さようなら、レヴィさん
イタリアから悲しい知らせが届きました。
Addio a Romano Levi, 《il grappaiol' angelico》 (=さようなら、天使のようなグラッパ職人 ロマーノ・レヴィ)の見出しで始まる記事でその人の死を伝えたのは、トリノの日刊紙「La Stampa ラ・スタンパ」。同紙が伝えるところによると、2008年5月1日(木)、ユーモラスで温かみのある手書きラベルのグラッパ造りで世界中に多くのファンが存在するRomano Levi ロマーノ・レヴィさんがイタリア・ピエモンテ州ネイヴェの自宅で急逝しました。享年80歳。
レヴィさんはイタリアで唯一残るとされる直火式蒸留装置でワイン醸造に使用したブドウの絞りかす「ヴィナッチャ」から蒸留する酒、Grappa グラッパを60年以上に渡って作り続けてきました。時流に流されること無く、唯一無二なグラッパ造りに生涯を捧げ、詩人とも芸術家とも称えられたレヴィさんを慕う人は数多く、ファンクラブすら存在します。
高齢のため、ここ2-3年は体調が優れず、トレードマークでもある詩的な手書きラベルを描くことがままならなかったレヴィさん。敬愛するレヴィさんのもとを2年前の10月に訪れ、ご本人とお会いする機会に恵まれました。ご挨拶をさせて頂いた際に触れたその人の手のぬくもりと柔らかな感触は、今も手に残っています。〈2007.6 拙稿「伝説のグラッパ職人、ロマーノ・レヴィ~天使のグラッパ職人は生き仏だった」参照〉 その折に頂いた私の名前入りドンナ・セルバティカのラベルをまとった文字通りハンドメイドなグラッパに至っては、開けるのが余りに勿体なく、ただ眺めるだけでした。
【PHOTO】 虫や花、ブドウ、星、太陽などさまざまなものが登場するレヴィさんの手書きラベル。過去に数冊の画集が出版され、昨年はラベルの展覧会も催された。 ラベルに私の名 Kimura とコレクターの間では最も人気が高い「Donna Selvatica ドンナ・セルヴァティカ」が描かれたレヴィさんから頂いた世界で一本だけのグラッパ(右)と、自身の投影だという「Uomo Selvatico ウォモ・セルヴァティコ」が描かれたグラッパ(左)
楽しげなラベルを描き続けたレヴィさんがいなくなってしまった今。天に召された故人のご冥福を祈りつつ、手持ちの一本を開けて、しみじみと味わうとしましょう。 献杯。