あるもの探しの旅

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タケノコ取物語@丸森

これぞ雨後のタケノコ。
タケノコ山はザックザックの大豊作っ!

 初夏の陽気と快晴に恵まれた連休最後の5月6日。眼前を阿武隈川が滔々と流れる丸森町耕野(こうや)地区を訪れました。川沿いから山あいにかけて孟宗竹の林が広がるその地は、宮城県内最大の孟宗筍の産地です。
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【photo】 阿武隈川沿いから山あいにかけて孟宗の竹林が広がる丸森町耕野地区

 この地に孟宗竹がもたらされたのは、宝暦から明和年間にかけての1760年代とされます。伊達政宗の家臣、中目六左衛門安定(なかのめろくざえもんやすさだ)が、政宗が豊臣秀吉から拝領した近江国(現在の滋賀県)の代官として赴任。そこで目にした孟宗の美林に惹かれた安定が、二株の孟宗を仙台城に持ち帰りました。当時の耕野地区一帯は仙台藩の直轄領だったため、苗字帯刀が認められた住民たちは「勤番」と呼ばれる城勤めが課されていました。恐らくは城内に参内した勤番がこの地に孟宗竹を持ち帰ったのでしょう。こうして県内で最も温暖な丸森の耕野地区一帯に孟宗竹は広がってゆきました。

 設立33年目という「耕野たけのこ生産組合」が主催するタケノコ狩りは今年で22年目。旬の恵みを朝採りで頂こうと9時50分の集合時間に集まったのはおよそ100人。定員を20人以上もオーバーする盛況ぶりでした。組合の広報担当・八島 哲郎さんによれば、仙台をはじめとする宮城からの参加者が7割、福島2割、その他岩手・山形・首都圏takenokokaido.jpgからの参加者が1割といった按配だそう。鮮度が命ともいえるタケノコ。食味に優れる孟宗筍を掘りたてで味わえるとあって、この組合主催のタケノコ狩りを毎年楽しみにしているリピーターが多いとのことでした。昼食とお土産のタケノコの水煮・飲み物が付いて参加費は大人3,300円、小学生2,000円(土産なし)。収穫したタケノコは、直近の卸価格(1kg300円~400円程度)で買い求めることが出来ます。旬真っ盛りのこの日はキロ当たり250円という買取価格でした。

【photo】「たけのこ街道」のロードサインが立つR349 耕野地区。阿武隈川沿いを2kmも上流に向かって走れば、もうそこは福島県梁川町


sig_yatsu.jpg私がタケノコの美味しさに目覚めたのは、例によって山形県庄内でのこと。湯田川周辺と滝沢地区・谷定地区ら、いずれ劣らぬ孟宗の名産地で採れるキメ細やかな絶品のタケノコとの比較を兼ねて参加しました。隣接する福島県梁川町まで阿武隈川沿いに延びるR349 (通称「たけのこ街道」)を12 km ほど走ることしばし。産直施設「あがらいん伊達屋」を過ぎるとすぐ右手にある集合場所、「耕野ふるさと交流センター」に着きました。8名の生産者からなるという組合に所属する生産者が所有する竹林3箇所に分かれて、マイクロバスでいざ出発。案内されたのは、耕野地区の山あいに竹林を所有する谷津 友儀(ともよし)さんのもとでした。

【photo】 タケノコ採りのコツを伝授いただいた谷津 友儀さん(右上) 来年は展望台も作りたいという谷津さんの竹林(下)

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 施肥や間引きなどの手入れが行き届いた谷津さんの竹林には、5年目前後の青々とした立派な孟宗竹が生えています。長靴に履き替えて、鍬(クワ)を片手に山へと足を踏み入れると、地表から頭を出した孟宗がニョキニョキ。前夜に降った雨と、この日の好天によって、タケノコ狩りには最高のコンディションに恵まれたようです。タケノコの見立ては庄内で培った経験があります。お目当ては葉によって日光が遮られる湿度を含んだ土壌に育つメタボな(?)孟宗筍。いやはや、あるわあるわ。これぞ! というタケノコに目をつけると、鍬を入れて親竹から伸びる地下茎を探り当てます。タケノコ採りの名人揃いでもある組合加盟の生産者が丁寧に掘りかたを指導してくれるので初心者でも安心です。

