あるもの探しの旅

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「鳴子の米プロジェクト」稲刈り交流会【前編】

作り手と食べ手を結ぶ収穫の喜び

 10月4日(土)、宮城県大崎市の鳴子温泉一帯の中山間地域で、新たな米作りのあり方を模索する「鳴子の米プロジェクト」の稲刈り交流会が行われました。稲刈りが行われたのは、鳴子の温泉街から車でおよそ30分かかる鬼首(おにこうべ)地区でも更に15分ほど栗駒の山あいに分け入った最深部にある岩入(がにゅう)地区の後藤 錦信(かねのぶ)さんの田んぼです。今回の稲刈り交流会は、鳴子の米プロジェクトで作られる今年度産の「ゆきむすび」を予約している人に対して案内されました。交流会が行われる田んぼを所有する後藤さんには「宮城・オニコウベやさしい木道(こみち)づくりキャンペーン」実行委メンバーとしてお世話になっています。5月の田植え交流会には参加できなかったものの、一も二もなく家族で参加を申し込みました。

2008.6.11ganyuu.jpg【photo】 後藤さんのお宅の前に広がる「ゆきむすび」の水田。栗駒山系の山々に囲まれた岩入地区の僅かな平場に水田が開墾されている。田植え後間もない6月(上)と収穫を控えた10月(下)の模様

  2008.10.11ganyuu.jpg 栗駒山系の荒雄岳山麓のブナ林の雪解け水が集まって、やがて一級河川「江合川」となる上流域「荒雄川」の清冽な水が流れ込む後藤さんの水田には、田植え後間もない6月11日に一度訪れていました。作付けされたばかりの早苗の間をおたまじゃくしが泳ぎ、カワトンボがヒラヒラと優雅に舞う光景に見とれたものです。その3日後にすぐ目と鼻の先を震源とする「岩手・宮城内陸地震」が発生し、岩入地区の水田では、畦が崩れたり、地割れで水が抜けるなどの被害が発生しました。8月の日照不足の影響で全国で唯一、米の作柄指数が「やや不良」だった宮城県でも、ひときわ耕作条件が厳しい山間地の鬼首の稲作農家にとって、災害を乗り越えて収穫の時を迎えたこの日は例年にも増して喜びもひとしおだったはずです。

2008.06.11kawatombow.jpg【photo】 後藤さんの田んぼの畦に咲くシロツメクサに舞い降りたカワトンボ

 集合予定時刻の午前10時30分に後藤さんの田んぼに集った一行。その顔ぶれは、私を含めて今年収穫される鳴子の米こと、ゆきむすびを予約している仙台や秋田・神奈川、遠くは山口・佐賀などから参加した面々。受け入れ側はプロジェクトに参加している鬼首地区の数軒の稲作農家と大崎市鳴子総合支所などの交流会実行委メンバーら総勢70名ほど。ウチのように子連れで参加した家族と宮城大学 食産業学部や宮城県農業実践大学校に在籍する学生など、昨年より若い世代の参加者が増えたことを実行委の方たちは喜んでいました。

 鳴子の米プロジェクトは、国が農家から買い取るコメの価格を指す生産者米価の下落が続く中で採算割れに陥り、生産意欲を失っている米作農家を消費者が事前予約制による適正価格で直接買い支えようという試みです。この挑戦は、農業の担い手の高齢化と後継者難、離農により増加する耕作放棄地と限界集落など、閉塞状況にある中山間地域に活路を見出そうという民俗研究家の結城 登美雄氏の提唱で始まりました。農家が安心してコメ作りを続けられるよう設定された購入希望者が支払う1俵(60kg)当たり2万4千円(玄米5kg 2,000円・白米同 2,100円)という対価は、農家の手取額として採算ラインの1万8千円を確保するための2008.6.11ganyuu2.jpgものです。5年間維持されるその価格の一部は、次世代を担う若者を鳴子地域に受け入れるための社会基盤整備に充てられます。

【photo】宮城内陸の最北部にある鬼首でも、秋田県境に近い最も奥部にあたる岩入地区。わずかに開けた平場の田んぼでコメ作りに希望を見出そうという試み「鳴子の米プロジェクト」が行われている

