あるもの探しの旅

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寒鱈汁は怒涛のうまさ

冬こそ庄内へ!! こばえちゃ「寒鱈まつり」

mare_giappone.jpg【Photo】次々と押し寄せては岩礁に砕け散る荒波。まるで東映映画のオープニングを観ているかのよう。厳しい冬の表情を見せる鉛色の日本海。R7 鶴岡市波渡岬付近

 厳冬期の庄内浜。灰色の雲が低く垂れ込める空の下、岩に砕けた高波は強風にあおられ浪の華となって舞い飛びます。防波堤を乗り越えた荒波は港に停泊した漁船を弄ぶかのように揺らします。「この時化(シケ)じゃ、タラ漁は休漁だ」。

 そんな考えが頭をよぎると、とある演歌のフレーズが浮かんできませんか? "♪ 波の谷間に 命の花が~、ふたつ並んで 咲いている~" そう、ここは鳥羽一郎の「兄弟船」をBGMにすると世界に浸れますよー。((-.- = -.-))〃ソンナコト、ナイナイ) ハイ、ご一緒にぃ "♪ 兄弟船は 真冬の海へ 雪の簾をくぐって進む、 熱~いこの血は~ 親父譲りだぜぃ..." くぅ~、シビレルのぅー。

 押し寄せる日本海の怒涛を前にすると、荒海に立ち向かう男の歌に妙にラテンの血が騒ぐ自分。波間を舞い飛ぶウミネコは風にあおられ右往左往。
"♪ ヒュルリー、ヒュルリララ~"(⇒こりゃ冬のツバメの歌でしたっけね ?(゚~゚)ヾ

 さっ、気を取り直してと・・・

fiore_di_onda.jpg【Photo】荒波が岩に砕けてできるフワフワとした浪の華が岩肌にびっしりと貼り付く。肌を刺す冷たい北西からの強風に煽られた浪の華が目の前を舞ってゆく。R7 鶴岡市波渡岬付近

 霰(あられ)混じりの雪と北西の季節風が吹き荒れる1月から2月にかけては、日本海が最も荒ぶる季節。たとえ一昨年のような記録的な豪雪であっても、高い雪の壁ができる月山道路や、水墨画の世界と化す最上川沿いの凍結したR47を越えてでも、美味の宝庫庄内を目指す庄イタ。それは寒さが一番厳しい季節にこそ、その地でしか味わえないものがあるから。

 その筆頭格が、凍てつく冬の日本海の恵み、寒鱈を味噌で煮込んだ「寒鱈汁」。二十四節気で最も寒さが厳しいとされる大寒の頃(1月20日頃)、脂が乗って丸々と太った真ダラを庄内では「寒鱈」と称して尊びます。

nezugasekikanndara.jpg【Photo】粘液で覆われヌラヌラとした肥満体。水圧変化によって飛び出した目玉。こんなオジサンは世の女性たちから疎まれそうだが、寒鱈にとってはコレが男前の条件。宝石のごとくテラテラと輝く白子、滋養が詰まった肝臓。うまいんだ、コレがっ!

 北海道から東北一円にかけてが、おもな漁場となるマダラ。なかでも日本一の高値を付けるのが庄内浜で揚がる寒鱈だとされます。例えば、三陸産のマダラは白子が入った10キロ近い大型のオスでも5,000円ほどですが、日本海の荒波に揉まれた庄内浜の寒鱈は大型のオスともなると、ゆうに20,000円を超える値が付きます。かつては醤油漬けにして温かいご飯にのせて食べるタラコを持つメスのほうが価値があったのだそう。現在では、男女の地位が逆転し(?)、メスはオスの半値ほど。

 タラというと、鱈ちり鍋などの比較的淡白な料理を連想するかもしれませんが、身が締まった寒鱈を使った寒鱈汁は全くの別物。胴(白身)とガラ(白身以外のアラ)を余すところなく使うことから、「ドンガラ汁」とも呼ばれます【注】。身と内臓をブツ切りにし、ヒレやエラ、中骨と共に煮込む漁師料理が原型とされる豪快な冬の庄内の味覚です。

tarajiru.jpg【Photo】厳しい冬の日本海の恵み寒鱈汁。体の芯まで温まる

 重低音の海鳴りを伴った時化が収まった深夜2時過ぎ。鶴岡市の由良漁港や鼠ヶ関漁港からは、真っ暗な港を次々とタラ漁の漁船が沖合い10~20km付近の「鱈場」と呼ばれる漁場へ出港してゆきます。狙い目は水深200~300m付近にいる産卵を控えた真ダラ。主流となるのは底曳網漁で、延縄(はえなわ)を用いた漁も行われています。延縄漁師が狙うのは、水深300mより深い海底近くにいる底生魚です。海底付近では、年間を通して氷温に近い海水温度が保たれています。底曳網で一網打尽にされる寒鱈よりも、延縄で一尾ずつ釣り上げられる寒鱈のほうが、魚体を保護する表面のぬらぬらとした粘膜が残されたまま揚がるため、より傷みが少なく上物とされます。

