あるもの探しの旅

« タケノコ取物語@丸森 | メイン | どぶろく特区@鳴子 »

食料自給率100%のレストラン

行くべし弘前!! 「ダ・サスィーノ」

Cellar2007.8.jpgAntipastimisti2007_10.jpg【photo】クオリティの高いイタリアワインが揃うダ・サスィーノの「ワインセラー」兼「自家製食肉加工品熟成庫」兼「自家製チーズ熟成庫」兼「その他もろもろ実験室!?」

 味を追求し安全で美味しい素材の調達のために信頼の置ける農家と契約するだけではなく、自身で畑を持つ料理人が最近では珍しくなくなってきました。私が「食WEB研究所」の「飲食店ブログ」にお招きした仙台市太白区向山にあるイタリアン「AL FIORE アル・フィオーレ」の目黒シェフのように、自ら畑に足を運んで無農薬自然栽培や有機栽培で育てる野菜類だけでなく、生ハムなどの食肉加工品まで自作してしまう料理人も登場しています。

【photo】ベストマッチな自家製イチジクとともに味わう自家製ハム類7種(右写真)

 しかしながら"餅は餅屋"と言うとおり、畑仕事は作物と常に向き合う農家の野菜や果物にいささか分がありそうなのもまた事実。日本在来の野菜は別にして、西洋野菜や生ハム類を気候風土が異なる日本で作ると、どうしても本場とは風味が異なる仕上がりになりがちです。特に、20ヶ月前後の熟成期間を要する生ハムのような食肉加工品を湿度が高い日本で自家製造するには、雑菌の繁殖を抑える細心の注意と加工技術が必要となります。

FormaggiSasamori2007_10.jpg

【Photo】自家製チーズを切り分ける笹森シェフ

 地方にある飲食店が進む一つの指針を示してくれる1軒のレストランが青森県弘前市にあります。イタリアンレストラン「Osteria Enoteca Da Sasino オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ」。オーナーシェフの笹森 通彰(みちあき)さんは、1973年(昭和48)岩木町(現弘前市)生まれ。仙台・東京・イタリアでの数年間の修行を経て、郷里の弘前に戻ったのが2003年(平成15)。弘前大付属病院前の路地を入ってすぐの場所に現在の店を開いたのが同年8月。スタート当初は、笹森さんが修行中に口にした本場イタリアの輸入食材を使った本格イタリアンを志向しましたが、弘前ならではの特色を打ち出せずにいたそうです。その頃、かつて笹森さんが修行した仙台のイタリアン「Vino il Salotto」(当時)のオーナー鳥山さんから、「ウチにいたヤツが祖父母がやっている畑のある郷里で店を出したから、行ってみて」 と誘い水をかけられていました。その年の夏といえば、今でこそ「食の都 庄内」と呼ばれるものの、当時はその価値が全く認知されていなかった彼の地の凄さに開眼した頃。Formaggi2007_10.JPG当時はまだ無名ながら無類の輝きを放っていた鶴岡「アル・ケッチァーノ」と、店を支える珠玉の素材を提供する生産者の取材のため、仙台から足が向くのは月山の先ばかり。昨年の夏まで弘前へは、ついぞ向かわずじまいでした。

【photo】白カビ系から黒カビ系・青カビ系、セミハードタイプとさまざまな自家製チーズと付け合せの自家製モスタルダ

 そんな私がダ・サスィーノ初見参を果たしたのは2007年(平成19)8月のこと。TBS系全国ネットの某TV番組放映後、それまで毎月複数回のハイペースで訪れていたアル・ケッチァーノが迷走し、私の足がそこから遠のいていた時期でした。ランチを"フレンチの街 弘前"が誇る名店「レストラン山崎」で頂き、その足で向かったのが、病害虫に弱いリンゴを「奇跡」といわれる自然農法で栽培する弘前のリンゴ農家、木村 秋則さんのもとでした。このとき畑で2時間じっくりと伺った木村さんの今日に至る波乱万丈な逸話は機会を改めて〈Link to back number〉。

 その夜に出合ったダ・サスィーノ 笹森シェフの自給自足への取り組みと、運ばれてくる料理が私に与えた驚きは予想をはるかに超えるものでした。以降、木村さんのリンゴがたわわな実を結んだ10月と、冬を挟んで可憐なリンゴの花が咲き揃った今年5月にも畑の様子を確かめながら、ダ・サスィーノに通いつめるまでに。アルファ・ブレラを駆って片道310kmの移動を厭わせない理由とは・・・。

Antipastimisti2007_8.jpg【photo】2007年8月、初めて店を訪れた際に「イタリア本国で食べるプロシュット類と変わらぬ美味さでこりゃイケル!」と舌を巻いたフィノッキオーナやソプレッサータ、コッパ、バルバリー鴨の生ハム、プロシュット・クルードといった全て自家製によるハム各種とお約束の組み合わせのマスクメロンもまた自家製。いやはや恐れ入りました(左写真)


prosciuto_Sasamori.jpg

【photo】ピエモンテ州の優良カンティーナ「Braida ブライダ」のオーナー、ラファエッラ・ボローニャ女史から開店記念に贈られたという同醸造所のフラッグシップ・ワイン「Bricco dell'Uccellone ブリッコ・デルッチェローネ」の3 リットルボトルの木箱に納まる自家製プロシュット・クルードはこのとき熟成22ヶ月目。こうしてブロックが客の前でスライスされる(右写真)

