あるもの探しの旅

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涼やかな夏の酒あれこれ

2008年、夏に出合った酒コレクション

 伝統の竹飾りに街が彩られる仙台七夕まつり期間中を除いて、いまひとつ天気がハッキリしなかった今年。8月の仙台の日照量は平年比で4割以下しかなかったそうですが、皆さんいかがお過ごしでしたか? 空を灰色の雲に覆われた冷夏がお好きだという、前世がシロクマだったのかもしれない北方系の方にとっては、涼しい仙台の夏はパラダイスかもしれません。かたや根っからラテン系で、前世はイタリア人だった私にとっては欠くことができない真夏のジリジリと肌を焦がす♪ O sole mio(≒私の太陽)が一向に顔を見せない今年、小麦価格の高騰でパスタは値上がりするわ、ユーロ高でヴィーノも高値安定だわ、燃費がさして良くない我がイタ車が消費するガソリンの価格は高騰するわという四重苦で、不快指数は上昇する一方。なのに相も変わらず涼しい顔のフクダさん、お願いしますよっ!\(`o´") ええぃ、こうなりゃヤケ酒だっ!! ・・・と、いうことで、ストック済みのヴィーノと地産地消な日本酒に触手を伸ばした今年の夏。爽やかな夏向きのお酒をサラっとレポートします。

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【photo】小ぶりなブルーのボトルが涼しげな「氷清 田酒」

 まずは、青森の銘酒「田酒」で知られる西田酒造店が「ロックで飲(や)る」のキャッチフレーズのもと、2004年から夏季限定で出している「氷清 田酒」から。オン・ザ・ロックで日本酒を飲むという新たなスタイルに挑戦した同社の西田 司社長の思いは、のちに岩手「南部美人」、秋田「白瀑(しらたき)」、山形「出羽桜」や「鳩正宗」といった賛同者を得ました。現在では各蔵元が「氷清」ブランドの小ぶりなブルーのボトルに入った酒を出しています。その第一号となる氷清 田酒は出張のおりに立ち寄った宮城県北のとある酒販店で発見しました。そこは、今年の春先には人気の「綿屋」や「伯楽星」に混じって、田酒が冬季限定で少量のみ醸すレア物「びん燗 田酒」も置いていた小さいながら侮れない店です。田酒マニアによってあっという間に蒸発してしまっても困るため、申し訳ありませんがここでは入手した店の名は伏せさせて頂きますm(-_-)m

 青森産の酒造好適米「華吹雪」を精米歩合55%まで磨いたこの特別純米原酒は、アルコール度数がおよそ18.5%。冷でもイケますが、やはりここは小ぶりなグラスに氷を浮かべて芳醇な味わいをチビチビと楽しみたいところ。通常より高めのアルコール度数が、氷が溶け出すと、いい塩梅になるという仕掛けです。田酒らしいコメの旨みをしっかりと感じさせる飲み応えのあるこの酒、180ml入りというサイズのため、水で薄まる前に飲み切ってしまいました。加水していない純米原酒に浮かべるのがフツーの水道水から作った氷じゃ、杜氏に失礼ですよね。浮かべる氷の元が田酒の仕込み水!! ならば理想的ですが、仕込み水だけを目的とする青森出撃は、ガソリン高騰の折、キビシイため断念。代わりに使ったのは、先日塩引き鮭を買いに行った新潟村上の喜っ川で汲ませて頂いた井戸水でした。先々代までは造り酒屋だったという喜っ川では、かつて仕込み用に使われたこの水を甕(かめ)で冷やして来店客に出しています。

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【photo】今年デビューした発泡清酒の中から、涼夏(すずか・手前)と出泡羽酒(しゅっぽうしゅ・

