あるもの探しの旅

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うまさにひっくり返る「カッフェ・ナポレターナ」

先週月曜日に自宅のパソコンが故障したため、更新が滞ってしまいました。ハードディスクを交換して処理が早くなったPCの作動のように、ブログの更新もサクサクと行きたいところですが、さて??

薫り高きナポリ式コーヒーポット「Napoletana」

ALESSI_Napoletana.jpg
【PHOTO】南イタリア出身の建築家Riccardo Dalisi の見事な造型感覚が発揮されたALESSI のナポレターナ

 仕事を始める朝と、3 時のブレイクタイムにカッフェを注入しないと何か物足りない・・・。イタリア在住だった前世の記憶がそう思わせるのに相違ありません。そこで欠かせないのがナポリ式コーヒーポット「Napoletana ナポレターナ」です。ナポリ発祥とされるこのカフェティエッラはドリップによってカッフェを淹れるもので、蒸気圧を利用する「マキネッタ」とはカッフェの抽出法が異なります。このナポレターナ、器具の構造は至ってシンプル。その形状といい、抽出の所作といい、なかなか味わい深いものがあります。加えてナポレターナで淹れたカッフェもまた味わい深く、薫り高いものとなります。

 前回この「Caffè カッフェ」のコーナーでご紹介した著名なイタリアンキッチン用品ブランド ALESSI アレッシからナポレターナが発売されたのが1987年。イタリア南部バジリカータ州Potenza ポテンツァ生まれの建築家 Riccardo Dalisi リッカルド・ダリージは、このカフェティエッラの設計開発に9年もの歳月をかけました。ALESSI の豊富なラインナップの中でも、これは最長の期間だといいます。ALESSI 唯一のナポレターナとなるこの製品は、本体が鏡面仕上げを施された18-10ステンレス、取っ手にはクルミ材が用いられています。イタリア本国でも6カップ用が €274( €1=156円換算で42,700円)、日本国内価格が54,000円(税別)という価格にすっかり怖気付いた私が愛用しているのは、ピエモンテ州トリノの北9kmにある Collegnoコッレーニョという人口5万人ほどの町で 1946年に創業したILSA社製のクラシックなナポレターナです。

iLSA-diamante.jpg現在でこそ広くイタリアの家庭で使われるマキネッタが登場する1950年代までは、このナポレターナが一般的でした。同社が初めて製品として売り出したのも、ナポレターナだったのです。

【PHOTO】私の初代ILSA社製ナポレターナ「Diamante」1-2カップ用(右)。上下同じ形状をしていたベークライトの取っ手は、ボイラー部の一部を焦がして焼失。さらに本体との接合部からの水漏れが顕著になり、現役引退を決意。会社で使用している「Liscia」1-2カップ用と同型3カップ用(下)は自宅で使用する3代目

 1-2カップ用から、3・6・9・12カップ用の各サイズが揃う中で、会社で愛用していたのは表面に凹凸の装飾が施された「Diamante ディアマンテ」ラインの1-2カップ用。約10年使い込んだこの初代ナポレターナは、酷使がたたって変形・変色が著しく、モデル名が意味するダイヤモンドのような輝きはとうに褪せています。本体と取っ手の接合部から水漏れするようになったため(→こんなところもイタリア製らしい? )、代替品を探していた'06年に実現したトリノ訪問。Terra Madre と Salone del Gusto の取材が主目的だったため、公式行事やワークショップへの参加に時間を割かれ、市内観光やショッピングがほとんど出来ないことが予想されました。

 そのため、4代目となる同社のナポレターナを前もって滞在先のアグリツーリズモRupestr のジョルジョ氏に探してもらいました。Rupestr がある小さなCanelli の町は無理でも、同社お膝元の大都市トリノならば、簡単に入手できるのでは?と考えたからです。

istruzioni_per_uso.jpgところが、危惧した通り北イタリア・ピエモンテ州では、ナポレターナが一般的ではなく、地元調達が出来ないとのこと。たまたまRupestr のWEBサイト管理を手がけるジョルジョの知人がナポリ在住で、そのルートで調達してもらった次第。人の繋がりを駆使して物事を解決する名人ジョルジョに限らず、イタリア人はこうした処世の達人です。

