこかしら信州や山形などの蕎麦どころと相通じるとは思いませんか? 適地適作は世の東西を問わないのです。

 「細く長く達者に暮らせるように」と、縁起を担ぐ年越し蕎麦は日本の年越しに欠かせません。蕎麦切りを大晦日に食べる理由には、その年の災厄を断ち切るという意味や、鶴鶴亀亀(つるつるかめかめ)で縁起が良いなど、後付けでこじつけたと思われるものもありますよね。年越し蕎麦で災厄を断ち切り、人間が抱える108の煩悩を消し去る除夜の鐘で新年を迎える厳(おごそ)かな日本の年越しは至って静かなもの。なぜか大晦日の定番となりつつある格闘技中継でエキサイティングな憂さ晴らしをするか、"歌手の衣装"と呼ぶよりも、むしろ数億を費やした"歌手が組み込まれた舞台セット"に呆れるかは皆さんのお好みで。

s-capodannoauguri.jpg【PHOTO】カポダンノを祝うコンサートで大いに盛り上がる「Piazza del Plebiscito プレビシート広場」。ド派手に花火を打ち上げて新年を祝うのがナポリ式

 la notte di San Silvestro (=大晦日)にその年の厄を落とすやり方が過激なのは、南イタリア随一105万人の人口を擁するナポリにとどめを刺します。イタリアに限らず、ヨーロッパでは大晦日に花火を上げて新年のお祝いをします。なかでもイタリアの花火は、熱いラテンな国民性を反映してか、他の国よりもかなり派手。特にナポリのそれは美しさを愛でる花火というよりも、Petardo(=爆竹)や、Cipolla(=丸い形状から、「玉ネギ」を指すこの名で呼ばれる小型爆弾と呼ぶべき派手な爆音を発する花火)が主役です。街角に立つ屋台で売られる花火・爆竹の中には粗悪品が混じっており、暴発で指が吹き飛んだとか、興奮した不心得者が発砲した銃の流れ弾で死者が出るなどの騒ぎが夜を徹して繰り広げられます。 

s-hanabistand.jpg【PHOTO】露地の屋台で売られる花火。ロケット花火や爆竹はナポレターノたちの熱いラテンのハートにも火をつける

 ナポリのPalazzo Reale (=王宮)に隣接するPiazza del Plebiscito プレビシート広場では、毎年ナポリ市主催の年越しイベントが行われ、5万もの人々が屋外コンサートでCapodanno カポダンノ(=新年)の到来を待ちます。「Capodanno まであと何分」とカウントダウンが始まる頃には、夜空を焦がす花火も一段と増え、会場ではチンクエ(5)・クアットロ(4)・トレ(3)・ドゥエ(2)・ウーノ(1)、Auguri ! (おめでとう!)と皆が唱和、新年の幕開けと共にスプマンテで乾杯します。広場を半円状に囲む柱廊をもつ Chiesa di San Francesco di Paola サン・フランチェスコ・ディ・パオラ教会の鐘が鳴り出します。すると興奮は最高潮に達し、スプマンテの瓶を叩き割ったり、爆竹を入れた小瓶を炸裂させたりと、やりたい放題。これぞナポリの真骨頂!! と、その場の殺気立った雰囲気を楽しめるあなたは私のお仲間です。

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【PHOTO】ナポリの夜空を明るく染める花火は新年の到来を賑やかに告げる。遠目には美しい光景だが、町に繰り出すにはそれなりの覚悟が必要。「ナポリを見て死ね」にならぬよう・・・

s-ilmattinonapoli.jpg【PHOTO】毎年恒例となったCapodanno におけるナポリの騒乱ぶりを一面トップで伝える地元IL MATTINO

 今年はどうなることかと思っていましたが、案の定この大晦日もナポリ市内で45名、ソフィア・ローレンの故郷ポッツオーリからソレント半島、イスキア島・カプリ島を含む一帯のナポリ県で40名の死傷者が出ています。それもそのはず、建物の窓やバルコニーからロケット花火が発射され、火がついた爆竹が下の通りに投げ捨てられるのですから。誰かが下を歩いていようと知ったこっちゃありません。ナポリ市民は、決して大晦日の夕方以降は不要不急の外出はしないのですが、家の中にいても必ずしも安全とはいえません。

bomba.jpg 火薬の匂いが立ち込め、Cipolla の炸裂音が窓を揺るがすカポダンノのナポリは戦場さながら。興奮した誰かが放った銃の流れ弾で今年は家族とのカード遊びに興じていた30代の男性が死亡。更に頭に流れ弾を受けた10歳の子どもが命を落としました。カモッラ(ナポリのマフィア)が介在するといわれる銃の密売や、安全基準を満たさない花火による事故が絶えないため、警察もそれらの押収に躍起になっていますが、いたちごっこで根絶は難しいようです。

【PHOTO】押収された違法花火

s-CAPODANNONAPOLIFIRE!.jpg【PHOTO】火薬の匂いと燃え上がるゴミ。煙に顔をしかめるナポリのスィニョーラ

 普段は路上駐車の車で溢れ返るナポリの市街地が、大晦日の午後になると路上に停まっていた車がいなくなります。何故か? 花火で車が燃えないよう避難させるから、という理由に加えて、ナポリには大晦日の夜に窓から不要なゴミを捨てる悪しき習慣があるのです。ゴミと言ってもいろいろで、ポリ袋に入った家庭ごみはもちろんのこと、粗大ゴミも含まれるというから穏やかではありません。何も知らずに夜に外出でもしようものなら、さあ大変。上から壊れた冷蔵庫や家具が落ちてくるのです。過去には不幸にも粗大ゴミにぶつかって死者が出たこともあるのだとか。現在は危険だというので法律で禁止された行為ですが、なにせそこはナポリ。日本では一般化したコンプライアンスという言葉と法令遵守の精神は彼らには理解できなのかもしれません。ゴミの山に投げ込まれる爆竹で、市内各所のゴミ集積場からは火の手が上がります。

rifiuti.jpg 【PHOTO】Rifiuti,la guerra di pianura (=ゴミ、地上戦だ)の見出しが躍るIL MATTINO 紙。燃え盛るゴミを尻目に夜を徹して回収作業に当たるナポリ市のゴミ処理業者

 そうしてすったもんだの一夜が明けた後に残されるのが大量のゴミ。残り火がくすぶる一部のゴミ置き場からは、まだ煙が上がっています。路上には爆竹や花火の残骸が落ちています。観光客が訪れる市内中心部は清掃車が夜半にゴミを回収しますが、周辺部まではとても手が及びません。自前の処理施設を持たないナポリ市では、通常ゴミを地中に埋め立て処理をします。しかし一晩で大量廃棄されるカポダンノのゴミは、そうはいきません。しばらく放置された後、一部はわざわざ列車で環境先進国ドイツに運ばれて分別の上、焼却処分されるといいます。

NEWYEAR.jpg【PHOTO】正月の朝のナポリ。夜通し騒いだナポレターノたちはベッドの中にいるため、人通りはまばら。かわりに目に付くのは宴のあとのゴミの山ばかり

 血の気が多いナポリは極端な例ですが、厳かなクリスマスの後で賑やかに新年を迎えるイタリア。クリスマスの喧騒に浮かれた後で、しっとりとした年越しを迎える日本の正月。
あなたならどちらがいいですか?

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