 お次は地域資源(=「あるもん」のコトですね)を活かした新規事業を支援しようという経済産業省の平成19年度地域資源活用型研究開発事業に採択されて誕生したお酒をば。(財)山形県産業技術振興機構が取り組む「山形県産酒造米『出羽の里』を用いたコクのある発泡清酒の開発」事業には、山形県下9つの蔵元が名乗りを上げました。耐圧式の冷却機能がついたサーマルタンクで二次発酵させ、スパークリングワインのような果実味と透明感を両立させた新たな日本酒を造ろうという試みです。その成果となる「Sparkling sake」が今年初めてリリースされました。音楽とシンクロする仕掛け花火が眼前で見事なSparkling 絵巻を展開させる赤川花火大会の折に鶴岡で買い求めたのが、鶴岡市大山で創業以来、370年の歴史を誇る「出羽ノ雪」銘柄で知られる造り酒屋、渡會本店が手掛けたサイダー風の外見が目を引く「出泡羽酒(しゅっぽうしゅ)」と、酒田市中心部の日吉町に蔵を構える「上喜元」銘柄の酒田酒造による爽やかな青を基調としたラベルの「涼夏(すずか)」という、日本酒らしからぬパッケージの2本です。この事業に参画した浮世絵の美人画が描かれた「くどき上手」で知られる鶴岡市羽黒町の蔵、亀の井酒造の発泡清酒「おしゅん」も目にしましたが、ついルックス重視で選んでしまいました。

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 日本酒の新たな市場を開拓しようと、1998年(平成10)から発泡性の「すず音」を世に問うた一ノ蔵をはじめ、夏場に発泡性のうす濁り酒を手がける蔵元が近年増えています。こうした低アルコールの発泡性うす濁り酒は、酸味を伴った甘口に仕上がる傾向があるため、食中酒としては不向きだったり、若干しつこさを覚えると仰る左党もおいででしょう。一方で辛口のスパークリングワインは、料理との相性が幅広いことは良く知られています。グラスの中で立ち上る細やかな泡はいかにも涼しげです。アペリティーヴォ(食前酒)としてのみならず、夏の食卓を彩るサッパリとした発泡性の日本酒があってもいいはずです。
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【photo】細やかな泡がフルートグラスの中で立ち上る涼夏(上写真)  試験醸造 発泡純米 試験販売之酒とラベルに記された出泡羽酒。「酒」の一文字がなければ、地サイダーと見間違うかも(右写真)

 そこで白羽の矢を立てたのが、低タンパクゆえのスッキリした味わいを持つ酒米・出羽の里で醸した酒を、苦味とコク成分を生み出すという山形県工業技術センターが開発し、特許を取得している「チロソール酵母」で二次発酵させるという手法でした。立ち香は甘さが勝りながらも、口に含むと苦味が入り混じる独特の味が面白い涼夏は9%、一方でキレのよいさっぱりとした甘さを主調としつつ、全くしつこさを感じさせない出泡羽酒は13.5%という、共に低めのアルコール度数。実際に味わったのが、頻繁に出没する庄内で入手した2本だけだったため、地域的に偏りが出てしまいましたが、置賜地域から本プロジェクトに参画した「まほろばの里」高畠町の後藤酒造店が出した「BENTEN」、同町米鶴酒造の「MAHOROBA」ともども、"暑い季節に日本酒なんて・・・"と敬遠していた方にこそお試し頂きたい一本です。
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【photo】米沢と金沢から参加したボランティアの面々

 最後にご紹介するのは、夏季限定ではないものの、以前ご紹介した「鳴子の米プロジェクト」で昨年収穫された鬼首産「ゆきむすび」で仕込んだ「鬼首ロッジのどぶろく」。8月16日(土)・17日(日)の両日、宮城県大崎市鬼首の吹上高原キャンプ場で、ハンデを持った方でも気軽に森林浴が楽しめる間伐材を利用した木道を整備して、森のバリアフリー化を進めようという「宮城・オニコウベやさしい木道(こみち)づくりキャンペーン」のオープニングセレモニーが行われました。岩手・宮城内陸地震で被害を受けた栗駒山の緑を蘇らせようという願いも込めたこのキャンペーンには、同じく地震で大きな被害を受けた旧山古志村能登・輪島の方たちからも復興に向けた応援メッセージが記されたボード材が贈られました。実行委の一人として14日から現地に泊りがけで入り、地元鬼首をはじめ、遠く金沢や輪島、米沢から駆けつけたボランティアの方たちと木道の基礎作りに汗を流しました。そこで夜な夜な「きくゥ~」と言いながら呑んだのが、奥山料理長お手製のどぶろくでした。
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 上澄みだけでなく、しっかりと全体を撹拌すべし、という税務署の指導のもと出されるため、どぶろくには醪(もろみ)がたっぷりと入っています。飲み込むというよりは噛み締めると言ったほうがぴったりのこの酒、発酵しているため、きりっつと冷やした酒器の中でもぶくぶくと泡が出てきます。爽やかな酸味と甘味、そしてビリっとくる芳醇で濃厚な飲み口は、クセになりそう。一枚1,000円で購入頂く善意の木道用のボード板には、趣旨に賛同いただいた方のメッセージやイラストが書き込まれます。私が描いた一枚にはメッセージとともに「どぶろくサイコッー」と小さく書いてあります。木道の整備に協賛頂ける方で、オニコウベ吹上高原にお越しの際は、ぜひ探してみて下さいね。
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【photo】 「ゆきむすび」のどぶろくは、降る雪のような白さ(上写真) 去ろうとしている庄内の夏を萬吉ナスと出泡羽酒で今一度味わった(左写真) 