 山間地特有の寒冷な気候ゆえ、いかなる品種を試み、どんなに頑張っても美味しい米は出来ないと2年前までは言われてきた鬼首地区。実際に足をそこに運んでみると、山々に抱(いだ)かれた狭小な平場に水田が築かれていることが判ります。プロジェクト初年度から参画した「生産者の会」代表の曽根 清さんは「自分たちはこんなに美しい風景の中でコメ作りをしている」と語ります。清らかな荒雄川と青い山並み、丹念に手入れがされた田んぼが織り成す風景は、確かに美しいものです。しかし、そこには過酷な条件下で何世代にも渡って営々と続けられてきたコメ作りの労苦があったはずです。私にとって鬼首は、このような奥地でも米作りをしている人々がいることを忘れてはならないのだ、と胸に刻ませる場所となりました。
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【photo】 稲刈り交流会の冒頭、挨拶に立つプロジェクト会議代表 上野 健夫さん

 「ササニシキ」「ひとめぼれ」を生んだ宮城県古川農業試験場で、収穫が早く耐病性・耐冷性と食味に秀でた品種として2001年(平成13)に開発されながら、当初は奨励品種として認められていなかった低アミロース米「東北181号」。2006年(平成18)、この寒冷地に適した新品種を試験的に作付けしたことから物語は始まりました。地域慣行の半分までに使用する農薬を抑え、収穫後は棒がけによる天日干しで乾燥させるという取り決めのもと、鬼首地区の上流域から順に岩入集落の曽根 清さん、寒湯(ぬるゆ)集落の高橋繁俊さん、中川原集落の高橋正幸さんの3人が、10アールの水田に東北181号の苗を植えつけました。

 プロジェクトのプロデューサーとなった結城氏の意向もあり、地元の旅館関係者や購入希望者を招き、田植えや稲刈り時に生産者との交流会を実施しています。安全で美味しい米作りを続けようという作り手が、食べ手と共に手をたずさえて日本人の食を支えようとしているのです。昨年「ゆきむすび」と命名されたこのコメは、命をつなぐ米作りを人任せにしないという決意のもと、3年目を迎えた今年、35軒の農家が10ヘクタールの水田でゆきむびの栽培に挑戦しました。新たな人の輪を広げている鳴子の米プロジェクトは、今や全国から注目を集めています。今週末の19日(日)、NHK仙台放送局が鳴子の米プロジェクトをモデルに製作されたドラマお米のなみだ」が16:45から全国放映されます。この日も各メディアが交流会の取材のために訪れていました。

2008.10.11.sigsone.jpg【photo】 鎌の使い方を指南する曽根 清さん

 薄曇りの空模様が少し怪しくなってきたかと思う間もなく、にわか雨が降り出しました。大きなビニールシートで急場のテントをしつらえて、しばし雨宿り。四方を山に囲まれたそこは、変わりやすい山の天気なのでした。雨が小降りになったところでプロジェクトの世話役、大崎市鳴子総合支所の安部 祐輝さんの進行のもと、今年から鳴子の米プロジェクト会議の代表を務めている上野 健夫さんがご挨拶されました。そこで報告されたのが、従来は事務局を大崎市に置いていた鳴子の米プロジェクトが、10月1日にNPO法人として登録されたということ。今後は参加メンバーによる自主運営の道を探ってゆくのだそう。初年度から作付けをした3軒のうちの一人で前代表の曽根 清さんから鎌の扱いについて説明を受け、いよいよ稲刈りのスタートです。手刈りによる稲刈りは、私のホームグラウンド、鶴岡市を一望する櫛引地区の高台「たらのき代(だい)」で絵本作家の土田 義晴氏が10年来続けている「あーあー森 田んぼのお絵かき」で3年前の10月にやって以来。それでも体が覚えているのか、自分では手際良く刈れているつもりです。学校の実習で稲刈り体験をしたばかりの5年生の娘は、慣れた手つきで稲を刈ってゆきます。

2008.10.11inekari.jpg【photo】 頭を垂れたゆきむすびの稲穂を夢中になって刈り進むうち、およそ4アールの田んぼの稲刈りは、心をひとつにした参加者の働きによって驚くほどのスピードではかどった