 ジョルジョに調達してもらったプレーンな外観のモデル「Liscia リッシャ(=伊語で「滑らかな」の意)」1-2カップ用は、€15(約2,340円)とぐっとリーズナブル。本体は純度99.5%のアルミニウム製、取っ手が耐熱性・難燃性に優れたベークライト製という基本的な構造やデザインは1946年の初代モデルに細部の改良は加えられたものの、大きな変更はありません。レトロな雰囲気を漂わせるILSAや端正で美しいフォルムのALESSI をご覧になって、どうやってカッフェを淹れるのか想像がつかない方もおいででしょう。

 日本では馴染み薄なナポレターナだけに、それも無理からぬこと。それでは早速、濃厚なナポリスタイルのカッフェを淹れてみましょう。上の図解イラストをもとに手順に従ってご説明すると・・・図でご覧の通り、ナポレターナは最後に用いる蓋(ふた)を除いて4つのパーツから構成されます。

caffettieranapoletano1.jpg【左PHOTO】〈1〉:熱源にかけるパーツ「ボイラー」(図C)に水を入れる。その際、水が上部に穿たれた直径2mmほどの小さな穴を超えないよう

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【右PHOTO】〈2〉:図の向きで「フィルター」(図B)をボイラー部にセット。その際(C)の穴と(B)の縦に刻まれた窪みの向きを合わせるとよい。フィルターに挽いたコーヒー豆を装填。フィルターの目が粗いので、仕上がったカッフェに粉が紛れ込まぬよう、豆は極細挽きよりは細挽き程度がよい

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【左PHOTO】〈3〉:「スクリューキャップ」(図A)でフィルターの装填口をふさぐ

caffettieranapoletano4.jpg【右PHOTO】〈4〉:仕上がったカッフェの注ぎ口と取っ手が付いており、屋外などでデミタスカップがなければ、その代用も務める「ポット」(図の最上部)をボイラーにセット。上下取っ手の向きを合わせると抽出中の姿が美しい。ここだけは、ともするとやることが適当なナポリっ子の真似はせぬこと。ボイラー部を下、ポット部を上にして熱源にかける(下図1)。ガスコンロを用いる場合は弱火~中火。取っ手を焦がすので強火は厳禁。

caffetttieranapoletano6.jpg【上PHOTO】〈5〉:ボイラー内の水が加熱されるとフィルター内のコーヒー粉を蒸らし始める。沸騰した熱湯が、ボイラー部の穴からチョロチョロ出始めたら熱源から外すサイン。素早くボイラーとポットの取っ手を両手でしっかり押さえながら上下逆にひっくり返す(下図2)。ボイラーの穴からお湯がピューッと勢いよく噴き出すが、すぐに止まるので慌てず騒がず。アルミ素材は柔らかく変形しやすいので、時に噛みあわせが緩い場合も。ズレによって熱湯が漏れないよう注意が必要

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〈6〉:耐熱性のある平らな場所にナポレターナを移して待つことしばし。使用する器具の容量にもよるが、2~3分でドリップは完了。その間、ボイラー部には蓋を装着して温めておく(→必ずしも使わなくても可)。ドリップが終わったらボイラーをはずし、ポットに蓋を被せ(省略可)【上PHOTO】 、カップにカッフェを注ぐ。

caffettieranapoletano8.jpg【PHOTO】è pronto!! ハイ、出来上がり!!