 もともと大食漢のタラは、多量の消化酵素を持つことで消化・吸収を行っています。真鱈は海中では消化酵素の活動が抑制される低温域に生息する魚。それが船上に揚がると、自身が持つ多量の酵素が活性化し、魚体の傷みが一気に進むのです。そのため、漁獲したタラは速やかに氷詰めにされ、鮮度維持に細心の注意を払って港へと運ばれます。タラの旬となる1月は海が時化ることが多く、希少性が高い「由良産の寒鱈」はひときわ威光を放つブランドとして地元で定着しています。

mizuage.jpg【Photo】鮮度が命の寒鱈は、水揚げされると直ちに氷詰めされた発泡スチロールの箱に入れられ港まで運ばれる。鼠ヶ関漁港にて

 真ダラは産卵期が近くなると、「鱈腹食べる」の由来となった旺盛な食欲に拍車がかかります。タラは一般に広範囲な回遊はせず、寒帯から亜寒帯にかけての水深300mよりも深い深海域に生息する魚。エサが少ない深海域にいるタラは、大きな口と体長の1/3以上を占める巨大な胃に手当たり次第にエサとなるイカ・タコ・貝・小魚・ゴカイなどはおろか、海底の石までも飲み込みます。そうして摂りこんだ栄養は肝臓に蓄えられ、ぷっくりと膨らんだメタボな体型を形作るのです。ビタミンを豊富に含む「アブラワタ」(肝臓)は寒鱈汁の味に深みを与える立役者となります。コリコリとした胃袋やエラに加えて「タダミ」(酒田)「タヅ」(鶴岡)と呼ばれる白子のまったりとした食感が堪りません。

kandarajirutsuruoka.jpg【Photo】鶴岡・日本海寒鱈まつり「商店街婦人部」の出店で出される寒鱈汁。例年、アブラワタと酒粕をたっぷりと用いた濃厚な味付けで、身も心も暖めてくれる私のお気に入りのひとつ

 寒鱈汁に欠かせないのが、雪が舞って海水温が下がると波打ち際の岩場に密生することから「雪海苔」ともいわれる「岩海苔」です。寒鱈の漁期と岩海苔の収穫期は12月から2月にかけてと重なり、ともに寒ければ寒いほど味が良くなるとされます。寒風吹きすさぶ波打ち際でしぶきを浴びながらかじかむ手で岩海苔を手摘みする作業は、ことのほか重労働。凍てつく海へと漁に出る男衆と岩海苔を摘む女性たち。寒鱈汁は、冬の苛酷な自然と向き合う庄内の人々が生み出した、海の恵みを余すところなく使った郷土料理にほかなりません。

kandarafes_Tsuruoka.jpg【Photo】多くの人出で賑わう'07年の「鶴岡 日本海寒鱈まつり」会場。毎年およそ2万人分が用意される寒鱈汁に舌鼓を打つ。「平成18年豪雪」と気象庁が命名した厳しい前年の冬から一転、穏やかな陽気のもとで寒鱈まつりが開催されたこの年。鯉のぼりならぬダンダラ模様の「寒鱈のぼり」(写真奥)を眺めながら、「こうも暖冬じゃ"暖ダラまつり"じゃん!」とひとり突っ込みを入れるのだった

kandarafes_sakata.jpg【Photo】鶴岡の翌週に開催される「酒田 日本海寒鱈まつり」会場のひとつ、中通り商店街にて。鶴岡と同様にテント張りの出店ごとに味付けが異なるため、ハシゴして好みの寒鱈汁を探すのも楽しい。会場では、寒鱈の解体実演やお楽しみ抽選会もあり、この日は「すし券」を見事ゲット。寒鱈汁を満喫ののち、市内日吉町の寿司屋へと繰り出した。ゲプッ・・(失礼) 
 
 平成の世を迎えた頃から、遊佐・酒田・鶴岡・温海など庄内各地で「寒鱈まつり」が開催されるようになりました。寒鱈汁は、味噌ベースの出汁に酒粕を混ぜ、鱈のほか家庭によって具にネギや大根、豆腐などを加えるので、味付けが家ごとに異なります。居並ぶ出店からは、鍋から立ち上る湯気と共に濃厚でおいしそうな寒鱈汁の香りが漂ってきます。底冷えする屋外でハフハフさせながら頂く寒鱈汁はまた格別。口直しには青菜漬で包んだ味噌おにぎりを炭火で焙った香ばしい「弁慶めし」をどうぞ。アツアツの寒鱈汁には、何と言っても地元庄内の燗をつけた日本酒が良く合います。左党の方には、鶴岡「雪見昼御膳」【click!】や酒田「地酒フェア冬の膳」【click!】もまた一興。藩政時代からの酒どころ鶴岡・大山の蔵元や、酒田の蔵元のしぼりたて新酒と寒鱈汁をはじめとする料亭の味がセットで楽しめるという欲張りな企画です。"寒鱈汁はおいしそうだけど、寒いのは苦手"というネコ科の方には、屋内で頂ける由良や遊佐の寒鱈まつりをオススメします。地元の寒鱈汁通に言わせると、観光客向けに白身を多く入れる上品な寒鱈汁では物足りないのだとか。野菜や豆腐を入れず、ガラがたくさん入る由良のドンガラ汁こそダイナミックな漁師料理としての寒鱈汁本来の味がするといいます。 しかし、威勢の良い声が飛び交い、いくつもの出店が立ち並ぶ鶴岡・酒田の寒鱈まつりには、さまざまに食べ比べる楽しさもあります。