dig_it.jpg 仙台から訪れたという小学5年生の女児も果敢に初めてのタケノコ採りに挑戦していました。傷をつけぬよう慎重に掘ってゆき、赤い斑点がある根元が見えたところで生え方の向きを確認、一気に鍬を振り下ろすと、ヘイ、一丁上がり。採れたてのタケノコを逆さまにすると、産毛で覆われた茶褐色の皮の隙間からポタポタと水が滴り落ちてきます。その水を口に含むとほのかな甘味が。

【photo】 ヨイショ! 樹齢5年という立派な孟宗竹の根元近くに生えたこれまた立派なタケノコ

 山の斜面を物色しながら、およそ一時間で収穫したのは、5本の大きな孟宗筍しめて10kg。谷津さんも「いいですよ、これは」と太鼓判を押してくれました。掘りたてのタケノコを生で噛り付くと、シャキシャキした歯ごたえと、みずみずしい青リンゴのようなほのかな香りがします。「生のまま薄切りにして砂糖醤油で採れたての味を確かめてみて下さい」という谷津さんによれば、小ぶりなものよりも30cmほどのタケノコが食味が良いとのこと。実はそれ以上伸びてしまい、節が立って"竹の子"と呼ぶには躊躇するような1mあまりに伸びた孟宗筍も、輪切りにして味噌汁の具にすれば美味しく頂けます。形状が名前の由来と思われるこの「眼鏡汁」を教えてくれたのは、鶴岡・湯田川温泉の旅館「ますや」の料理達者な大女将、忠鉢 泰子さんでした。庄内の郷土料理「孟宗汁」の達人でもある女将が白味噌と酒粕でじっくりと煮込んだとろとろの孟宗汁がこの季節食べたくなるのは庄内系なるがゆえの性(さが)。おっと今回は庄内ネタじゃなかった・・・。

takenoko_pranzo.jpg【photo】 産地ならではのふんだんにタケノコを用いた昼食

 再びバスで集合場所の耕野ふるさと交流センターに戻って、昼食タイムとなりました。朝8時に集合したという地区の女性たちがこの日用意した心づくしの料理は、短冊に切った孟宗筍がたっぷりと入った味噌汁、筍の炊き込みご飯、酢味噌で和えた筍の刺身、こごみやタラの芽などの山菜と筍の天ぷら、醤油で甘辛く煮付けた筍、ホウレンソウと山椒・味噌をヌタ状にした筍の木の芽和え。そして「かまぼこの鐘崎」が月替わりで旬の県産食材を使用した「笹ごよみ」シリーズの人気商品、「丸森のたけのこかまぼこ」というタケノコ尽くしの昼食。あー、お腹いっぱい。

kouya_mousoujiru.jpg【photo】庄内地方の郷土料理「孟宗汁」。一晩置いた二日目以降のとろりとした食感が病み付きになる(下)

 常温では味を損ねるので、保冷材の入ったクーラーボックスで自宅に持ち帰ったタケノコを早速調理しました。一つは大ぶりに乱切りした孟宗筍にシイタケや厚揚げを加えて白味噌と酒粕で味を調えて煮込む庄内の郷土料理「孟宗汁」。薬味に山椒の葉を載せて頂きます。下茹でした丸森の孟宗筍は、庄内産孟宗と比べて柔らかくなるのが幾分早いようでした。茹で汁自体が美味しいダシになる谷定などの庄内孟宗とも味や香りの出方が違うようです。食に関してはイタリア人と同じ発想をする私にとって、"料理と酒は切っても切れない関係"にあります。同郷の相性が悪かろうはずがありません。そこで選んだのが、生態系が維持され、おのずと健康な土壌環境が生まれる冬季冠水田で栽培された有機米ササニシキを酒米として100%使った「一ノ蔵」の意欲作「ふゆみずたんぼの酒」。宮城県の食材には宮城の酒を合わせるのですよ、いくら庄内系でも(^0^;

grande_takenoko.jpg【photo】この日収穫した孟宗筍のなかでも大物の一本。ちなみに「ふゆみずたんぼの酒」は四合瓶。一升瓶ではありません。大きさからすれば当たり前か・・・(笑)

