あるもの探しの旅

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春を告げる雪形

鳥海山の種まき爺さん

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【PHOTO】秋には鮭が遡上してくる清流・洗沢川沿いに60本のソメイヨシノが咲き揃う。視線の先には多くの水の恵みをもたらす鳥海山が残雪に輝く

 先週末の風雨で仙台のソメイヨシノはあらかた散ってしまいましたが、今が盛りの桜を愛でに鳥海山に端を発する清流 洗沢川が流れる山形県飽海郡遊佐町をこの週末訪れました。同町高瀬地区の洗沢橋から下流にかけては、川沿いに樹齢50年ほどのソメイヨシノの見事な並木が続いています。これは昭和33年の皇太子ご成婚を記念して地元の方たちの手で60本が植樹されたものだといいます。眼前には雪を頂く鳥海山が迫り、今を盛りと咲き誇る桜と花弁が川面に浮かぶ洗沢川には、風を受けて泳ぐ鯉のぼりがかかります。それはそれは絵のように美しい風景でした。

yunosawa1.jpg【PHOTO】次から次へと水を汲みに人々が訪れる湯ノ澤霊泉。湧水の里・酒田市八幡地区の入浴施設「ゆりんこ」のすぐ手前にある 

空模様は花曇りながら、そこを訪れた日の酒田の最高気温は17.8℃と春爛漫の陽気。鼻腔をくすぐるのは甘い春の花の香りかと思いきや、雨上がりの湿気を含んだ風に乗ってどこからともなく漂ってくるのはなんとコヤシの臭い!!(爆) 「ん?」と、堤防の向こうに広がる田んぼに目をやると、そこではトラクターが堆肥を散布中。田植えに向けた田おこしの準備が始まっているのでした。一部の圃場では、すでに水張りが始まっており、そこでは土中から這い出してくる虫を狙うシラサギやウミネコの姿もありました。

 海鳥たちはどうやって海辺から離れた位置にある水張りをする田んぼの存在があることを知るのだろう? ...そんなことを思いつつ向かった先は、1995年に国土庁が選定した「水の郷百選」に庄内地方からは遊佐町と共に選ばれた旧八幡(やわた)町(現・酒田市)の湧水「湯ノ澤霊泉」でした。緑が広がる八森自然公園の裾野にある温泉施設「ゆりんこ」の手前にあるそこは、庄内では知らぬ人のいない名水スポットです。

yunosawa2.jpg 【PHOTO】 こんこんと清らかな伏流水が湧き出でる給水口には苔がびっしり

 二基の水汲み場からは、年間を通して水温10℃の豊富な水が音をたてて溢れ出しています。ここは水汲み場が屋根で覆われているため、たとえ雨降りの日でも水を汲むのに重宝します。すぐ隣にある入浴施設「ゆりんこ」の湯上りに水分補給のため立ち寄るのもいいでしょう。古来から不老長寿の水として、飲用や炊飯用にと、さまざまに用いられてきたこの水を求めて、近隣から訪れる人がこの日も後を絶ちませんでした。yunosawa3.jpg 鳥海山南側に数多く存在する湧水は、口当たりの優しい軟水が多いのですが、この水は輪郭のはっきりしたクリアな印象が最初あるものの、喉を過ぎると口の中に甘さが残る美味しい水です。我が家では冷水でそのままは勿論のこと、カッフェや料理・炊飯にとオールマイティに活躍する霊泉の名に恥じぬこの水。20リットル容量のポリタンク2つに詰めて車に積み込みました。

【PHOTO】 豊富な湧水がほとばしり出る二つの水汲み場が整備された湯ノ澤霊泉。車のアクセスがよいことから訪れる人が引きも切らない人気の湧水スポット

 ポリタンクの水がチャッポンチャッポン、両出し4本のマフラーからは官能的な重低音。そんな絶妙な(?)和音を奏でる alfa Brera で「庄内こばえちゃライン」を南下すると、「刈屋梨」の産地で名高い酒田市刈屋地区に差し掛かります。そちらでも名産の幸水をはじめとする梨の樹の手入れが始まっていました。ちょうど白い可憐な梨の花がほころび始めたところ。その目線の先に聳える鳥海山南側の山肌には、右向きに腰をかがめて種まきをする農夫の形をしていることから、田植えの準備を始める目安とされる種まき爺さんとして地元で知られる雪形が姿を現していました。

kariyachoukaisan.jpg【PHOTO】 鳥海山の山肌に種まき爺さんが姿を現す頃、白い梨の花がほころび始めた刈屋梨の産地、酒田市刈屋地区。日光川と荒瀬川が水はけのよい肥沃な土壌をもたらすこの地では、明治初期より梨の栽培が盛んで、刈屋梨はトップブランドとして君臨する

 自家栽培する無農薬農産物を無添加の漬物なんと希少なことよ! )に加工製造する「月山パイロットファーム」の相馬 一廣さん宅に「ハリハリ大根」と「民田茄子からし漬」を購入しようと途中で立ち寄った折、「父は稲の種まきで近くの共同作業場に出払っています」と娘さんに言われたっけ・・・。連作障害の出ない輪作による資源循環型農業のパイオニアでもある相馬さん。農機具や作業用トラックはBDF(バイオディーゼル)車ですが、休日には1,390kg のボディに3.2 リッターDOHC4バルブV6エンジンを搭載し、250馬力を発生させるalfa147GTAを駆るやんちゃな一面も持ち合わせるお方。

【PHOTO】 岩手山の頂きに翼を広げた格好の鷲が現れる頃、寒さ厳しい南部の地にも遅い春が訪れる
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  古来より農作業などの人々の暮らしと深く結びついた「雪形」が各地に伝えられてきました。津軽富士こと青森の岩木山には、「ツバメ」「下りウサギ」ほか30あまりの雪形が伝えられています。岩手県盛岡市からは岩手山の頂きに翼を広げた「鷲」が現れます。

 宮城県でも栗駒山の名前の由来とされる駒形の模様や、蔵王の水引き入道が良く知られています。雪形とは、残雪と山肌のコントラストが描く文様をさまざまな物に見立てて、名前を付けて呼び習わしてきたもの。地球温暖化の影響で年々その雪形が現れる時期が早まっているそう。熱いラテンの血がたぎるアルファロメオと環境負荷が少ない天ぷらの香りがする作業用BDFトラックを颯爽と乗りこなす月山のエコファーマー。芯が通ったその人の生きざまと、春の訪れを告げる鳥海山の種まき爺さんの姿がどことなく重なって思えました。

gassannpilot.jpg 【PHOTO】月山パイロットファーム製「ハリハリ大根」(右)。細かく刻んだ干し大根に青大豆・ニンジン・赤唐辛子を混ぜ、醤油・砂糖・日本酒で味付け。自家栽培するダイコンで作ったハリハリ漬けは歯ごたえも良く美味。同「民田茄子からし漬」(左)。鶴岡市民田地区に伝わる在来野菜「民田ナス」を酒粕と砂糖・塩・和辛子の粉末で漬け込む。日本で唯一、自家栽培する和辛子を漬物で使用。漬物本来の味を教えてくれる逸品

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