 冷たい雨がそぼ降る今夜は、鶴岡市湯田川のたった一軒の農家、小田家に代々伝えられてきた在来作物「萬吉ナス」の浅漬けとともに最後の出泡羽酒を頂きました。鶴岡市日枝字小真木に今月オープンしたばかりの「産直こまぎ」で昨日入手した萬吉ナスは、一昨年までは自家消費のみで、いわば門外不出のナスだったといいます。屋号の萬吉からとった名を与えられたこのナスは、特有のアクや癖がなく食味に優れているため、揚げびたしや焼きナスなどさまざまな調理に向きそうです。そういえば産直こまぎでは、サイダー風のラベルと商品名をこまぎオリジナルのものに変えた出泡羽酒が売られていました。バックラベルの記載内容が共通なことから、事の真偽を蔵元に問合せましたが、やはり中身は同じ酒とのこと。

 こうしてまたひとつ、食材の宝庫・庄内の魅力が増したこの夏。華吹雪をオン・ザ・ロックで飲る氷清 田酒、細やかな泡が涼を誘うSparkling sake 出泡羽酒と涼夏、ゆきむすびで仕込んだどぶろくと、涼しげな酒で美味しく楽しく夏を乗り切り、いよいよ食欲の秋・実りの秋に突入です(^¬^)

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» 日本酒のシャンパン from リキュール小話
僕は和食を食べに行ったときは必ずといっていいほど日本酒を飲む。別に何か根拠があってそうしているわけではないが、やはり日本料理には日本酒が一番合うと思うのだ... [詳しくはこちら]

コメント

「氷漬 田酒」「涼夏」「出泡羽酒」…初めて拝見するお酒ばかり!
すごい情報網と取材力ですね~。
自分の知識の無さを改めて痛感します。


ちなみに「すず音」の新しい飲み方は、ボトルに赤いストローをさして、そのまま飲むのが今のオシャレらしいです♪(東京周辺のイベントでの提供の仕方だそうです)

県北のとある酒販店さんの名前…あとでチョコッと教えて下さ~い(笑)

▼おっかぁ早坂様

コメントを頂戴しありがとうございます。
びん燗田酒をご紹介された時に、「すわネタがかぶったかっ!と思った」とコメント致しましたが、タネ明かしはこの「氷清」でした。「初めて拝見するお酒~」も当然で、なにせ今年デビューした、しかも“試験販売”と蔵元が言っている酒ですから・・・

「すず音」の新たな飲み方についての情報ありがとうございます。銀座で怪しく活動中のハタ坊に赤いストローをさして銀座通りを歩くよう指令を発してみます。

県北の酒販店の名前すか…。10月にはキャラ弁でもお世話になるおっかぁ早坂様の頼みとあればお安い御用です。
でも、買い占めしちゃダメですよ(笑)

本当に地元のこと知らないなぁ、と反省するも、
豊富な情報網に感謝します。
「産直こまぎ」もまだ行ったことないんですよね~。

鬼首も今度鳴子温泉ついでに行ってみま~す。

▼エガラシ2:50様

コメントを頂きもっけです。(そういえば酒田モッケダFes、お疲れ様でした)
産直こまぎ、今行くと大泉や黄金地区の白山だだちゃが試食できますよ。夕方行くと無くなっているかもしれません。ビール持参で??、お早めにどうぞ(笑)

鬼首に設置してある私のボード、すぐに見つかると思います。米国発祥のボードウオークの趣旨とは全く関係のないイタリア国旗の配色になっていますので…(#^_^#)

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