 ポット部分の熱が冷めれば、カップがなくてもカッフェを直接ナポレターナから飲むことだって出来ます。この使い方はアウトドアで一人カッフェを飲む場合などに重宝しそう。コーヒーの旨み成分を含む豆の油脂成分をろ過しないため、ナポレターノで淹れたカッフェは、調和が取れた深い味わいが楽しめます。いまやカッフェを淹れる時に使うカフェティエッラの割合は、ナポレターナ 7 に対しマキネッタ 3 と圧倒的にナポレターナが優勢。最初はマキネッタを使っていた仕事先でも、今ではナポレターナ一辺倒になりました。

 会社では電気コンロが置いてある流しでナポレターナを使うのですが、火にかけている間、立ち込める芳香は特筆もの。それを嗅ぎつけて分け前を要求する同僚もいます(笑)。後処理はマキネッタ同様、さっと水洗いでOK。金属製フィルターのため、余分な紙ゴミも出しません。なんというスグレ物!

napoletana_uffizi.jpg【PHOTO】オフィスで愛用している4代目ナポレターナ。普及が進むIHヒーターでは使用できないアルミ製ゆえ、お払い箱になりかかった電熱線ヒーターには懇願調に「捨てないで下さい」と記し、IHヒーターに重ねて使用

 ナポレターナが欲しくなったアナタに大切なポイントをお教えします。ナポレターナの素材は是非「alluminio =アルミニウム」製を選んでください。私の2代目ナポレターナはILSA社のステンレス製でしたが、カッフェが金属と馴染むまでと忍耐強く何度使ってもアルミ製ナポレターナのような深みのある味が出ないのです。苦味が強くでる傾向があり、調教を諦めた私はアルミに回帰、使用期間半年ほどで2代目はお蔵入りとなりました。

 イタリアでも丈夫なステンレス製のナポレターナが造られてはいます。しかしナポリのカッフェ好きの間では、ナポレターナはアルミ製というのが常識なのです。アルミの調理器具を使うとアルツハイマー病になると指摘する向きがあります。それでもアルミ製のマキネッタやナポレターノで淹れた一杯の薫り高いカッフェの誘惑には到底勝てません。その指摘が本当ならば、カッフェ好きのイタリア人たちは皆アルツハイマーになっている筈ですが、そんな話は聞いたことがありませんよね。

 そう自分を納得させて、ナポリスタイルを貫く「Passalacquaパッサラックア」の豆を装填した愛用の4代目ナポレターナを今朝もヒョイッとひっくり返したのでした。


次回、「Arriva a Napoli !? 白日夢 @ Caffè Passalacqua」に続く

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コメント

このナポレターナ日本で購入はできないんでしょうか?すごく素敵で欲しいんですが…

▼ホリエ様
いらっしゃいませ~♪ カッフェを淹れるのに道具をひっくり返し、旨さにひっくり返るナポレターナですが、このALESSI の傑作ナポレターナは、日本国内での値段にもひっくり返ります(笑)。なにせ6カップ用の値段は4万8千円前後。
http://www.alessi.jp/product/tea-and-coffee/post-30.html

キッチンツールというよりも、オブジェとしての存在感を求めるならば、いっそレバー式で抽出圧力を調整するエスプレッソマシンの傑作、La pavoni ラ・パヴォーニを手に入れるという選択肢もあります。もっとも20万近い値段にも圧力を感じますが(爆)。
http://youtu.be/zHppxwN9ZQ0


シンプルにおいしいナポリスタイルのカッフェを召し上がりたいだけならば、アルミ製のILSAナポレターナで充分に事足りる・・・というかベターかも、です。

随分前の記事へのコメントで失礼します。ナポレターナで検索したらこちらに出会えました。
当方、イタリア雑貨をネットで販売していて、ILSA社のまさにLisciaタイプを扱っております。
本当に、これで淹れるカッフェは格別ですよね。

yoriさま

コメントを頂きありがとうございます。

何を隠そう、写真に写りこんでいる初代ILSAのナポレターノは、ほかならぬyoriさまのお店animataで購入したものですよっ!! 世界は狭いですね。

 イタリア人さながらのラテン気質ゆえ、このところ更新をサボってしまい停滞していますが、近日(?)イタリア関連ネタをアップするつもりですので、またお立ち寄りください。

ciao,ciao

きゃ~~~!!過去のORDER履歴で確認したらありました~~!!

驚きです・・

すっかりご縁を感じてしまいました。
これからも楽しみに訪問させていただきま~す!

yoriさま

でしょ、でしょ?
しかもナポレターノでは初代・二代目と2 回お世話になったのです。

そちらにも時々立ち寄りますので、どうぞヨロシクです!

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