 笹森さんの転機となったのは、食肉加工技術が高度に発展したイタリアで習得した技術を遺憾なく発揮して作るProsciutto プロシュット(=生ハム)などのハム作りでした。フェンネルの芳香が心地よいキアンティ地方のサラミ「Finocchiona フィノッキオーナ」や、甘味のある豚の首肉を使う「Coppa コッパ」、塩とハーブで下処理した豚モモをスモークする北イタリアのアルト・アディジェ地方発祥の「Speck スペック」、頭の部位を使い、コリコリした食感が楽しめる「Sopressata ソプレッサータ」などの材料には、地場産の黒豚や隣町の鯵ヶ沢「岩木山麓いのしし牧場」で飼育される絶品のイノシシ、青森産のバルバリー鴨などを使います。それらの素材を加工して作る非加熱のプロシュット・クルードや Lardo ラルド(=脂身を加工・熟成させたもの)は、いまや本場モノと見まごう完成度であることは、口にすればお分かり頂けるはず。アンティパストでブロックから切り立てで提供されるそれら鮮度抜群の自家製ハムやラルドは、スライスしてから時間が経過した輸入物のパック詰め生ハムなどとは比較にならない風味のよさ。地場産シャモロックのレバーをTerrina(=テリーヌ)にして、陰干しブドウで造られるイタリアの極甘口ワイン「Vin santo ヴィン・サント」で風味付けした甘美な一品に至っては、悶絶すること請け合い。
Terrina2007_10.JPG

【photo】大鰐産シャモロックレバーのパスティッチョ・ヴィンサント風味

 地元で飼育されるジャージー種の牛乳を使って仕込むゴルゴンゾーラやカマンベールなどのチーズ類は、凝固剤をイタリアやフランスから取り寄せて作ります。相当のヴィーノ好きであることが伺えるイタリアワインのセレクションが眠る店内のワインセラーで熟成されるこれらのチーズも、熟成が進んで食べ頃を迎えたものが提供されます。弘前市街を望む岩木山の裾野にある実家の畑で育てる野菜や果実はおろか、イタリアの代表的なワイン醸造用ブドウであるネッビオーロやサンジョヴェーゼほか数種のブドウも栽培。自宅で飼育するウコッケイの卵や蜂蜜、アンチョビに至るまで、店で使う素材は自家調達のほか、青森原産の優れた食味をもつ地鶏「シャモロック」や、近海で揚がる魚介類を含めて地元産がほとんど。味に妥協を許さない笹森さんは、地元産の素材のほかに脂と赤身の食味が良い島豚「アグー種」を沖縄から取り寄せたり、日本中のグランシェフがこぞって使う山形・庄内町にある「スパール」の山澤 清さんが日本で唯一飼育するピジョン鳩なども使用しています。

tortellini2007_8.jpg

【photo】カボチャのトルテリーニ・セージとケシの実ソース ズッキーニの花フリット添え

 詰め物をした「Tortellini トルテリーニ」や太めの平麺「Pappardelle パッパルデッレ」、トスカーナ州シエナのパスタで、うどんのような食感が面白い「Pici ピィチ」などの手打ちパスタ類がラインナップされ、充実したプリモピアットも楽しみのひとつ。徹底した自給自足への取り組みは、店の背景となる広い畑と、発酵食品類なら何でも手作りしてしまう店内のワインセラー兼熟成庫を舞台に発揮される飽くなき探究心があって初めてできること。なかば本気で素材の自給率100%を目指すと決意を語ります。自宅の周りにある畑と店内の熟成庫でおおかたの素材を調達してしまうゆえ、恐らくはフードマイレージazienda_sasamori.jpgが日本一低いであろうダ・サスィーノ。最近ではユニークな笹森さんの仕事ぶりがメディアに取り上げられることが増えてきました。そんな状況下にあって、こうしてご紹介するのをちょっと躊躇しましたが、地方ならではのアプローチで頑張っている姿にエールを送りたいと思います。

【photo】畑の一角ではサンジョヴェーゼなどのイタリア品種をメインにブドウの木が育つ。ワイン醸造免許取得のための準備も怠りない。左奥のハウス内では、オリーブやLimone(レモン)Calciofi(アーティチョーク)なども栽培する

 今回も満ちたりた時間をくれたダ・サスィーノを振り返ると、外壁に掛かるテラコッタ製のバッカスが笑顔で見送ってくれました。

Entorata2008.5.jpg
 
************************************************************************
da_sasino-sign.jpg
Osteria Enoteca Da Sasino
オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ

弘前市本町56-8 グレイス本町2F
PHONE:0172-33-8299
URL: http://www.dasasino.com/
日曜定休 / 営 11:30-13:30(L.O.) 18:00-21:00(L.O.) 

baner_decobanner.gif

トラックバック

この一覧は、次のエントリーを参照しています: 食料自給率100%のレストラン:

» アルフィオーレ 仙台市のまとめサイト from 旬の旬
アルフィオーレ 仙台市のまとめサイト アルフィオーレ 仙台市の場合は仕込んでただ待つだけ! ダイコー DCH34807L ダイニン... [詳しくはこちら]

Luglio 2018
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        

archive.gif

Copyright © KAHOKU SHIMPO PUBLISHING CO.