 鎌での稲刈りよりも難しいのは、刈った稲穂を束にして藁で結わえる作業。こればかりはなかなか上手く出来ないので、専ら"刈る人"に徹しました。70名もの人海戦術によって予定された区画の稲刈りは順調に進み、予定より早めに終了しました。最初は一生懸命に鎌を使って稲を刈っていた小さな子どもたちは、途中から虫かごを手にカエル採りに夢中です。カエルが生育できる減農薬栽培による環境下にある後藤さんの田んぼの土は、水を抜いてしばらく経つものの柔らかく健全なものでした。刈り取った稲は、垂直に立てた高さ2mほどの棒を芯にして、通気性を確保するため螺旋状に積み上げてミノムシのような形状に仕上げます。これは旧伊達藩の内陸部で盛んだった「棒がけ」と呼ばれる天日干しの方法です。2008.10.11bougake.jpgおよそ1ヶ月間、こうして自然乾燥させることでコメの味が違ってきます。作業の最後に安部さんの呼びかけで、参加者全員で落穂拾いをして、最後の一本まで無駄にすることなく大切な稲を棒がけにしました。

【photo】 棒掛けによる自然乾燥は、鳴子の米プロジェクトに参加する農家全てが行う作業だ

 「この場所は稲を刈らずにそのままにしておいて下さい」との実行委からの指示で、田んぼの中に手付かずの一角が残されていました。そこには、鳴子の米プロジェクトと稲刈り交流会の実行委員のメンバーが、この日参加した人たちに伝えたい大切なメッセージが込められていたのです。
 それは次回【後編】「小昼(こびる)で頂く農家の味」にてご紹介します。

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コメント

気になっていた鳴子の米の稲刈りの様子を拝見でき、ほっとしました。
4日を楽しみにしていたのに当日キャンセルで参加できず、凹んでおりました。みんな楽しそう!
次の日に結城氏に稲刈りの様子をお聞きしたのですが、こびるを食べ損なったのが残念。
来年こそは、田植え・稲刈りと参加したいなぁ。
先月はこのブログで紹介されていた民田ナスを五十嵐ご夫妻から頂きました。
地物の力をまた教えてください。

おこりんぼシーサー様

コメントを頂きGrazie mille!です。

交流会への参加を申し込みされておられたのに残念でしたね。和気藹々とした雰囲気のもとで、稲刈り自体はあっという間に終わった印象ですが、夢中で手刈りした中腰での作業が祟ったのか、その後数日間は筋肉痛に悩まされました(笑)

来春、ぜひ鬼首でお会いしましょう。地元のお母さんたちにご用意頂いたご馳走が並んだ小昼のレポは近日アップ予定です。ヨダレを流しながらご覧下さいね。

P.S. 民田ナスや沖田ナスには味噌漬けもあります。ご興味があればぜひどうぞ。

いつも興味深く読ませて頂いています。
ドラマ・お米・こけし・温泉…鳴子には色々ありますね。
限界集落とか色々な言葉がありますが
農村部はこれから冬に入ります。

普通にしていたら春まで人々の関心は届かなくなります。
冬をどう活用するか、重要ですよね…。

HiRO【はなラジ】様

 いつもご覧頂きありがとうございます。さらにコメントも頂戴し、重ねて御礼申し上げます。土日も仕事が続いたため、今月21日に代休を取ってリフレッシュのために庄内へ伺いました。'08vendemiaの最後となるブドウの収穫の後、旧櫛引の知憩軒へ伺ったら、すぐ裏手で鳴いている白鳥の声が聞こえてきました。柿もすっかり色付いて季節の移ろいを感じてきました。

 霰まじりの地吹雪が吹きすさぶ厳しいそちらの冬には、冬ならではの魅力があります。自然が厳しいからこそ、そこに"あるもん"の魅力が引き立つとでも申しましょうか。過酷な自然と向き合い逞しく暮らす心優しき人たちしかり、晴れ間に純白の姿を時おり垣間見せる気高い鳥海山や泰然とした月山の威容しかり、あまたの「ごっつぉ」しかり…。

 ヴェネツィアに生まれたAntonio Vivaldiの名曲 La Quattro Stagioni のL'inverno「冬」第2楽章Largoほど、冬の庄内のテーマ曲に相応しいものは無いと思います。如何でしょう?

勉強不足でスミマセン。
早速検索します。
これからもヨロシクお願いします。

HiRO【はなラジ】様

陽光溢れる夏はあくまでも暑く、冬は厳しい表情に一変する四季の表情がはっきりとした庄内には、アコースティックなバロック組曲のイメージが合致するものですから、ちょっと抽象的な問いかけをしてしまいましたね。

ゴメンナサイ。

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