【Photo】 ガラからとれるダシが合わせ味噌の味にコクを与え、具はアラが多く入った寒鱈と岩海苔だけ。地元の支持が高い「由良寒鱈まつり」の寒鱈汁は、これぞ「ドンガラ汁」と呼びたい磯の香漂う味わい

 遊佐まで足を伸ばせば、寒鱈に福を呼び込むクサフグを加えた「鱈ふく汁」を頂けます。いずれも地元のどんがら汁ファンに観光客も少なからず加わるので、昼前に早く行かないと、売り切れ (TT)なんてことにもなりかねませんよー。
 では、会場でお会いしましょう。こばえちゃ(庄内弁で「来ればいいのに」「いらっしゃい」の意)、寒鱈まつり !


2008年寒鱈まつり概要 
▼鶴岡 日本海寒鱈まつり
【開催日】 2008年1月20日(日)午前10時30分~午後3時
【開催地】 鶴岡銀座商店街 特設会場
        ※寒鱈汁:当日500円 前売券:1,000円(1,050円分の商品券)
【問合せ】 鶴岡銀座商店街振興組合 TEL:0235-22-2202
【URL】 http://www.tsuruokakanko.com/season/fuyu/kandara.html

▼鱈ふくまつり
【開催日】2008年1月20日(日)午前10時30分(受付開始)~午後2時
【開催地】遊佐町 吹浦西浜 ふれあい広場(マルチドーム「ふれんどりぃ」)
       ※鱈ふく汁:当日600円(抽選券付)前売券:1,200円(抽選券付)
【問合せ】 遊佐鳥海観光協会  TEL:0234-72-5666
【URL】 http://www.town.yuza.yamagata.jp/

▼酒田 日本海寒鱈まつり
【開催日】2008年1月26日(土)27日(日)午前10時30分~午後3時30分
【開催地】中町モール・中通り商店街・さかた海鮮市場・JR酒田駅前広場・中町交流ひろば
      ※寒鱈汁:当日500円 前売券:1,200円(寒鱈汁券2枚、お楽しみ券2枚、抽選券1枚)
【問合せ】 酒田観光物産協会 TEL:0234-24-2233
       酒田市観光物産課 TEL:0234-26-5759
【URL】 http://www.sakata-kankou.gr.jp/matsuri/kandara/index.html

▼由良寒鱈まつり
【開催日】2008年1月27日(日)午前10時30分(受付開始)~午後1時30分
【開催地】鶴岡市フィッシングセンター(由良自治会隣り)
      ※寒鱈汁:500円(限定800食)
【問合せ】 由良寒鱈まつり実行委員会(由良自治会内) TEL:0235-73-4141
       鶴岡市農山漁村振興課 TEL:0235-25-2111(内線558)
【URL】 http://www.city.tsuruoka.lg.jp/050200/page1816.html

▼しゃりん寒鱈まつり
【開催日】2008年2月3日(日)午前10時(受付開始)~完売まで
【開催地】鶴岡市早田 道の駅あつみ「しゃりん」
      ※寒鱈汁400円(限定500食)
【問合せ】 鶴岡市温海庁舎 産業課観光商工班 TEL:0235-43-4617
【URL】 http://www.city.tsuruoka.lg.jp/901500/page303.html

さて、今年は何処へ? (いずれもなくなり次第終了)

【注】 「ドンガラ汁」は元来、魚のアラを使った汁物一般を指す。なかでも寒鱈を用いた寒鱈汁は横綱格。ここ数年、さまざまな味付けで寒鱈汁を振舞う「寒鱈まつり」が冬の庄内の観光資源として定着して以来、「ドンガラ汁」イコール「寒鱈汁」を指す場合が多い。鱈を使った汁物料理は、ほかに青森県津軽地方周辺の「じゃっぱ汁」、秋田県男鹿半島周辺や宮城県南三陸町志津川の「ざっぱ汁」なども。味噌仕立てのほか「しょっつる」味や塩味にするなど、地域によって味付けや材料とする魚が鮭や鯛だったりとさまざま。酒田でも塩味・酒粕仕立ての「新寒鱈汁」が3年前から登場した

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コメント

アブラ腑がいっぱい入った由良の寒鱈まつり、屋台ごとの味の違いが楽しい鶴岡、寒鱈の解体実演などのアトラクションもある酒田、寒鱈のような大食漢だったら、ハシゴができるのになー

▼たらふく様
コメントありがとうございます。

相当の寒鱈汁好きとお見受けします。
まばゆい太陽に日本海が地中海のごとく輝く(?)梅雨明けもさることながら、鉛色の荒れ狂う極寒の海に寒鱈がやってくる冬の訪れが待ち遠しいですね、お互いに。

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