 もう一品はダイスにカットした孟宗筍を下茹で汁と野菜ダシで作るリゾット。白味噌と酒粕少々を隠し味に、パルミジャーノ・レッジャーノチーズをおろしてコクと深みを出す鶴岡「アル・ケッチァーノ」奥田シェフのレシピを拝借しました。こちらも薬味に山椒の葉を使います。ご本家の人気メニューである孟宗のリゾットよりも、淡白な仕上がりになったのは、タケノコの持ち味の違いによるものでしょう。こうした素材の差異が鮮明に感じられたのはイタリアンならではの醍醐味です。酒田市八幡地区から汲んで来た「湯の澤霊泉」の軟水で煮込んだリゾットに使用したのは、北イタリア産のRiso リーゾ(=米)、カルナローリ米ではありません。庄内系に変異した2003年(平成15)から、La Terra e il Cielo や DE CECCOのパスタと並ぶ我が家の主食の定番は、鶴岡市藤島地区の専業農家、井上 馨さん・貴利さん親子のコメです。

risotto_nussubaumer.jpg【photo】 孟宗汁をイタリアナイズした孟宗筍のリゾット。Not al.che-cciano but 我が家

 豊かなブナの原生林が広がる月山山系の出羽丘陵に源を発する梵字川(ぼんじがわ)と京田川(きょうでんがわ)の滋養豊富な水を引いて米作りをしている井上さん。農協に依存する従来の米作りではなく、トマト・小松菜などの転作作物を含めて自立した農業を目指した井上さんは、自前の精米・低温保管施設を地域でいち早く導入。抗生物質を与えていない希少な鹿児島の養鶏場から鶏糞を取り寄せ、土作りから食べる人の安全と食味の良さの両立を目指しています。そんなエコファーマーである井上さんのもとを訪れた昨年夏、炎天下汗まみれになって酢や木酢液を希釈した害虫忌避剤を人力で散布しておられる姿を目にして、改めて頭の下がる思いがしました。粒の揃った「はえぬき」や「コシヒカリ」「ひとめぼれ」など、いずれも食味の良さは過去幾多の受賞暦でも折り紙付き。 2007年に庄内町で初めて開催された「あなたが選ぶ日本一美味しい米コンテスト」に出品した井上さんのコシヒカリは、日本全国から応募のあった269件の中から30件だけが選ばれた決勝へ進出、見事入賞を果たされました。

 本来は銀しゃりで頂くのが最高に美味しい井上さんのはえぬきを、孟宗入りの和魂洋才なリゾットに仕上げました。アルプスの山並みを映す水田が広がる北イタリア・ピエモンテ州やロンバルディア州が本場となる米料理に合わせたのは、同じく北イタリアは南チロル地方、アルト・アディジェ州のヴィーノ・ビアンコ「Nussbaumer ヌッスバウマー'06」。最高のコメには至高のヴィーノでなければ釣り合いません。地元Termeno sulla strada del vinoテルメーノ・スッラ・ストラーダ・デル・ヴィーノ(ドイツ語表記ではTramin an der Weinstraße トラミン・アン・デア・ヴァインシュトラーセ)のブドウ生産者290軒が加盟し、秀逸なヴィーノを生産する1898年創立の組合組織「Tramin トラミン」のフラッグシップとなる一本です。はっきりとしたライチやピーチのニュアンスを感じる個性的な芳香のワインに仕上がるブドウ品種Gewürztraminer ゲヴルツトラミネール種を用いたワインでは、イタリアのみならず世界の頂点にあると言って差し支えないでしょう。日本ではフランス・アルザス地方のイメージが強いブドウですが、実はドイツ語読みのTraminから察しがつくように、この村こそが原産だとされます。地元では「Traminer Aromatico トラミネール・アロマティコ」とも呼ばれるこのブドウの醸し出すフローラルなアロマと、冷涼な北イタリアらしい酸味が長い余韻とともにデリケートな孟宗筍といつまでも共鳴しあうのでした。

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耕野たけのこ生産組合
TEL / FAX 0224(75)2569 (「やしまや」内)
HP / http://www008.upp.so-net.ne.jp/yashima/
Eメール / yashima@ka2.sonet.ne.jp
今年は既に4回のタケノコ狩りツアーを終了、今後は5月10日(土)・11日(日)、17日(土)・18日(日)に開催。要・事前予約。阿武隈急行あぶくま駅より送迎バスあり

組合の広報担当 八島哲郎さんからのメッセージ
 「ご参加いただいた皆さんから、耕野のタケノコを食べるようになってから『今まで食べていたタケノコは何だったのか?』というコメントをよく伺います。参加いただいた皆さんは、ほとんどがリピーターになって頂けます。あなたもぜひそうした"耕野タケノコ依存症"になってください(笑)」


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コメント

木村さん、耕野においでいただきありがとうございます。
掘りたてのタケノコの味、ご堪能いただけたこと、うれしく思います。
今日、5月10日のタケノコ狩りも80名を超すお客様でにぎわいました。

タケノコは掘りたてが命、日単位ではなく、時間単位でアクが増えます。そのアクの増加を止めるのが「ゆでる」という行為です。
掘ってから3時間以内が美味しいといわれていますが、その日の物なら十分です。

今年は河北新報さんの5月2日の朝刊に特大タケノコを掲載していてだき、反響も特大でした。ありがとうございました。
こうしてマスコミでも取り上げられ、耕野のタケノコのファンが増えています。
おかげさまで、ある有名旅館ともお取り引きさせていただいています。鐘崎さんの笹かまぼこ、笹ごよみシリーズも昨年は売上ナンバー1でした。

ただ今、タケノコは最盛期。記事よりもお安い価格でお買い求めいただけます。直送も可能です。さぁ、あなたも「耕野たけのこ依存症」の仲間入りです。

山形・庄内風のタケノコ料理は、県北、栗原郡若柳町の農家民宿「たかまった」で食す事ができます。奥様が山形ご出身です。 お試しあれ。

▼八島哲郎様
 確かに5月2日付河北新報朝刊に載った特大タケノコは見事でした。あの写真はインパクトありましたね。反響も特大だったとのことで良かったですね。何を隠そう、私もあの記事を読んで申し込んだ者の一人です(笑)。

 八島さんが抱えていたタケノコの大きさにも驚きましたが、リピーターの多さにも驚きました。みんな、耕野産タケノコの味と共に、地域の皆さんの心からの素朴なおもてなしに魅せられているのでしょう。

 山の斜面に広がる竹林の維持管理がいかに大変かが偲ばれました。都合がつけば、竹林の手入れ体験ツアーにも参加したいものです。またお会いしましょう。

《追記》

 「鶴岡『アル・ケッチァーノ』で夕食を食べたいから、泊まりがけでも宿で夕食はいらない」というワガママを言う仙台在住の友人。奥田シェフが必ず厨房に立ち、素晴らしい料理ばかりを出していた頃のアルケを絶賛していた私にすっかり感化されていました。TBS系「●熱大陸」オンエア後しばらく続いた混乱状態をほぼ脱し、料理が復調していることを自分の舌で幾度か確認。その上で、その友人に代わって、鶴岡・湯田川温泉にある私がよく利用している宿「ますや旅館」に宿泊予約の電話を入れました。

 すると、数日後にますや旅館の若女将から湯田川産の孟宗が山のように送られてきたではありませんか。「今年は都合がつかずに、孟宗の旬に庄内に行けないかも」と、予約の際にふと電話口でボヤいてしまったからです。いやはや、もっけです※。

 送って頂いた孟宗、美味しく頂きました。また行きますね~。(^o^)/

※注:「もっけ」→ 感謝の気持ちを表す庄内弁。「申し訳ない」というニュアンスが込められる場合に使う。

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